売った後が大切なのに…
先日、社会人のコミュニティで、雑貨を取り扱う経営者の方からこんなことを言われました。
「●●百貨店にポップアップで出店したことがあるんだけど、売上の35%も利益を取られたんですよ。それなのに販売員も我々が派遣して…」
私が百貨店出身だったこともあって、いろいろ話をしてくれました。
そうなのです。百貨店で商品を扱ってもらうとなると売上の30%程度を提供することを覚悟しないといけません。もちろん、百貨店側の理屈もあるのですが、故に出展業者はこうした負担を受け入れてくれる取引先にならざるを得ない。そうすると最近流行っているお店とか、ちょっと面白そうなお店とかは出店しない、出来ない。百貨店側がこうした“殿様商売”をしている一方で、駅ビルやファッションビルは賃料方式で、百貨店よりも有利な条件で出店できるため、魅力的なお店を並べることができる。今は、大手百貨店を中心に、ラグジュアリーブランドなどの売上で業績が好調のように見えるのですが、基本的な収益構造は変わっていないため、いずれ厳しい状態に戻らざるを得ない。業績好調な今だからこそ、“売れる仕組み”を作らないといけないと思います。
さて、前回のコラムの続きです。
「百貨店の外商でこの商品を取り扱って頂くことはできませんか?」
こういったお問い合わせがあるのですが、その際にご理解しておいて頂きたいことがあるのです。百貨店外商部門は、経済的に余裕のある顧客を多数抱えていることは間違いありません。こうした顧客が大きなお買い物を継続的にして頂けるので、百貨店の業績は支えられていることも事実です。しかし、こうした買い物は外商担当がお勧めしたから実現した売上という訳では必ずしもないのです。(このあたりのお話しは既に別のコラムでも何度か触れてきましたので、ご興味がある方はそちらのコラムもご覧下さい。)だからと言って、外商が役に立たないかと言えば、それも違うのです。ポイントは、外商担当が“売り込まない”でも良い、“売れる仕組み”を整えることにあります。外商担当は個人業績目標を背負っているが故に、顔が見えている顧客に、詳細な説明をしなくとも良い商材を売る“効率の良い商売”を重視しています。「顔が見えている」というのは直近で多くのお買い物がある顧客であり、さまざまな事情から最近のお買い物が少ない顧客は後回しとなっている訳です。また、「詳細な説明をしなくとも良い」というのは、忙しい外商担当が自分で勉強して、何度も顧客に説明をしなければならないのでは困るからです。百貨店外商との取引を考える上では、この2点を踏まえて、手を打つ必要があります。
百貨店外商部門との取引を希望される商材というのは、高額品で対象顧客が明確なものが比較的多いと思います。「この商品を必要としている顧客にとってはソリューション商材として、喜んで高いお金を払ってくれる」と考えてのご要望です。これは正しい。問題は、今の外商担当が直近でのお買い物が多い顧客中心の働き方をしている中で、この商材を本当に必要としている顧客に情報を届けることが出来るか否か、です。つまり、今はさまざまな理由で買い物が少ないかもしれない顧客にもしっかりと伝わる手段を考えることが必要なのです。但し、こうした仕組みづくりを担う販売促進メンバーも少数、かつ多忙。具体的な方法論まで含めて取引先側から提案しないと実現しないのです。また、こうした手続きが手間であるが故に取引しないという結論になりがちなのです。
百貨店側も、売場のテナント化が進み、外商部門として取り扱いができる商材が徐々に絞り込まれており、店頭で扱っていない商材の開発をしたいと思っているのですが、進んでいかない状況があるのはこうした背景があるからなのです。そんなところにラグジュアリーブランドのバカ売れ(失礼ながら…)が始まってしまって、問題が隠れてしまった。百貨店の構造的課題への着手が遅れてしまった。そんな危機感を持っています。だからこそ、こうした商材開発を通して、百貨店側と取引を求める企業様の長期的なWIN=WINの関係を求める活動はとても意味があると思っています。
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