営業担当にインセンティブを付ければ業績は向上するのか?
2024年5月15日付『日本経済新聞(朝刊)』の「私見卓見」欄に次のような投稿があった。「人事評価はプロセスも重視せよ」
筆者は賃金人事コンサルティングオフィス社長の蒔田照幸氏。蒔田氏の主張は明快で、“評価対象は成果だけでよく、プロセス評価なんて無意味”という昨今の風潮に対して警鐘を鳴らしている。「マニュアル通りにやっても結果が出なかった」など、無責任な発言をする人もいるが、マニュアル通りで上手くいきそうになければ途中でやり方を工夫すれば良い。成果だけの人事評価では、創意工夫して目標達成しようという挑戦的な行動が否定され、何もしない方が無難という減点主義になってしまう…という主張である。
そうなんだよな…とおおいに共感した。
営業職であっても、結果だけを評価する企業はそれほど多くはないと思うのだが、優秀な人材確保のためにメリハリのある人事賃金制度を導入することが“風潮”としてあるようにも感じている。限られた人件費原資を有効に活用して、企業全体の業績向上に結び付けようということだろう。メリハリのある処遇のためには、評価に明確格差が評価で表現されなければ納得性がない。従来、プロセス評価は定性要素も多くなり、メリハリが付かない傾向があるため、どうしても成果のウエイトを高めざるを得ない。しかし、成果とは現時点で表れたものである。成果のウエイトを高めれば高めるほど、将来の業績よりも直近の業績を最優先するようになる。今は成果には結びつかないかも知れないが、この活動を着実に遂行していくことできっと将来に花開く活動は評価されない。さらに、業績に直結する仕事をしている従業員は結果として手厚い処遇をうける可能性が高まる一方、彼等を支えているスタッフやアシスタントの評価は決して高まらない。仕事というのは一人でするものではなく、チームでするものなのに…である。
「PDCAは大切だよね。」とよく言われるが、プロセス評価を重視しない企業(職場)では実際の仕事はみんなが好き勝手に自分の目標達成に向けて活動しており、仮説→実践→検証→修正→仮説…とはならない。これだけ環境変化が激しい時代だからこそ、マニュアル(もしくは行動基準)=仮説を明確にして愚直に取り組んでみるという働き方が大切だと思う。仮説の精度を高めていくこと、着実な実践をマネジメントすること、これこそが経営の仕事なのではないか。全体目標をただただ従業員に割り振って、「あとは皆さんよろしく!」では経営はいらないと思う。
「名選手、名監督ならず」という言葉がある。高い業績を実現した者が速く昇進し、上位の役職に就くことがおおいだろう。社内秩序で言えばそうならざるを得ない。しかし、これからの時代は、今までの成功事例は役に立たないと思った方が良い。仮説・検証サイクルを回しながら、チームとして高い生産性を上げることをマネジメント出来る人材こそが経営を担うべきだと思う。
プロセス評価の重要性をもう一度認識していただきたい。改めて、この記事を読んで思った次第です。
追記
マーケティングが担当なのに、なんでいつも人事賃金制度のことばかりコメントしているの?と言われることもあるのですが、マーケティングとは常に仮説・検証の繰り返し。そのためにはそれぞれの担当者の行動基準を明確にして、着実に実践することが前提なのです。その前提になるのはやはり、人事制度なのです。こうした点も含めてご説明させて頂ける経営の方々とぜひ情報交換をさせていただきたいと思っております。