鏡像関係は、絶対的孤独な人間の寂しさと孤立感を癒す
父=去勢の機能です。去勢とは何かを別な言葉で簡単に言えば理性です。理性とは論理と知性です。知性とは論理を展開する知識のことです。論理を展開するために必要な知識・情報、これは知性です。色々な情報を知っていてそれを論理的に組み立てて伝える能力、簡潔に的確に説明する能力と言い換えてもいいでしょう。これは一切感情というものの影響を受けません。その干渉を受けないで純粋に言語だけで説明し得る能力を論理力と言います。これがいわゆる理性というものです。
この論理と理性がないと一貫性がありません。即決即断ができません。決められません。判断できないから行動できません。行動できなければ現象の改善ができません。こうして滞って家庭内問題が爆発するところまで蓄積されてしまうのです。
問題の起きない人間関係や家族、社会はありません。当然トラブルは起きます。問題は、それを処理する能力です。処理するだけの判断力と決断力と勇気と、そして知性がなければ、その判断は確信が持てないために、その問題を避けるか、もしくはその問題から逃げようとします。ですから問題が解決せずに山積みになってしまうのです。父とはそれらの問題を素早く迅速に的確に解決する能力です。
的確とは正しい結果をもたらすということです。正しいとは全員の至福に至るという意味です。誰かに利益が偏るということは正しいとは言えません。みんなが平等にその利益を被る結果をもたらして、初めて正しい判断力であり決断だったと言えます。誰か一人だけの利益、それで勝ち逃げというのは正しい判断ではありません。みんなが等しく平等に利益を被るという、その判断、決断が出来る人を去勢する父と言います。
去勢とは?
去勢とは文字通り断ち切ることです。みなそれぞれの考え方や価値観があり、それを主張します。全部矢が飛んできます。それを一つに束ねなければなりません。全員の合意と共に。
合意し、人に合わせるということは、自分の考えをある程度断ち切ることです。その断ち切るだけの論理がなくてはなりません。いや、それは違うと意見が次々に向けられ、それを断ち切れなかったら、相手の論理に負けてしまいます。そうしたらいつまで経っても答えは出ません。利益は主張した人の独り占めになってしまいます。ですから全員の利益を平等に分配するための判断をしなくてはなりません。それは相当な思考力がなければ難しいです。だから父はそれぞれの思いを断ち切るだけの刀を持ってなければなりません。それ故男性のファルスの象徴は剣なのです。それを悪用しないで理性的に使える人でなければ、感情的な人が持ったら危険です。喧嘩したら包丁持って来いなんていう、そのための断ち切る剣ではありません。
父の役割や機能について
去勢する能力をもって父と認定します。だから居るか居ないかはあまり関係ありません。機能がなければ父は不在です。生物学的に存在した父は意味がありません。ただ居るだけ、ただ働いているだけ、ただお金を入れているだけでは父ではありません。父の父たる所以とは、トラブルが発生した時の処理能力です。それを理性的に対処し解決する能力と私は具体的に定義したいです。
事が起きないうちは、父の父たる所以の能力も求められません。だから父はなかったことにしたいのです。目を瞑れ、聞くな、なかったことにしろと、事を荒立てません。隠したがります。世間に見えないように隠蔽したくなります。さも何事も起きてないかのようにしたいのです。そうすれば問題処理能力は問われないからです。
ともかく解決は一言です。父の切り札は何だと思いますか? これは私たちの無意識の中に深く沈み込んで隠された言葉です。それは「我慢しろ」です。これは似非解決です。みんな我慢しているんだから我慢しろ、文句言うなと、この伝家の宝刀を抜いて、これで解決したように思うのです。
こうして父の機能は問題が生じた時に問われます。ですから存在ではなくて機能、いわゆる役割があるという、その役割をフロイトは去勢という任を父に与えました。これに遭遇する時期を歴史的真理と言います。要するに否が応でも人間が成長していく中で、去勢の場面に遭遇してしまうと言っています。誰もが避けようがないという意味です。ところが実際に去勢が行われるかどうかは別です。それは真の父が居た時に行なわれると言っています。
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