「犯罪はなぜ起きる!?」犯罪のメカニズムと防犯対策
犯罪不安の高まりと新たな防犯対策
凶悪犯罪の報道増加に伴い、犯罪不安の高まりと対策の行き詰まりを感じていませんか。行き詰まり感は思考の停止を招き、危険な状況を放置する結果になりますので、注意が必要です。
一般的な防犯対策の考え方として、守る対策(鍵、防犯ガラス、防犯ブザーや護身術など)と抑止する対策(防犯カメラやセンサーライト、セキュリティーシステムなど)が挙げられます。しかし、昨今の犯罪情勢を鑑みると、犯罪者の欲求は高まる一方であることから、新たな考え方を増やさなければならないと実感します。
犯罪不安を軽減する考え方
防犯対策の新たな考え方として、「防犯環境設計(CPTED)」環境設計による犯罪予防があります。この考え方は「まちづくり」に活かされており、一定の効果をあげています。また、犯罪の発生を前提に考えられた従来の防犯対策と違い、犯罪の発生を事前に予防する対策になります。基礎となるのは、物的な環境を適切に整備・管理し、効果的に利用することで犯罪の機会を減らし、犯罪不安を軽くすることです。手法は、犯罪発生のメカニズム「日常活動理論」を基に、「監視性の確保」「領域性の強化」「接近の制御」「被害対象の強化・回避」に分類して行います。また、同時にコミュニティの促進と改善が必要とされ、交通安全や環境美化(適切な整備・維持管理)などと同時に考えることで、相乗効果が期待できる考え方です。
□自然な監視性を確保する(見通しを良くする、十分な夜間照明を確保するなど、交通安全と共通する対策)
犯罪を企む者は、誰かに見られていると感じる場所では、安易に被害対象(物や人)に近づきません。
□生活圏の領域性を強化する(不法投棄の撤去や掃除など、地域内を美しく保つことは住民の関心があるサイン)
犯罪を企む者は、地域を下見して、被害対象(物や人)に近づきにくい地域を避けます。
□犯罪を企む者の接近を制御する(領域を分離することで、近づけない)
住宅地の出入口を限定して交通量を少なくすると、犯罪を企む者が被害対象に近づきにくくなります。
□被害対象を強化・回避する(物的な強化や改修などで、標的にさせない)
ブロック、コンクリート塀などを生垣やフェンスに改修すると、落書きできません。
コミュニティの強化こそ真の防犯対策
犯罪は、企む者と標的、監視者の不在(3要素)が揃って発生します(日常活動理論・犯罪発生のメカニズム)。
現代社会に於いては、刑法の厳罰化と犯罪者(企む者)の社会的排除という形で、安全を補完しようとする現実があります。しかし、結果として再犯・凶悪化という現実も見逃せません。また、社会のグローバル化に伴い、標的も多種多様化の一途を辿っています。つまり、犯罪発生の3要素「企む者」と「標的」の排除には限界があり、防犯対策に行き詰まりを感じてしまいます。そこで、残りのひとつ「監視者の不在」、犯行の機会を減らす手法で安全を補完します。
犯行の機会を減らす手法には、物理・地理的に予防する方法と意識の向上を図る方法の二つが考えられます。物理・地理的に予防する方法には、前述4つの手法が挙げられます。意識の向上は、学ぶことで警戒心を養うことです。しかし、どちらか片方だけでは効果が半減してしまい、安全を実感できないでしょう。犯行の機会を減らすためには、物理・地理的に予防すると共に意識の向上を図る必要があり、継続することが重要です。無理なく継続するために、相乗効果が考えられる「交通安全」や「環境美化」との連携、定期的なイベント・野外活動など通して、一体感を強める(コミュニティを強化する)ことが大切です。そして、交通安全や環境美化運動が盛んな地域では、青少年の規範意識が高く、犯罪や非行が少ないことも知られています。つまり、「防犯環境設計(CPTED)」という考え方は、犯罪行為を未然に防ぐだけでなく、新たな犯罪者を作り出さない効果もあります。