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栄養療法って、ブラック企業を生き抜くためではなく、本当にやりたいことをするため

野口由美

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テーマ:症例紹介

「いつも疲れていて、横になりたいと思ってしまうんです。
こんな自分は怠け者です」
50歳の女性はそう言って、自分を責めておられました。

それが、栄養療法を始めたところ、体調は改善し、気持ちも安定し、パートをやめて起業を考えるまでに変化されたのです。

女性のお話しから、皆さんにも知っておいていただきたい、栄養療法のゴールについてもお話しいたします。

栄養療法の目的とは何か、今一度、確認していただけるとうれしいです。

「いつも疲れています」

50歳のパート勤務の女性です。
この数年、調子が悪いと来院されました。

「常に横になりたいと思ってしまって、なんて怠け者なんだろうかって思います。
それに、しょっちゅう、立ちくらみがあるのも気になっています」

「職場では、まわりが普通にできていることでも、私はできていないと感じます」

「周りと比べて劣等感を感じていて、自分はだめな人だ」と思うようになったと言います。

「パートしていなかったときは、何も仕事をしていない自分はだめな存在だと思っていました。
仕事を始めたら、今度は緊張してしまって、何か話しかけられても即答できません。

仕事も、自分のやりかたで、ていねいに進めたいけれども、職場ではそのような仕事の仕方は求められていないみたいで、必要とされていないような気がしてしまいます」

「栄養療法に関心があって、自分は栄養が足りないんじゃないかと思っているんです」

鉄欠乏

持ってきていただいた、検診の結果を見ますと、Hbが13から11と年々低下しています。

MCVも年々低下しています。3年前の80は明らかに低いですが、今は75ともっと下がっています。

年々低下するということは、からだのどこかで少量ずつ出血するような病気があって、毎日、少しずつ鉄が失われている可能性が高いです。

もしくは、婦人科系の病気があり、生理出血が多いためかもしれません。

消化器内科を受診して、胃カメラや、便潜血、大腸検査をして、胃腸の検査をしていただくこと、また、婦人科受診をして、子宮卵巣の病気がないかどうかを調べていただくようにお勧めしました。

白血球分画では、リンパ球と比べて好中球の割合が非常に高く、緊張している、もしくは、強いストレス下にあるように感じられます。

低血糖

次に注意したいのは、中性脂肪が60を切っているということです。
これは、低血糖になっているということを示しています。

エネルギーを作るためには血糖が必要です。

低血糖だと、エネルギーを作れないので、疲れていたり、頭が働かないと感じているかもしれません。

筋肉を動かすには、エネルギーが必要ですから、低血糖だと筋肉を動かせない、立っていられなくて、横になっていたいと感じるでしょう。

頭を使うのにも、気持ちを安定させるのにもエネルギーが必要です。
そのため、低血糖だと考えがまとまらない感じがしてしまうのです。

感情面も不安定になるので、「自分はダメだ」って感じたり、イライラしたり、ウツっぽくなったりします。

ビタミンB群不足

さらに、肝機能のAST、ALTを見るとビタミンB群不足が考えられます。

鉄欠乏性貧血、ビタミンB群不足があると、「エネルギー不足、感情が不安定」になりやすいです。

エネルギーを作るには、鉄とビタミンB群が必須なんですね。

それに、神経伝達物質を作るときにも、鉄とビタミンB群が必要です。

「いつも横になっていたい」って感じるのも、気持ちが落ち込みやすいのも、
鉄とビタミンB群不足そして低血糖が原因になっているって考えられます。

低血糖に対しては、まず、三食を摂っていただくことと、食事と食事の間に補食を摂っていただくことを勧めました。

また、希望もあってサプリメントを始めることになりました。

「いつも横になっていたいって、自分が怠けもののように感じていたので、自分が悪いわけじゃない、病気のためだったんだってわかって、とても気持ちが楽になりました」

もっと詳しい検査をしたいと希望され、栄養療法のための詳細な血液検査を行いました。

婦人科、内科を受診してきた

1か月後です。
「婦人科を受診したら、腺筋症と言われ、治療を始めました。
また、内科で検査しましたが異常はありませんでした」

「先生に食事や補食を教えてもらって、続けています。
以前はすぐに横になっていたんですが、そういうことはなくなりました。
なんだか、体が楽になってきたような気がします」

