売上向上のために(その4)~既存顧客〈前編〉
「売上あげろ!」と言われても、売上が突然出てくるわけではありません。
売上はお客様が「これ下さい!」と言って頂いた瞬間に生まれてくる訳です。そのために、従業員は何をしなければならないかを指示する必要があります。つまり、売上をコントロール可能な素数に分解して、従業員の行動を決めて実践するようマネジメントする訳です。
〈売上高の方程式〉
①売上高=買上客数×1客単価
②売上高=買上客数×1客点数×1点単価
③売上高=顧客数×買上頻度×1客点数×1点単価
④売上高=(既存顧客数×買上頻度+新規顧客数)×1客点数×1点単価
①はもっとも基本的な方程式です。買って頂けるお客様の単価をアップすることで売上拡大につながります。但し、「1客単価」もより高額品を買って頂く場合もあれば、もう1点買って頂くことでも良い。これが②です。①や②はショッピングセンターなど、多くの来店者数が見込める小売店では活用できるでしょう。しかし、わざわざ来店頂かなければならないお店の場合には、買上客数を増やす努力が必要であり、それが③となります。登録顧客(=顧客数)を増やす活動を継続し、その登録顧客に対して接点をもって来店を促す活動が売上拡大につながります。さらに言えば、「買上客(数)」は「既存顧客(数)」と「新規顧客(数)」に分割できます。「新規顧客」には「買上頻度」を掛けないのは1回目のみだからです。2回目以降は既存顧客へ編入します。
どの方程式を使っても良いのですが、従業員の行動をより明確にするためには③、④が使いやすいと思います。この方程式が便利なのは、素数を改善するとその影響が売上全体に結びつく仕組みが明確になることです。例えば③で言えば、一人当たりの買上点数=「1客点数」を1割改善すれば、売上も1割上がる…そういった仕組みになっています。
ちょっと工夫が必要なのが④。「既存顧客数×買上頻度+新規顧客数」を1割改善すれば、売上も1割上がるのですが、施策の内訳をいろいろ考えることになります。一般的には新規顧客獲得のコストは既存顧客の維持コストよりも5倍(フレデリック・F・ライクヘルド)掛かると言われていますので、同じ労力を掛けるならば既存顧客へのアプローチがまずは大切です。もちろん、既存顧客は何らかの理由で離脱していくので、新規顧客獲得の努力は必要なのでありますけど。
ここからは各素数の改善による売上向上の仕組みづくりの話になります。業界によって取り組み方法は異なりますが、次回は特定の業界を取り上げて具体策への結びつきを考えてみたいと思います。