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相続手続きは早いほうが良い?

2015年9月24日

テーマ:コラム

コラムカテゴリ:法律関連

コラムキーワード: 相続 手続き

相続に関するご相談では,多くの事例において相続発生(ご家族が亡くなった時点)からある程度の時間が過ぎていることがあります。
ご相談を受けた時点で,「多重相続」(相続された方も亡くなり,さらに相続が生じている場合)となっているケースも珍しくありません。

確かに,家族が無くなっていきなり相続という生々しい話をしたくないという気持ちもあるでしょうし,まずは相続人間の話合いで解決しようとしたが,話合いが思ったより進まず時間がかかってしまった,ということもあるかもしれません。しかし,相続手続に時間がかかってしまった場合,法的にも事実上の面でも,あまり良いことはありません。
今回は相続に時間がかかることのリスクをまとめてみようと思います。


遺産分割手続きには時効はありません。
したがって,相続発生から何十年が経過しても,相続手続きを求めることは可能です。
ただし,相続開始から時間が経過してしまうと,財産は劣化し,または散逸してしまいます。
特に不動産は相続手続きが終わらない限り全相続人の共有となりますので,売却や管理に全ての相続人の同意が必要になるなど,管理処分に大きな支障を生じさせることになります。
多重相続となった場合,「おい・めい」や「いとこ」,「はとこ」で相続手続きをすることにもなります。この場合,相続が重なるごとにどんどん当事者が増え,必要な書類を集めるだけでも一苦労です。
また,関係性が希薄になればなるほど,連絡もとりづらく,話合いもまとめにくくなることが経験上多く生じています。


また,遺産分割に付随する手続には,期間制限(時効)の問題があります。
有名なものとしては,相続放棄に関する3ヶ月の熟慮期間(民法915条1項)があります。相続開始を知ったときから3ヶ月以内に相続放棄をしないと借金も含めて相続したことになる,というものです。

他にも,遺言により法定相続分以下の財産相続できなかった場合,法定相続分の2分の1(直系尊属のみが相続人の場合には3分の1)について,遺留分減殺請求という手続が可能ですが,これは遺留分侵害の事実(遺言書の存在及び内容)を知ったときから1年以内に手続きをしないと時効により請求権が消滅してしまいます(民法1042条,なお相続開始から10年という時効もあります)。
これを防ぐためには,期間内に内容証明郵便等の証拠が残る形で,遺留分減殺の請求を行っておく必要があります。
また,あまり多くはありませんが,相続人でないものが相続した結果,相続財産が流出したことに対する相続回復請求権というものがあります。
この請求権の時効は,相続権が侵害されている事を知ったときから5年(又は相続開始から20年,民法884条)です。
なお,相続税の申告にも期限があります(相続開始から10ヶ月)。

このように,相続それ自体には時間制限はありませんが,関連する種々の問題(特に遺留分減殺請求)についてはかなり短い期間制限があります。
これは,相続に伴い変化した法律関係が後々になって覆されることは法的安定性を害するという趣旨で定められたものですが,実際は相続人間でああでもない,こうでもないともめているうちに,期間制限はあっというまに過ぎてしまいます。
また,時間が経てばたつほど書類や資料が散逸したりして,特に紛争がない場合でも手続はどんどん面倒になっていきます。紛争がある場合にはよけいに拗れてしまうこともあり,時間をかけすぎることはあまりメリットはないと言えるでしょう。
私は相続について説明をする際「四十九日の法要が終わったあたりで相続の話を始めて,できれば百か日か初盆には,長くても一周忌には目処をつけた方が良いですね」とご説明しています。
前記の期間制限の問題もありますし,だいたい1年経って相続が終わらないのは,何かトラブルの種がある場合だと思います。
相続の話が進まない場合には早めに専門家のアドバイスを受けることが望ましいといえるでしょう。
また,自分が予期しない遺言書が出てきた場合には,遺留分減殺の時効の問題がありますので,遺言書のコピーを持って,早めに弁護士に相談してください。
相談するタイミングに早すぎる,ということはありませんので,どうぞお気軽にご相談頂ければと思います。

この記事を書いたプロ

半田望

市民の法律問題を一緒に解決する法律のプロ

半田望(半田法律事務所)

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