あるメンバーの『営業日報』より~「タンスの中まで知る」伝説のONE TO ONEマーケティング~(その2)
「本日ポイント5倍」!
自宅近くのドラッグストアに行くとこんな旗が立っている時があります。これを見るたびに、こんなことを考えます。
「それだと5倍の日にお客様が集中して、他の日に来店する人が減ってしまうのではないのかな?」
また、このドラッグストアのアプリを開くと「本日3000円以上のご購入で100ポイント」なんて表示もされることもあります。
「他の日に買おうと思っているものが前倒しになるだけなのではないのかな?」
ポイント制度って本当に儲かるのだろうか?
ドラッグストアでも、会社によって戦略の違いがあって、例えばコスモス薬品はポイントカードを発行していません。その代わり食品などを中心にエブリデーロープライスで業績を伸ばしています。家電量販店ではケーズ電器も「安心パスポート」という会員カードを配付していますが、ポイント制度は導入していません。何かの講演で「ポイント制度はシステム導入と運用にとってもお金が掛かるんだよ。そんなことに掛けるくらいなら、お客様にその場で還元した方が良いんだ」といった主旨のことを社長さんがお話しされていたと記憶しています。新聞や雑誌などでは「ポイント経済圏」とか、ポイント制度の有効性が時々取り上げられているので、なんだかポイント制度は業績向上に有効な仕組みのように感じることもあるのですが、「本当にそうなのかなぁ」とも思ったりする訳です。
POSの購買履歴とカード会員の属性情報を結び付けたID-POSデータを定期的に分析しています。スーパーマーケットにおけるポイント施策との関係についても調べたことがあったのですが、確かに特別なポイントを付与すると、当該商品の売り上げは伸びます。これは間違いない。但し、付与分のポイントは販売促進費であり、多くの場合メーカーが補填しているのです。売上は上がる。しかし、利益は減る。スーパーマーケットとしても、カテゴリーの売上が全体として伸びていれば良いのですが、単に競合からのスイッチングだとすると芳しくない。他のスーパーマーケットで購入すべきものが自社での買い物へシフトしていれば良い。でも、競合スーパーもさらに魅力的なポイント付与を始めるとそちらへ顧客が奪われる。負けずにこちらも魅力的なポイント施策を展開する…。結局、儲けているのはITベンダーだけということになりかねない。
販促費を負担するメーカーからすると、ポイント付与することで初めて当該商品を購入(トライアル購買)してくれる顧客が、継続購買(リピート購買)してくれることで初めて利益の拡大につなげることができる。可能であれば、購入が習慣化(≒生涯顧客化)してくれればさらに嬉しい。しかし、それはポイント制度だけでは出来ないでしょう。
インストアプロモーションや自社のウェブサイト、SNSなどを組み合わせて当該商品の価値をお客様にお伝えする施策がやっぱり大切です。
スーパーマーケットの顧客をお買い上げ高順にならべて、ポイント施策による売り増し効果を測ってみたのですが、上から2番目(第9分位)、3番目(第8分位)顧客には一定の効果が見られました。この顧客群の育成は店舗売上の拡大には大切な取り組みです。一方、
最上位顧客群(第10分位)にはほとんど効果が見られませんでした。約6~7割の売上を構成している最上位顧客群の売上拡大にはポイント制度ではない、顧客の維持・育成の仕組みが別途必要なのです。この点についてはもっと注目されて良いと思います。