顧客が品物を買ふ以外の要求~「三越」の古典に学ぶ その3~
日本発の生涯顧客戦略を打ち立てよう!
なんだかとっても大それたテーマを掲げてしまった。
慶應義塾大学商学部の岩尾俊兵准教授の『日本企業はなぜ「強み」を捨てるのか 増補改訂版『日本“式”経営の逆襲』』(光文社,2023)読んでいるのですが、とても面白いのです。
岩尾氏は、同書の内容を自由に要約、紹介して良いとのことなので、以下に一部引用します。
「…日本企業は、様々な人材育成施策、OJT、QCサークル活動、改善活動等といった「すべての人に開かれた経営教育」を通じて、経営知識と経営意識の格差という価値創造の障害さえも取り除いた。
組織内で経営知識と経営意識を高く持つ人とそうでない人が偏在すると、仕事は『自分たちには関係ない、あいつらがやること』という感覚が蔓延する。それにより組織内には摩擦が生まれ、人間同士のいがみ合いが価値創造の障害となる。
この状況を、過去の日本的経営は、組織内のすべての人に経営知識と経営意識を浸透させることで克服したのである。
だが、その後の日本には『ヒトよりもカネが大事』な似非世界標準経営が広まった。」
(前掲書、5-6頁)
「あーそうだよなぁ」と共感してしまった。
私も某百貨店に在籍していた時に、超有名な外資系コンサルティングの方々が入ってきて、当時の経営に携わる方々と議論して、いろんな施策を現場に落としてきたことがあったのです。なんだか、現場実態にあわない、全く実効性のないと私には思われる施策なので、部長たちに「この施策、何の意味があるのですか?」と聞くと、「経営から言われているので、我々ではどうしようもないんだよ。」とか、「俺も意味ないって言ったんだよ。でもどうしてもやれ!って、本部から言われているんだ」などなど、結局中間管理職も意味が分かっていない。仕方なく実行するけど、意義を見いだせない中でやるので、やっぱり成果にはつながらない。
ちなみに、この会社はQC活動的なことは一生懸命やっていて、優秀なチームは全社の発表会などもありました。私も業務改善レベルではありましたが、試行錯誤していたので、発表会に呼ばれたのですが、発表の予行練習を何度もやらされて…「忙しいのに何をやってんだか」と腹を立てていたこともあります。
もっと身近な課題を解決することに積極的になった方が、お客様も従業員も喜ぶし、結果的に売上もあがるんだけどな。
ビジネススクールを修了してみて、「あの時の施策は、あの理論、あのフレームワークだったんだな」と良く分かります。コンサルティングファームが推進しているのは流行りの理論なのです。おもしろい理論があるとみんなが飛びついて、それをコンサルが企業に売り込むネタに使っている。経営者クラスは“世界標準経営”の理論の概要くらいは聞いたことがあるので、飛びついて改革をしている気持ちになっている…なんてこともあるのかな。
私の専門は生涯顧客育成による中長期的な業績の向上を図ることです。現場の中で試行錯誤してきた取り組みをベースに、ご依頼を頂いた企業の現場の声を収集し、現場発の改革を進めていくことが一番効果あると思うのです。
だって、実践するのは現場なのです。コンサルじゃありません。