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売上向上のために(その1)~「火の用心」の伝言ゲーム~

鈴木一正

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テーマ:顧客戦略

「売上を上げろ!」と言われても…

ある部長会議で、社長が「火の用心」と呼び掛けた。すると部長たちはそれぞれ課長を集めて「火の用心が大切だ!」と説明した。今度は課長たちが係長たちに対して「火の用心」を繰り返し、係長はメンバーたちに「社長が『火の用心』と言っている…」と伝える。
これは有名な笑い話です。しかし、この伝言ゲームは企業組織の本質的課題を明らかにしているとも言えます。皆さんの会社でもこんなことはないでしょうか?

会社組織の基本は「官僚制」にあると言われます。沼上幹『組織戦略の考え方』(ちくま新書、2003年)には次のように書いてあります。
「『しっかりした組織』と言っているのは、各人が自分で判断できる問題をほとんど自動的にミスなく解決し、判断に迷う問題を即座に上司の判断に委ねる、といった一連の作業を至極当たり前のように遂行する組織のことである。基本的な判断のルールをしっかりと守る人々が、何階層かのヒエラルキーで結び付けられた組織、すなわち、官僚制組織である。」
今では、「官僚制」というと仕事が遅い、融通がきかない…という悪いイメージがありますが、自分で判断できる問題を自動的にミスなく処理する=「プログラム」、判断に迷う問題を上司の判断に委ねる=「ヒエラルキー」の2つは組織としての基本です。この「プログラム」と「ヒエラルキー」が機能していない企業って実は少なくないのかもしれません。

さて、「火の用心」の伝言ゲームを避けるにはどうしたら良いのか。上位の階層になるに従い権限の範囲は拡大する訳ですから、それぞれの役割に応じた具体的な行動が求められます。では、何をするのか? 売上は社内では生まれず、お客様から頂戴するものですから、お客様が喜んでお買いものをして頂ける仕組みを創ることです。その仕組みを実践するのは顧客接点に立つ従業員。従業が何をすべきか、これがポイントになります。従業員に「売上を上げろ!」と言っても、一時的には上がるかもしれませんが、それでは継続しません。人が替われば出来なくなります。ではどんな指示を出すべきなのか、それが次回のテーマです。

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鈴木一正
専門家

鈴木一正(経営コンサルタント)

合同会社スズセイ

百貨店個人営業(外商)での経験をもとに、BtoC企業のお得意さまづくりをサポート。訪問や電話などアナログな接点づくりを大切にする顧客戦略の設計図を描き、お客さま本位の働き方改革を実現します。

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