離婚事件簿その11~未成年子との面会交流調停(後編)
離婚あるいは別居により、離れて暮らすことになった親子間の面会交流という問題がこじれた場合の困難さは、松尾善紀弁護士が、「離婚事件簿~未成年子との面会交流調停」で記したとおりです。
ただ、親子間の面会交流は、離れて暮らしている親自身はもちろんのことながら、子供にとっても極めて切実で重要な課題であり、権利であることを、補足して強調しておきたいと思います。
得てして監護親(手元で子供を養育監護をしている方の親)は、子供も、非監護親(子供と離れて暮らしている親)に対して、自分と同じような否定的な感情を持っていると考えているものです。
しかし、当然のことながら、子供は子供で、独立した別の人格の人間なのであって、監護親とはまた別の思いを持って、非監護親を見ていることの方が多いのです。
夫婦は別れてしまえば他人ですが、子供にとっては、両親が離婚しようとも、非監護親はかけがえのない親のままなのであって、同居時の良い思い出もあれば、離れて暮らす親にも愛されたいという思慕もあって当然です。
子供にとって、親とは、自分の中で簡単に全否定できるものではありません。
もし子供が、監護親の強い影響のもとで、ことさらに非監護親に対する憎しみや無関心を募らせてしまうようなことがあれば、情緒面の健全な発達に深刻な影を落とす結果となってしまいます。
監護親は、別れた伴侶について「自分の人生にあんな人は要らない」と思っても、子供の気持ちについては、自身の気持ちとは切り離して、冷静に考えるべきでしょう。
別れた親と会えないままの子供は、ほぼ例外なく、他の家庭を見たりしたときに、「僕(私)のお父さん(お母さん)は、今どうしてるんだろう。僕(私)のことを今どう思っているんだろう。ちょっと寂しいな…」などと感じる場面が出てくるのです。
私たちの実務上の経験では、深刻な不仲で別れた夫婦間の子でも、非監護親と良好な面会交流ができている子供は、精神的に安定して育っているケ-スが多いように思います。
「僕(私)にもちゃんとお父さん(お母さん)がいる。離れて暮らしてても、お父さん(お母さん)は、僕(私)を愛して、気に掛けてくれていて、毎月会いに来てくれるし、僕(私)が会い行くこともできるんだ。」などと、子供が常日頃、感じられることは、子供の健やかな成長を支える大きな要素となります。
このような面会交流の意義を、双方の親に理解してもらうことが、この種の問題を巡る紛争を解決する鍵となるのです。
弁護士 中村正彦
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