家族葬が増えている理由とは?高齢化社会から見る現代の葬儀の在り方
先日、行きつけの居酒屋さんを切り盛りしていた”お母さん”のお葬式をしました。
その居酒屋さんは15人ほど入ればいっぱいの広さ、いわゆる個人店です。
仕事終わりに覗くと、いつも店内には人がいっぱい。
その場所で30年続けた地元の大人気店でした。
事前相談
亡くなる前日、「お母さんの病気の状態が危ないので事前相談をしたい」と、ご家族から連絡がありました。
「お母さんの入院している病院で話を聞きたい」との事で、ご家族と時間の約束をして病院のロビーに向かいました。
がらんとした院内の待合室の端に、娘さんがひとり。
娘さんと一席空けて座り、お母さんの病状を聞いて、もし亡くなった場合どのようなお葬儀をしたいのか聞いていきました。
お母さんは危篤状態で、いつ亡くなるか分からないとのこと。
また、常連のお客さんには連絡をせずに家族のみで当社のホールで家族葬をしたいとのことでした。
一般的には、現役でどこかで勤めていたり、お店をしたりしていると、弔問客の多さゆえに家族葬を行うのは難しい現状があります。
そのうえ、当社の家族葬ホールは20名ほど入るといっぱいで、多くの弔問客に来ていただく大きさではないのです。
娘さんの話では、お葬儀に来てもらう親族は10名ほどで、あとは少しだけ常連客を呼ぶとのことでした。
亡くなった時はお店の前を通って当社のホールに搬送することに決まり、その日は会社に帰りました。
訃報の連絡
翌日のお昼すぎにご家族から、「お母さんが亡くなった」と連絡がありました。
一時間後にお迎えに行く約束をして、寝台車で病院に向かいました。
お母さんは生前と変わらない穏やかな顔で息をひきとり、病院のベッドに横たわっていました。
打ち合わせ通り、お母さんの居酒屋の前を通り、当社の家族葬ホールに搬送しご安置させてもらいました。
常連客の参列をどうするかご家族に聞いてみたところ、ご家族様たちだけでお葬儀をしたいとのこと。
当社の式場とお店が1キロほど離れているため、常連客の皆さまにも知れ渡ることなく、お通夜お葬儀ともに親族10名ほどで執り行いました。
娘さんやお孫さん達に見守られ、お母さんは荼毘にふされました。
葬儀後、娘さんがこうおっしゃってました。
「家族葬の良いところは故人とゆっくりとお別れの時間が持てることだと思います。
お参りの方々が多いと気を使わなくてはいけなくて、寂しいんでる暇もなく荼毘にふされてしまうから。
それと、家族葬を選んだのは、本当に故人を思う方々だけに来てもらいたかったから。」
今回は密葬として家族だけで見送り、後日、2日間限定でお店を開けて、常連客の皆さまに食事をしてもらい、お母さんを偲んでもらうことにしたようです。
お葬儀が無事に終了した10日後、娘さんは店を開け、常連の皆さんと共に愛情溢れるひと時を過ごされたようでした。
時代の流れと共に、家族葬がこれからの主流になるのでは?と感じています。
家族だけで気兼ねなく大切な人を送ることで、大変有意義な時間を過ごせると思います。
しかし、それまでの生活の中で培ってきた近所付き合いや、仕事を一緒にしてきた仲間も、最後は一緒に見送りたいと思うのも事実でしょう。
葬儀の在り方に正解はありません。
故人やご遺族が満足できる葬儀を行うことが大切なのです。