DX推進における最大の課題はIT担当者が現場から信頼されていないことだ
経営者の方からよくこんな相談を受けます。
「若い人を採用して営業担当者として配属するんですが、短期間で辞めてしまうことが少なくないんです。定着しないんです。どうしたら良いのでしょうか。」
今どきの若者は転職に対して抵抗がなくて、思うように仕事ができないとすぐに辞めてしまうという世代論もあるのですが、この問題の本質はもっと他にあると思います。その本質的課題を象徴する議論があったので、またまた百貨店個人営業の時の話をします。業績が低迷する時期で早期退職制度の募集で多くの営業担当者が退職されたことがありました。欠員補充のために売場部門を中心に欠員補充があったのですが、みなさん営業は初めての方々ばかりで、転入者説明会では不安と不満でかなり紛糾しそうになったのです。皆さんが口々に言っていたのは次のようなことでした。
「営業部門なんて昔からいるメンバーが有利で、後から来たメンバーは頑張っても報われない。」
もちろん、当該部門に永く在籍するベテラン社員は努力をして顧客との関係性を構築し、今では効率的に目標を達成できる状況になっていることが多い。新しく配属された方々は、最近はあまり買い物をしていない顧客だったり、買い物はするのですがちょっと手間が掛かる顧客だったり…努力してもなかなか成果が見えない仕事になることがあるのです。
同じ課題は、自動車ディーラーのお仕事をした時にもありました。ベテランの方は効率の良いお客様を抱えていて、新しく配属された担当者には点検だけをお願いしてくる顧客や昔は自社で購入して頂けたのですが最近は他社で購入した顧客、ショールームに見にきただけの顧客など、ご購入いただくための努力が相当必要な顧客ばかりを担当せざるを得ない状況でした。ベテランの方々の顧客分布を確認すると、形としてはエリア制になっていながらも、あっちこっちに散らばっています。自動車販売の場合には定期的にご自宅を回ってお車の状況などを聞いて関係を構築することも必要かなと思うのでなるべく担当顧客のエリアは固めた方が良い。そのためには、ベテランから新営業担当者まで顧客をシャッフルして担当分けをすることが望ましいのです。しかし、ベテラン社員は「私が担当を外れると既存顧客が離反してしまう」と口々に主張します。経営もそれを心配して決断できない。
結果として、買い換えが期待できる顧客はベテランが抱え、新しい担当者はなかなか成果が出にくい顧客を担当するという構造を変えられない。中長期的な業績向上のためにはベテラン社員にこそ難しい仕事をしていただき、若手には経験を積ませるべきだと思います。
私の経験ですが、エリア制を徹底しても業績は落ちません。既存顧客でどうしても元々担当していたベテラン社員でなければダメだと言ってくることもあるでしょう。しかし、それほど多くないのです。ベテラン社員が若手を育成する視点でサポートすることも必要でしょう。若手が育てば業績はきっと向上するはずなのです。
こうした改革がどうしたら実現できるのか、この問題を考えていきます。