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事故物件の告知について(国交省ガイドライン読み解き)

中谷崇志

中谷崇志

テーマ:不動産業界ネタ

事故物件の告知事項について、ようやく国交省がガイドラインを作成しました。
まだこれから少しずつ改定されていくであろう内容ですが、簡単にまとめて見たいと思います。

自社ホームページの告知事項ガイドラインのまとめ記事でも似た感じでまとめてみましたが、内容的にはこちらのコラムの方が適していると思い、改めて書き直してみます。

事故物件の告知事項ガイドラインについて


事故物件の告知をどこまで行うかについては、これまで紆余曲折ある中で、暗黙の了解(業界ルール)で通ってきた経緯があります。
そのため、実際には後で裁判沙汰になることも多々あり、ようやく国交省が少しずつルール化しようと動き出しています。

「宅地建物取引業者による人の死の告知に関するガイドライン」

正式名称はこちらになります。

以下、告知事項ガイドラインと表記します。

これまで、事故物件を扱う際の告知事項は「自宅で老衰死した物件は伝えていないことが問題になるのか?」など、ケースバイケースで問題発覚や裁判になってみないとわからないという例が多くありました。

極端な裁判例だと、こんなものがあります。

「マイホームを建築するための土地売買取引のケースで、自殺が20年以上前のものであっても、仲介業者が事実を認識していれば説明義務がある。」とする裁判例

いかがでしょうか。



「20年以上前なのに?」という意見もあれば、「やっぱり、知ってれば全部事前に教えてほしい」という意見もあると思います。
世の中、事実は一つでも受け取り方は多様です。

こんな風に何をどこまで伝えればOKなのかが今までは曖昧でした。


これが、告知事項あり?の物件を売買を阻害する要因の一つになっています。




また、売買だけではなく、賃貸の場面でも困ることが多々あります。

何をどこまで伝えるのか、告知義務内容が曖昧なままで何が困るかというと、賃貸住宅で今後も増えるとされる高齢者入居の問題です。


以下、国交省ホームページからの引用ですが、

「判断基準がないことで、所有する物件で死亡事故等が生じた場合に、全て事故物件として取り扱われるのではないかとの所有者の懸念。」
 → 特に単身高齢者の入居が困難になる傾向がある

こういった社会問題がおきています。



今後訪れる超高齢化社会に向けて、少しずつ、線引きするために進められてきたのが告知事項ガイドラインになります。



主な内容


先に引用します。(簡潔に言い換えたものだけ見たい方は飛ばして下にいってください)


2.本ガイドラインの概要
〇 本ガイドラインは、取引の対象不動産において過去に人の死が生じた場合において、
宅地建物取引業者が宅地建物取引業法上負うべき義務の解釈について、
現時点における裁判例や取引実務に照らし、一般的に妥当と考えられるものを整理し、とりまとめたものです。

〇 本ガイドラインにおいては、例えば以下の事項等について整理しており、詳細は別紙1(概要)及び
別紙2(ガイドライン)をご確認ください。
・宅地建物取引業者が媒介を行う場合、売主・貸主に対し、過去に生じた人の死について、
告知書等に記載を求めることで、通常の情報収集としての調査義務を果たしたものとする。

・取引の対象不動産で発生した自然死・日常生活の中での不慮の死(転倒事故、誤嚥など)については、
原則として告げなくてもよい。

・賃貸借取引の対象不動産・日常生活において通常使用する必要がある集合住宅の共用部分で
発生した自然死・日常生活の中での不慮の死以外の死が発生し、
事案発生から概ね3年が経過した後は、原則として告げなくてもよい。

・人の死の発生から経過した期間や死因に関わらず、買主・借主から事案の有無について問われた場合や、
社会的影響の大きさから買主・借主において把握しておくべき特段の事情があると認識した場合等は告げる必要がある。


国交省の告知事項ガイドラインの報道資料


一文を長く書く表現なんとかしてほしいと毎回思っていますが、下記にまとめてみました。


【告知義務なし】

1:【賃貸借・売買取引】取引の対象不動産で発生した自然死(老衰や持病による病死など)、日常生活の中での不慮の死(転倒事故、誤嚥など)

  ※事案発覚からの経過期間の定めなし。

2:【賃貸借取引】取引の対象不動産、日常生活において通常使用する必要がある集合住宅の共用部分で発生した「1」以外の死、特殊清掃等が行われた「1」の死が発生し、事案発生(特殊清掃等が行われた場合は発覚)から概ね3年間が経過した後は告知義務なし

3:【賃貸借・売買取引】取引の対象不動産の隣接住戸・日常生活において通常使用しない集合住宅の共用部分で発生した「1」以外の死・特殊清掃等が行われた「1」の死

  ※事案発覚からの経過期間の定めなし




概要把握先行で、さらに簡単に書き換えると、こんな感じです。

【告知義務なし】

1:老衰、持病による病死などの自然死と転倒事故、食事中の誤嚥などの事故死

2:自然死などでも死後の発見に時間がかかり、大規模リフォームや特殊清掃があった場合は3年間は告知必要、3年経てば告知不要

3:賃貸住宅での隣接住戸や、通常使わない共用部での死亡は告知不要


【告知義務あり】

1:自殺や殺人

2:通常使う共用部での死亡から3年以内

3:特段の告知が求められると判断された場合


この「特段の告知が求められる場合」というのはまだ曖昧ですが、少しは線引きがしやすくなってきた感じはしますね。




<その他、留意事項>
・亡くなった方やその遺族等の名誉及び生活の平穏に十分配慮し、これらを不当に侵害することのないようにする必要があることから、氏名、年齢、住所、家族構成や具体的な死の態様、発見状況等を告げる必要はない。

・個々の不動産取引においては、買主・借主が納得して判断したうえで取引が行われることが重要である。宅地建物取引業者においては、トラブルの未然防止の観点から、取引に当たって、買主・借主の意向を事前に十分把握し、人の死に関する事案の存在を重要視することを認識した場合には特に慎重に対応することが望ましい。





要はすごく気にされている方に関しては告知事項ガイドラインだけに頼らず、配慮して対応しましょう、ということのようです。

実際にこれらを守っていれば民事裁判で勝てる!という話ではなく、
宅地建物取引業者がどこまでも責任を追うというのは現実的ではないので、こういった事象は大丈夫と仮に線を引いています、という趣旨です。
そのため実際にはまだまだケースバイケースで、告知事項ガイドラインを守っていても、裁判で負けることもあるでしょうから、過信しすぎないようにしましょう。

また、ルールが少しずつ改定されていくと思われます。

最後までお読みいただきありがとうございました。

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中谷崇志
専門家

中谷崇志(宅地建物取引業)

株式会社トライアス

「わかりにくい事をわかりやすく」伝える事をモットーに、クライアントの立場に立って丁寧にヒアリング。小さな企業だからこそ「社員の顔」が見える対応でクライアントとの信頼関係を築いている。

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