「前回の診察で先生から、ストレスかかっているのでは?って言われて、それはおそらく仕事のことだなって思って、もう仕事をやめてもいいかもって思ったら気が楽になりました」

2か月後です。
「以前はよくスナックを食べていたのですが、すっかりやめて、補食のおにぎりを摂るようになって、体調が変わったと思います。

小麦や牛乳、コーヒーもやめました。

食事をちゃんととって、サプリメントを続けていたら、体調が明らかに変わってきたって感じています」

栄養療法の目的は、ブラック企業を生き抜くためではない

半年後です。
「検診があって、数値がよくなっていたんです。
こちらでも詳細な検査をして、よくなったかどうか確認したいと思って来ました」

「職場の雰囲気がさらに悪くなっていて、本当にいつやめようかって毎日思っていたんですけど、
以前なら、ここでとても体調が悪くなっていたのに、
今は、栄養に気を付けているから、元気なんですよね。
それなら、職場は嫌だけど、こんなブラックな職場でもなんとかやっていけそうだなと思っているところなんです」

この考え方はとても危険です。


栄養療法を始めて元気になってよかった、

ブラック企業でも、なんとかやっていけそうでよかったって…、

そんなことのために、栄養療法するんじゃないんですよ!

パワハラを生き抜くためでもないです。


元気になって、自分が本当に好きなこと、やりたいことをしていただくためにお伝えしています。


栄養療法は、本当にやりたいことをするためのものなんです。



ブラック企業でも仕事できるくらいに元気になったといって、同じ職場で仕事を続けていると、遅かれ早かれ再び体調不良に陥ります。

次回は初回よりももっと回復が難しくなります。


栄養療法で元気になって、頭もしっかり働くようになったら、今の環境でいいのか、離れるべきか、判断できるようになります。

さらには、自分に適切な環境とはどんなところなのかも明確になります。

そして、自分にとってよりよい環境に動くことができるようになっているのです。

栄養療法は、自分にとってよりよい環境を選び、その環境に移動するだけの体力、気力を作り出すのを助けてくれるのです。


他人のためにより一層頑張れる自分になるのではなく、
自分のために治療しているってこと、忘れないようにしましょう。

本当は起業したいって思ってる

「私、先生のその言葉を聞きたくて、今日来たんだってわかりました。
先生、私、実は、やりたいことがあって、でもどうやってやったらいいのかわからなくて、逃げていたんです。

でも、先生の言葉を聞いて、これはやってみようって決心しました。
こんな変な職場でくすぶっている場合ではなかったですね」

低血糖が解消され、ビタミン、ミネラルが充足してくると、人ってこんなに意識が変わるんです。

以前は、「自分ってだめだ、価値がない」って自分で自分を責めておられました。
でも、食事や栄養に気を付けていると、1年もたたないうちに、自分で仕事を始めようっていう気持ちと体に変わるのです。

「こんな自分はダメだ」って感じている方がいらっしゃったら、一度、栄養状態を専門の方に診ていただくといいかもしれません。

自分がダメなんじゃなくて、ただ、ビタミン、ミネラルが足りないだけ、低血糖なためかもしれませんよ。

それなら、栄養対策を始めればいいだけ。

あなたのこれからの人生、大きく変わっていくかもしれません。

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野口由美
専門家

野口由美(医師)

クリニック千里の森

患者一人ひとりの個性を重視した「患者ファースト」の治療方針のもと、薬に頼らない医療を提供。近代西洋医学の最前線で培った豊富な知識、自身の体験を裏付けに、幅広い選択肢の中から最適な治療法を提案します。

野口由美プロは朝日新聞が厳正なる審査をした登録専門家です

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