民法(相続法)が変わります(その2)
昨日(2019年2月20日),最高裁が「配偶者の不貞行為の相手方に『離婚の』(不貞行為の、ではない)慰謝料を請求できるか」という点につき,興味深い判断を示しました。(最三小平成29年(受)1456)
判決は以下のとおり判示して,結論として「夫婦の一方は,他方と不貞行為に及んだ第三者に対し,特段の事情がない限り,離婚に伴う慰謝料を請求することはできない」(裁判所ホームページの「判示事項」)と判断しています。
判示部分は
「夫婦の一方と不貞行為に及んだ第三者は,これにより当該夫婦の婚 姻関係が破綻して離婚するに至ったとしても,当該夫婦の他方に対し,『不貞行為を理由とする不法行為責任を負うべき場合があることはともかくとして』,『直ちに』,当該夫婦を離婚させたことを理由とする不法行為責任を負うことはないと解される。
「第三者がそのことを理由とする不法行為責任を負うのは,当該第三者が,単に夫婦の一方との間で不貞行為に及ぶにとどまらず,当該夫婦を離婚させることを意図してその婚姻関係に対する不当な干渉をするなどして当該夫婦を離婚のやむなきに至らしめたものと評価すべき特段の事情があるときに限られるというべきである。」
(強調のカギカッコは筆者によるもの)
この際高裁判決の意味するところは,以下のとおりと思われます。
1 婚姻関係に対する不当な干渉等の『特段の事情』がない限り,当該夫婦が『離婚に至った』ことに対する不法行為責任を負わない。
2 『不貞行為を理由とする不法行為』はこれまでどおり成立する余地がある
なお,当該事案は不貞行為発覚時に不貞関係が解消され,その後「特段の事情」に当たる事実がなかった,という点で請求を棄却したものです。この当てはめ部分も,今後の実務において参照されるべきところだと思います。
今後は『特段の事情』の具体化と,具体的な事件において『不貞行為を理由とする不法行為責任』であることをどのように認定・評価(特に賠償額の算定については責任の対象が明確になった影響があるかもしれません)していくか,というところが実務上の課題になるのではないかな,と思うところです。