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低血糖症の改善に必要なビタミンB群

野口由美

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テーマ:病気、症状の解説

人が活動するために必要なエネルギーは、ひとつひとつの細胞のなかのミトコンドリアでつくられています。

このエネルギーをつくる過程で、必要な栄養素のひとつがビタミンB群です。

ビタミンB群が不足すると、エネルギーを最も必要とする脳や筋肉、肝臓の働きが低下し、「頭が働かない」「いつも疲れている」などの症状がおこりやすくなります。


糖が不足して、エネルギーを十分に作れない低血糖症の改善には、適度の糖を摂ることに加えて、ビタミンB群の摂取が必要です。

今回は、ビタミンB群の働きをみていきましょう。

お互いに助け合うビタミンB群

ビタミンB群に属する栄養素としては、ビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンB6、ナイアシン、パントテン酸、ビオチン、ビタミンB12、葉酸などがあります。

これらのどれかひとつだけでは効果を発揮しにくく、お互い助け合いながら働いているため、これらのビタミンをまとめて「ビタミンB群」と呼んでいます。

そのため、ビタミンB群という複合体としてとるのが望ましいのです。


ビタミンB群は植物性食品だけでなく、動物性食品に多く含まれます。

ビタミンBと聞くと、野菜に多いように考えがちですが、実は、肉や魚、卵などの動物性食品を食べないと、ビタミンB群は不足してしまうのです。

糖質の代謝に必要なビタミンB1

ビタミンB1はチアミンとも呼ばれる水溶性のビタミンで、糖質をエネルギーに変えるさい必要な栄養素です。

糖質やアルコールを代謝する際、大量のビタミンB1が消費されますので、毎日、甘いお菓子が欠かせない方や、お酒を飲む習慣のある方は、ビタミンB1が不足しやすくなります。

そのほか、激しい運動をするなど、エネルギー消費の多い方も、より多くのビタミンB1が必要になります。


ビタミンB1が不足すると、ブドウ糖からエネルギーを作ることができないため、疲れやすい、食欲不振などの症状が現れます。

また、脳はブドウ糖をエネルギー源としているため、ビタミンB1が不足すると、脳のエネルギーが不足して働きが低下します。


さらに、重症になると脚に力が入らず立つことができない脚気となり、心不全を起こすこともあります。

ビタミンB1を多く含む玄米から白米を主食とするようになった時代では、脚気にかかる人が多くみられました。

現代でも、インスタント食品やスポーツ飲料、アルコールなどの過剰摂取により、ビタミンB1が不足し、脚気にかかる人もいます。


ビタミンB1は、肉、魚、豆、ナッツなどのほか、玄米、胚芽米など胚芽の部分に多く含まれています。

気持ちの安定に必要なビタミンB6

ビタミンB6はアミノ酸代謝で重要な働きをしており、皮膚、粘膜、髪、歯、爪などの生育にはなくてはならない栄養素です。

不足すると、湿疹、皮膚炎、口内炎、舌炎などの症状がおこります。


GABAやセロトニン、ドーパミン、アドレナリン、ノルアドレナリンなどの神経伝達物質を作る際にもビタミンB6が必要です。

そのため、不足すると、イライラ、不安、抑うつなど精神的な不調をもたらします。

ビタミンB6は、気持ちの安定に必要な栄養素なのです。


ビタミンB6はカツオやマグロなどの青魚や肉、レバーなどの動物性食品に多く含まれます。

ビタミンB6が働く際、ビタミンB2が必要になりますので、両者を合わせて摂るとよいでしょう。

造血のビタミン:葉酸、ビタミンB12

植物の葉に多く含まれる葉酸は、妊娠初期に胎児の神経管形成に必要な栄養素としてよく知られています。

葉酸は、DNAの合成を促進して、細胞の生産や再生を助けることから、妊婦だけでなく、すべての人に重要な栄養素です。


葉酸は、野菜に多く含まれるイメージがあるかもしれませんが、実は、鶏や牛、豚の肝臓や、卵、納豆などに多く含まれています。


ビタミンB12とともに赤血球を作ることから、「造血のビタミン」と呼ばれ、年齢を問わず必要な栄養素です。

葉酸、ビタミンB12が不足すると赤血球が大きくなり、赤血球が末梢血管を通りにくくなることから、冷えを感じやすくなります。

ビタミンB12は神経細胞の合成にかかわっており、不足するとしびれや歩行障害などの神経症状が現れます。


ビタミンB12の吸収には、胃から分泌される内因子と胃酸が必要です。

胃全摘術後は、内因子と胃酸が不足するため、ビタミンB12の吸収障害が起こり、ビタミンB12が欠乏することが知られています。

そのほか、ヘリコバクターピロリ菌感染による慢性胃炎、胃酸分泌抑制剤を長年飲まれている方も、内因子と胃酸の分泌が低下し、ビタミンB12の低下を招きます。


ビタミンB12の欠乏が疑われた際には、ヘリコバクターピロリ菌感染の検査や胃カメラ検査を受けていただくようおすすめしています。



ビタミンB12は動物性のたんぱく質である魚介、肉、卵に多く含まれます。
そのため、肉や魚をたべない人、菜食主義の方にビタミンB12不足がよく見られます。



最近、ビタミンB12と葉酸が、虚血性心疾患のリスク低下に関与することがわかってきました。

ホモシステインは、血小板を凝集させ、血管を広げにくくする作用があるため、血中に増えすぎると動脈硬化を招きます。

ビタミンB12と葉酸は、このホモシステインをメチオニンに変換する反応を助け、血中のホモシステイン濃度を低下させることから動脈硬化の予防・心疾患リスクの低下につながると考えられています。

脂質の代謝に重要:ビタミンB2

ビタミンB2は、糖質、脂質、タンパク質の代謝や、エネルギー産生に関わっています。

特に、脂質を分解してエネルギーに変える脂質代謝で重要なことから、糖質制限中で脂質の摂取割合が多い方、脂質の多い食事をされる方には必須の栄養素です。

そのほか、皮膚や粘膜、髪、爪などの細胞の再生を助けることから「発育のビタミン」とも呼ばれています。


不足すると口内炎、口角炎、舌炎、脂漏性皮膚炎、角膜炎などを起こします。
成長期の子どもの場合、不足すると成長障害を起こします。

エネルギー消費量が多い人ほどビタミンB2を必要とするので、活動量の多い子どもの場合、不足しないように注意する必要があります。


ビタミンB2は、魚介、肉、藻類、豆、卵、野菜、種実などに多く含まれます。

ビタミンB群のサプリメントをとると、尿が黄色になりますが、これはビタミンB2の色です。

尿の色を見て、「ビタミンが排泄されてしまって、もったいない」といわれる方がいらっしゃいますが、できるだけ黄色を保つように、ビタミンB群をとるのが効果的な取り方です。


風邪をひいたり、忙しくてストレスが多くなると、ビタミンB群が消費され、尿の色が薄くなります。

そのようなときは、いつもより多めにとるなど工夫していただくとよいでしょう。

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野口由美
専門家

野口由美(医師)

クリニック千里の森

患者一人ひとりの個性を重視した「患者ファースト」の治療方針のもと、薬に頼らない医療を提供。近代西洋医学の最前線で培った豊富な知識、自身の体験を裏付けに、幅広い選択肢の中から最適な治療法を提案します。

野口由美プロは朝日新聞が厳正なる審査をした登録専門家です

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