男女間トラブル事件簿その12~別れられない。別れてくれない。
実務上、非常に多いのは、「交際していて結婚も考えていた男性に求められて、多額の金銭を渡したり貸したりしたが、交際を解消した後も、そのお金を返してもらえない」というご相談です。
中には、数百万円を超えるような金額を渡してしまっているケースもあります。
このような事案では、貸金の返還請求権があるといえるためには、まず、①金銭の交付と、②返金の約束の「両方」を裏付ける客観的資料が必要となります。
金銭の交付があっても、単なる贈与である可能性もありますので、①のみでは不十分なわけです。
②の返金約束については、口約束のみでは証拠として弱いため、書面やメール等の客観的資料が必要です。
しかし、これらの客観的資料があり、法的に返還請求権があるといえても、相手方に支払能力がなければ、貸したお金を回収することはできません。
ほとんどの具体的ケースでは、交際相手の女性から、多額の金銭を借りたり出してもらうような男性は、資産や収入がないだけではなく、完全な詐欺犯であったり、金銭的に非常にだらしなかったり、多重債務状態であったりしますので、女性が貸したお金の回収に成功することは極めて稀であるといわざるをえません。
私たち弁護士では、お力になれず、とても心苦しいケースが多いのです。
女性側の苦しみは、貸した多額のお金を回収できないという経済的ダメージを負うだけではありません。
長い交際期間の分、貴重な時間が失われたという喪失感や、相手がこちらの痛みを理解しないという心理的な苦しみが被害として続くのです。
現在、少しでも思いあたることがあるようでしたら、いち早くその男性との交際を解消し、最悪の状況から脱出してください。
弁護士 中村正彦