私の店が色々の参考品を備へ、色々の美術品を置き、色々の織物品を列べてあるのは~三越の古典に学ぶ その7~
日比翁助は「学俗協同」の精神を大切にしていた。それは、単に経営者として利益追求を目的とするのではなく、殖産興業、国の発展に貢献するのがビジネスであるとの信念だったと思う。
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○商人は学者と提携せよ
◎学者を軽視する実際家
実際家は兎角学者を軽視する傾がある。
併し商人は日に日に進歩しつつある人を対手とするものである。一時一刻と雖も時に後れてはならぬ。記者が一時間に五十哩(マイル)走ると云ふ時代に東海道を籠で行くと云ふ様では到底発達する事が出来ぬ。少くとも五十二三哩とか五十五哩位走らねばならぬ。
◎学者の同情
我々は此意味で学者の助力を仰ぐ、我々は最新の深い智識はなくとも、夫を実地に行ふに便利な設備がある。学者は智識に於て申分がないが、是を実行するに縁が遠い。そこで此を巧みに調和して我国の発達を遂げたいと云ふが我々の希望である。幸にして学者諸氏は我々に同情し助力される。我々が五十二三哩走ると云ふも要するに学者諸氏のお陰である。
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大丸の経営理念として掲げられていた「先義後利」の精神を持ち実践する企業は、永らく続いている老舗企業に多く見られるのではないだろうか。公益に資する精神が結果として企業の存続・成長につながる。短期的な利益を追い求めてばかりではいけない。日比翁助の言葉はそんなことを投げ掛けているように思われる。