墓地需要の移り変わり(1980年代~2010年代)
昨日の散骨の話題に関連して、「自然葬」について書きます。
葬送の自由を求める風潮が出てきて以来、その影響で「自然葬」という言葉もまた、一般的に使われるようになりました。そもそも自然葬ってどんなものでしょうか?
真っ先に思い浮かべるのは、散骨だと思います。最近では、樹木の根元にご遺骨を埋葬する「樹木葬」も自然葬の一つとして取り上げられています。しかしながら、これらは本当の意味での自然葬ではありません。自然葬とは、風葬や鳥葬、水葬など、ご遺体がそのままの形で自然に帰るものです。一度火葬してしまった時点で、それはもはや「自然」ではありません。温帯湿潤気候で人口の多い日本では、「自然葬」は現実的に無理なのです。
死して自然に帰る。このロマンチックな響きが先行して、自然葬のイメージが定着している部分があります。ところが、山林にご遺骨を撒けば、骨はそのままの形を保ったまま残ります。ご遺骨を入れた骨壺を木の根元に埋葬しても、土に帰ることなどないのです。もちろん、散骨や樹木葬をどんな埋葬方法かきちんと把握した上で選択すること自体、否定するものではありません。問題は、実態が把握されないまま、「自然葬はこれからのトレンド」「お墓を建てるなんて古くさい」とイメージだけが先行してしまうことです。
埋葬方法は一度選んでしまえば、後でやり直すということはなかなか出来ません。いざ、どなたかが亡くなった後、慌てて相談しても時間的な制約があります。話し合うには勇気がいるかもしれませんが、葬送方法について、あらかじめ話し合っておくに越したことはありません。