あるメンバーの『営業日報』より~「タンスの中まで知る」伝説のONE TO ONEマーケティング~(その2)
前々回増えた売上高の方程式について、各素数の説明をしていきたいと思います。
売上高の方程式として4番目に挙げたのは以下のものです。
④売上高=(既存顧客数×買上頻度+新規顧客数)×1客点数×1点単価
ちょっと分かりづらいので、少し修正してみます。
④’ 売上高=(既存顧客数+新規顧客数)×買上頻度×1客点数×1点単価
「新規顧客」の定義を「初回登録顧客」から「単位期間内に初めて登録した顧客」とすれば、④と④’は同じことなので、以下は④’を前提に説明していきます。
まずは「新規顧客」を取り上げます。前回は「既存顧客」は大切!と申し上げましたが、「既存顧客」も様々な理由で離反します。そのため、「新規顧客」は着実に獲得を図る必要があります。
私が勤務していた百貨店の個人営業では、「新規顧客」が次から次へと獲得できるような部門ではありませんでした。ONE TO ONEのおもてなしをする訳ですから、無理難題をふっかけてきたり、態度が非常に悪かったりなど、担当者との信頼関係を構築できない方は困る訳です。そのため、顧客は招待制をとっていて、お客様の方から「私を外商顧客にして!」と言ってきても「はい、わかりました!」とはならないのです。特に、自ら言ってくるお客様は百貨店個人営業の役割を誤解している方が少なくなく、「一般のお客様よりも割引をしてくれる」とか「エルメスとか入手困難なものを手配してくれる」、「連絡すると商品を自宅まで持ってきてくれる」、「駐車場が無料になったり、専用サロンが使える」などなど…もちろん対応することもあるのですが、こうしたサービスを期待している方は、お断りすることもあります。あとでトラブルになる可能性があるからです。むしろ、間違いないのは既に信頼関係が構築されているお客様からのご紹介でした。こうしたロイヤルカスタマーは、私たち企業のファンであって、商売繁昌を一緒に喜んで頂ける方々です。だから、ご紹介頂く際には「この方は私よりもっと買いますよ!」などとおっしゃいます。実際にそうなんです。百貨店の個人営業部門の新規獲得ルートは、ご子息御令嬢の分離独立と既存顧客からの紹介が一番多いし、最も貢献度の高い顧客が獲得できるルートでした。
百貨店個人外商はちょっと特殊かもしれません。では一般的な新規顧客獲得も考えましょう。当たり前ですが、新規顧客の獲得には経費が掛かります。メーカーで言えば、自社のウェブサイトに掲載する、価格比較サイトに掲載する、アマゾンなどの通販サイトに掲載する、新聞や雑誌に広告を掲載する…などなど。どのチャネルを活用するのか、については経費対効果を考えて実施します。これは分かり易い。一方で、サブスクリプション(継続課金)型の商売の場合には損得勘定に工夫が必要です。その顧客が生み出す将来的な価値を測って、コストと比較すれば良いわけです。
CLTV(生涯顧客価値)=P(顧客がもたらす利益の累計)-AC(獲得経費)
※Pについては割引率を考慮する必要があるのですが、ここでは分かり易くするために割愛
獲得した顧客がどのくらいの期間継続することが期待できるのかによってPの大きさは変わってくる訳です。永く契約頂けるならば、獲得経費はある程度大きくてもCLTVは黒字。一方、短期間で解約されてしまうならば、獲得経費は小さくないといけない。
こんなことを考えて、獲得施策は考える必要があります。
次回は「既存顧客」の話を致します。