ある日常の風景
弁護士は通常業務の他,所属する弁護士会の活動として種々の活動を行っています。
佐賀県弁護士会は総勢98名(平成27年6月現在)と,九州で唯一所属弁護士が100名以下の小規模な弁護士会ですが,ここ数年で若手弁護士が増えたこともあり,少人数をものともせず,積極的に各種活動を行っています。
その中で今回は,子どもの権利委員会(少年事件や虐待問題など,未成年者に関わる問題を取り扱う)と,法教育委員会(学校や市民向けに,法的思考や法的観点を学ぶ「法教育」活動を取り扱う)委員会のが合同で,小中学校向けの「いじめ防止授業」をご紹介したいと思います。
いじめによる悲惨な結果が発生した事件が後を絶たないことは既に説明するまでもありません。
弁護士会としては,「いじめは人権侵害である」というスタンスの下,いじめが発生(顕在化)した後の対策ではなく,もう一歩進んでいじめをさせないために,いじめによる不幸な結果が生じないためにどうすればいいか,という視点で,各学校に弁護士を講師として派遣し,「いじめ防止授業」を行っています。
これは全国的な取り組みですが,佐賀県内でも既にいくつかの小中学校で授業を行っております。
先日は佐賀大学教育学部附属中学校で,1年生を対象に授業を実施し,公開授業として報道もされています。
以下,佐賀新聞の記事を引用してその様子をご紹介したいと思います。
(6月19日付け佐賀新聞ウェブサイトより)
中学生がいじめについて考える「いじめ予防授業」が16日、佐賀市の佐賀大学附属中であった。現役の弁護士が講師を務め、いじめで子どもが自殺に追い込まれた事件や法的な視点にも触れながら、いじめの怖さを伝えた。
県弁護士会子どもの権利委員会の弁護士が1年生の4クラス158人を対象に行った。授業では、下津浦弁護士が「いじめだと思うこと」や「いじめをされたらどんな気持ちになるか」を生徒たちに質問。生徒たちは「スマートフォンのSNS機能を使った悪口」などをいじめと思うと回答し、いじめられたら「傷つく」「恥ずかしい」「嫌だけど親に心配をかけたくない」などの気持ちになると答えた。
その上で弁護士は、過去にいじめが原因で中学生が自殺に追い込まれた「鹿川君事件」などを例に挙げ、いじめが取り返しのつかない事態を招くことを指摘。「いじめは安全で安心な学校生活を送る権利の侵害。人をいじめていい権利は誰も持っていません」と強調した。
http://www.saga-s.co.jp/news/saga/10105/199204
弁護士というと,裁判や示談交渉など紛争処理を仕事にしているイメージが強いですし,実際に紛争の渦中で仕事をしているのですが,紛争が起きないことが一番である,というのはどの弁護士も共通の考えだと思います。
特にいじめは悲惨な結果を生むことも多く,また態度の大小を問わず,いじめられた側に重大なダメージを与えます。子どもたちが楽しく学校や社会で生活を送れるよう,今後もこの活動を推進していきたいと思います。