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売上目標を設定しない働き方で気づいたこと

鈴木一正

鈴木一正

テーマ:働き方改革

「個人目標に売上を設定しないなんてあり得ない!」とのご批判があることを覚悟している訳ですが、実際に百貨店個人営業部門に勤務していた時の事例をご紹介したいと思います。仕事としては、低稼働顧客の活性化を4年間担当した時の話です。

我々のチーム以外は、個人売上高を目標にしていました。但し、目標は実額ではなく前年実績の伸び率でした。営業担当一人当たり400~500件の顧客を担当していたので、様々な理由で退会したり、新規入会があったりと、顧客数は年間を通して変動する訳です。だから絶対的な指標では合理性がない。高額買い上げ顧客が期の途中で入院してしまったり、短期海外転勤してしまったりすると、絶対に目標が達成できないのです。逆もしかりで新規入会顧客(一般カード→個人営業カード)が高額買い上げをすると簡単の目標が達成できてしまう。担当顧客の対前年比というのは比較的妥当性があるものでした。

そんな中でも、低稼働顧客担当チームは売上高を個人目標としなかったことには様々な理由があるのですが、1つは一人当たりの担当顧客2,000~3,000件という顧客の多さです。低稼働とは言え、ある程度のお買い物があるので、個人目標を掲げた途端に買い物が見込める顧客に集中してアプローチする可能性があったこと。そしてもう一つは、低稼働チームというのは、やむを得ないのですがハイパフォーマーではなく、営業素人のメンバーが中心だったことがあります。

担当顧客のポテンシャルが読めない。担当エリアのポテンシャルにバラツキがある中で納得性の高い目標を設定することは不可能です。もちろん、チームとしての目標はありますが、これはチームのマネジャーである私が引き受けて、メンバーには一切落とさないという仕組みにしました。その代わり、営業担当のメンバーには行動目標を示しました。例えば「東京23区担当には自宅訪問30件/月、電話アプローチ350件/月」などのようにです。もちろん、都下、神奈川・埼玉・千葉、地方と自宅訪問の効率が違うのでこの考慮しましたが、基本は同じです。こうした行動目標に対してはメンバーから苦情を言われたことはありません。「ちょっと頑張れば、出来なくない」だからだと思います。

一度、もうすぐ定年を迎えるベテランのメンバーに言われたことがあります。「マネジャー! あんたずっと席に座っている訳じゃないだろうな。一緒に顧客訪問やるんだろうな」と。もちろん、担当顧客数は少ないのですが、ご自宅をまわりました。エリアによる有利不利はあるのですが、姿勢は分かって頂けたようでした。私の担当した低稼働チームは、他部門からの異動者による営業素人ばかりなのですが、1年くらいやっているとある程度独り立ち出来るようになって、教育係?として認められ、毎年10数名を受け入れては卒業させるという活動を繰り返し、5年間担当したのです。

この5年間で分かったことがあります。と言いますか、最初の1年で分かり、2年目で確信したことです。「電話アプローチの件数と担当顧客の売上高の伸び率は比例する!」 目標350件に掲げたのは、1日でふつうに頑張れば50件は架電(含む留守電)できるのです。そんな中で100件架電するメンバーもいる。顧客の活性化状況が全く違う。そのため、4年目から目標を変えました。「電話アプローチの件数を中心に評価する!」と。残念ながら、自宅訪問も電話アプローチも事実と異なる報告をする営業担当のいたのですが、ほぼずっと近くで活動しているので、すぐ分かります。(虚偽を疑われる方は呼び出して事実を確認して、訂正するのです。) 購入の判断は顧客にあるのですが、営業担当の努力を評価すれば納得性が高い。

このチームは5年間を通して、部内で最高のパフォーマンスを獲得し続けたのでした。

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鈴木一正
専門家

鈴木一正(経営コンサルタント)

合同会社スズセイ

百貨店個人営業(外商)での経験をもとに、BtoC企業のお得意さまづくりをサポート。訪問や電話などアナログな接点づくりを大切にする顧客戦略の設計図を描き、お客さま本位の働き方改革を実現します。

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