不貞行為の賠償責任についての最高裁判決
本年7月6日に,民法(相続法)の改正案が国会で成立し,40年ぶりに相続に関する規定が改正されることになりました。
改正内容は大きく分けると,①自筆証書遺言の活用促進,②配偶者の権利保護,③現行法での問題点の修正,となっています。
このうち,今回は自筆証書遺言の活用についてご説明します。
今回の最大の改正点は,これまで「全文自筆」が必要であった自筆証書遺言について,財産目録部分については自筆を不要とした,ということにあります。
改正前は,自筆証書遺言を作成する場合,例えば土地の情報(所在・地積・地目など)を各土地一筆ごとに記載する必要があったり,預金についても金融機関のほか支店名や預金種別まで正確に記載する必要があり,遺産が多ければ多いほど作成において大きな負担となっていました。
そのため,弁護士としても,自筆証書遺言の作成はあまりオススメせず,下書きを公証役場に持参して公正証書遺言を作成する方が,費用はかかるが楽で確実,というご案内をすることが殆どでした。
しかし,今回の改正で一番大変であった遺産目録について自筆要件が緩和されたことにより,例えば土地の登記簿(全部事項証明)や預金通帳の写しに番号を振って財産目録として添付し,「財産目録1番は○○に相続させる,2番は××に相続させる…」という本文部分のみを自筆すれば良くなり,自筆証書遺言作成のハードルが大きく下がったといえます(なお,財産目録の各頁に遺言者の署名押印が必要です)。
この自筆証書遺言の要件緩和については,他の改正箇所より早く,来年(2019年)1月17日に施行されます。
また,自筆証書遺言は紛失や滅失をしやすく,相続人が遺言の存在に気がつかない,ということもよくあります。そのほかにも,第三者による改ざんの主張などが,遺産分割でもめた場合によく主張されます。
そこで,今回の法改正では,法務局で自筆証書遺言を保管する,という制度も新しく設けられました(これについては改正日から2年以内の施行となり,もう少し時間がかかります)
そのほかにも,遺言執行者の権限を明確にすると共に,遺言執行者が権限に基づき行った行為が直接相続人に帰属することを明記するなど,細かな改正がなされています。
これまで,遺言と言えば公正証書遺言が中心でしたが,今回の改正により自筆証書遺言が作成しやすくなり,今よりも遺言の活用が進むとこが期待されます。
もっとも,公正証書遺言は,遺言の内容についても公証人が確認しますのでその効力に疑義が出ることは少ないのですが,自筆証書遺言は必ずしも専門家のチェックが入らないため,内容面でのトラブルが出ることが危惧されます。
せっかく遺言を作っても,内容面でトラブルを生じさせてしまったり,遺留分等の争いを巻き起こしかねない内容であったりすると,遺言を作成した人の遺志が活かされない,ということにもなりかねません。
自筆証書遺言を作成される場合には,できれば予め弁護士にご相談いただき,形式や内容に問題が無いか,その遺言を巡って将来紛争になる可能性はないか,という点をご確認頂くことをオススメします。
次回は,今回の改正で新設された「配偶者居住権」をご紹介したいと思います。