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上将倫

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上将倫(かみまさのり) / 弁護士

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コラム

男女間トラブル事件簿その13~独身だと信じていた交際相手が既婚者だった!慰謝料を支払うのは誰か?

2015年3月27日 公開 / 2021年2月24日更新

テーマ:男女間トラブル事件簿

コラムカテゴリ:法律関連

コラムキーワード: 不倫 慰謝料

 「お見合いパーティーで知り合った彼と結婚を前提に付き合っていたのですが、ある日、突然、彼の妻だという女性から慰謝料を請求されました。私は、彼が結婚しているなんて知らなかったのに、支払わないといけないのでしょうか。騙されて被害に遭ったのはこっちの方で、逆に、彼に対して慰謝料を請求したいです」

 このように、独身だと信じて付き合っていた交際相手が、実は既婚者だったというケースは、意外に少なくありません。事案の数は減りますが、男女が逆転し、彼女の夫を名乗る男性から慰謝料を請求されるというケースも、もちろん存在します。
 このような場合、果たして、いったい誰が、誰に対して、慰謝料を支払わなければならないのでしょうか。

 まず、独身であると偽っていた交際相手に対して、慰謝料を請求できるかどうか考えてみましょう。

 そもそも、慰謝料を請求するためには、相手の言動が、ただ単に道徳的に許されない行為であるというだけでは足りず、違法な行為であること、すなわち、「他人の権利を侵害する社会的相当性を著しく欠く行為」であるといえなければなりません。

 この点、交際相手が、結婚しているのに独身であると偽って、男女の交際をするという行為そのものは、道徳的には大いに問題がありますが、それだけで直ちに違法であるとまではいえません。
 例えば、男性と出会い系サイトで知り合い、独身であるとの偽りの言葉を信じて、合意の下、一度だけ肉体関係をもったというような場合に、一連の男性の行為を違法であると評価することは困難です。

 しかし、結婚を前提とした真摯な交際をしようとしている者に対して、独身であると偽り、交際を続けていたとなると話は別です。
 このような場合には、交際相手の一連の行為は、あなたの人格権を侵害していると考えることができるため、違法な行為であると評価されて、慰謝料請求が認められる可能性があります。
 具体的には、「どのような経緯で知り合ったのか」、「交際期間はどの程度か」、「肉体関係の頻度はどれくらいか」、「独身であるとの話にどの程度の信憑性があったのか」、などの事情を総合的に考慮して、違法性があるのか否か、あるとして、慰謝料の金額はどの程度になるのかが判断されます。

 冒頭の事例の場合、「お見合いパーティー」という結婚を前提とした場所で知り合い、交際を継続していたわけですから、違法性があると評価されやすいケースであるといえるでしょう。

 では、交際相手の妻(夫)から慰謝料請求を受けた場合については、どうでしょうか。
 彼の妻から、不倫を理由に慰謝料を請求された時に、「私は、彼が既婚者だとは知りませんでした」と言って、支払を拒むことはできるのでしょうか。

 不倫をすることが、先述の「違法な行為」であることについては議論の余地はありません。
 しかし、慰謝料請求は、「違法な行為」の存在に加えて、違法な行為を行った者に、「故意または過失」が認められなければ成立しません。

 この点、先に検討した、独身であると偽っていた交際相手には、明らかに「故意」が認められるのに対して、交際相手が既婚者であることを知らなかったあなたには、「故意」はないことになります。
 しかし、実際の訴訟では、「交際相手が既婚者であることを知らなかったので、あなたに故意はない」と、裁判所に認定してもらうことは、意外と容易ではありません。
 例えば、「結婚指輪をつけていた」「住所を教えてくれない。どこに住んでいるのかも分からない」「こちらから電話することを禁じられていた」など、交際相手に、一般的、客観的に既婚者であることを疑うべき不自然な事情がある場合は、いくらあなたが、「彼が独身であると信じていた」と主張しても、「交際相手が既婚者であることが分かっていたに違いない」と判断され、あなたには「故意がある」と認定されてしまう可能性が高いでしょう。
 仮に「故意」の認定がされなかったとしても、「交際相手が既婚者であることを想定することが十分可能であった」という理由で、「過失がある」と認定されてしまえば、結局、慰謝料を支払わなければなりません。

 特に、職場の同僚間の交際のように相手の身元が明らかなケースや、既婚者側が家族と同居生活を送る一方で、浮気相手と長期間にわたり深い交際を継続していたようなケースでは、特殊な事情でもない限り、「あなたも交際相手が既婚者であると認識していた(=故意があった)」と、認定される傾向があります。
 このようなケースでは、「独身だと信じていた」との主張は、不倫をしている者同士で口裏を合わせていると考える方が、むしろ自然であると評価されるからです。

 ですから、冒頭の事例のような場合であっても、実際的な訴訟の場面を想定したときには、あなた自らが、彼が既婚者であることを知らなかったことについて、「故意や過失がなかったこと」を裏づけるような証拠を出していく必要が生じてくることは、十分に起こり得ることだと考えておいた方がよいでしょう。
 その際、交際相手との間のメールやLINEのやりとりで、独身であることをにおわせるような文面のメッセージは、証明が難しい口頭でのやりとりと異なり、貴重な証拠となりますから、消えてしまわないように、しっかりと保存しておきましょう。

 人生の大事な時期を無駄にしてしまうだけでなく、数十万円、場合によっては百万円を超える慰謝料を支払わなければならないなどという理不尽な事態に陥らないよう、しっかりと自己防衛をしてください。

                                    弁護士 上 将倫

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