売った後が大切なのに…
「百貨店の外商でこの商品を取り扱って頂くことはできませんか?」
こういったお問い合わせが時々あります。百貨店に飛び込みで売り込みに行っても、ほぼ100%断られます。百貨店社内外の様々な人脈を使って、「ちょっと話を聞いてくれませんか…」との売り込みも多数あります。百貨店外商部門で取り扱い商材を決めているのは、大手百貨店では外商部門の販売促進担当、中堅百貨店では部長などが多いようです。結局、個人なのです。明確な取り扱い基準のようなものがあるのは少ない…と言いますか、見たことがありません。これまでの経験から「この商品は売れるかも知れない!」との印象を持った場合に商談が始まるのです。
恐らく、こういったご相談をされる経営者様からすると、「百貨店の外商担当は富裕層顧客に商品を紹介してくれるだろう」との期待があると思います。確かにそうなんです。百貨店の外商担当者は富裕層顧客と接点を持っていて、お客様に商品をお勧めすることが出来ます。そのため、うまく使えればとても有効に機能するはずです。しかし、うまく使うのが少々難しい。
例えば、こういったことがあります。企業によって、売上高であったり、粗利益であったりの違いはあるのですが、外商担当は個人業績目標を背負っています。百貨店で取り扱う場合の取引形態はいくつかあるのですが、店頭で扱っていない商材の場合、企業様と顧客が直接契約をしてその売上の10%程度を手数料として紹介した百貨店に支払うというものが多いと思います。この時に紹介した担当者の業績にどう反映されるかが問題になります。百貨店は仕入れてないので、売上にはなりません。手数料収入を売上換算する仕組みが整備されていない百貨店も実は少なくないのです。この場合には、「見做し売上」のルールを作ってもらわなければなりません。企業様が顧客に販売した価格なのか、手数料の数倍にするのか、など様々な決め方があります。こうしたルールを決めておかないと、個人業績の達成度で処遇がデジタルに変動する外商担当が頑張ってくれません。
また、商材のセールスポイントをしっかりと顧客に伝えて頂くためには、外商担当がその商材のことを“ある程度”理解しないといけません。パンフレットを納品しただけでは外商担当は動きません。多数の取引先様からはありとあらゆるパンフレットが事務所には山積みになっている光景をよく見ます。中には包装紙に配送伝票が貼られたまま、一度も開封されずに破棄されてしまうものもあります。だから、外商担当に対する勉強会を開催すべきなのです。但し、外商担当も忙しいので勉強会の時間を確保するのも大変です。朝礼の時間から5分もらえれば有り難い。ちゃんと会議室に集めて勉強会を出来たとしても15分程度が限界でしょう。だとすると、パンフレットだけではなく、外商担当用の説明資料が必要です。製品の概要はもちろん、どんな対象となる顧客像、関心を持って頂いた顧客がいらっしゃった場合の相談先などなど、ポイントをまとめたものを用意する。最近では、外商担当もタブレット端末を持っているので、ちょっとした時間で顧客に説明できる解説用動画などもあるとありがたいです。高いお金を掛けて作る必要はありません。手作りで十分です。
さらに、定期的に外商担当に声を掛けて、お客様からの反応を聞くようにすると効果があります。「全然興味を持ってもらえない」との意見でも良いのです。販売促進施策の見直しに繋げることが出来ます。
などなど…外商担当も生身の人間なのです。デジタル時代とかAIとか言われるのですが、人を動かすにはいろいろとやることがあるのです。
まだまだいろいろあるのですが、この話はまた後日。