離婚事件簿その10~未成年子との面会交流調停(中編)
男女がお互いの信頼と愛情のもと、終生の共同生活を送るべく契りを交わすのが結婚である。
しかし、信頼しあって、愛し合って結婚をした夫婦の関係も破綻をきたし、離婚話となるケースは少なくない。また、信頼も愛情もないのだが、何らかの理由で、どうにかこうにか夫婦という形だけが維持されているケースも多々ある。
離婚の原因となる事情は様々であるし、離婚の騒動が起きる際の夫婦の置かれた状況も様々である。
弁護士の立場で離婚事件の相談を受ける度に、私も色々と考えさせられ、勉強させられることが多い。
つくづく男女の関係は難しく、かつ不思議で、味わい深さすらある。
さて、あなたたち夫婦の間で離婚話になったものの、二人の話し合いでは全然解決しない、とか、一方的に話が進んでいって自分の意見をまったく聞き入れてもらえない、身近に相談する相手がいない、もうどうしたらいいかわからない、などなど、やむなく弁護士のところに相談に行くこともあると思う。
そこで今回は、このような離婚事件の相談現場では、実際にはどのようなことが行われているのかということをお話しようと思う。
弁護士が離婚の相談を受ける際、相談者から聴き取ることは多岐にわたる。
もし、あなたが相談に来られたら、私は、まずは以下のような定型的な事情をお伺いさせていただく。
・いつ結婚したか,交際をしてから結婚をするまでの期間はどれくらいか
・恋愛結婚か見合い結婚かなど結婚をするに至った事情
・いわゆるデキちゃった婚かそうでないか
・離婚歴があるかないか
・再婚の場合、連れ子はいるか,連れ子の養育状況はどうなっているか
・夫婦の間に子供はいるか,子供の年齢,性別,就学状況
・夫婦の子供との人間関係は良好か
・家族の健康状態
・夫と妻の学歴,趣味,嗜好
・夫婦の性生活の状況
・家族旅行に最後に行ったのはいつか
・夫と妻の仕事や収入状況はどうか
・夫(または妻)の帰宅時間や出勤状況などの仕事に関する周辺事情
・専業主婦の妻は、以前は何の仕事をしていたのか
・夫と妻の両親は健在か,健康状態はどうか,実家はどこにあるのか
・親と同居しているのか
・夫婦の自宅は持家か賃貸か
・車を持っているか,運転をするのは誰か
・夫婦の財産,貯蓄状況,負債の状況と支払状況
これらの事情を聴くとともに、場合に応じて、聴いた事情を裏付ける証拠的なものがあるのかどうかなども確認する。
さらに、もう少し深い部分に入っていく。
・夫婦の間にどうして離婚話が出てきたのか、そのきっかけや原因、離婚話が降って湧いたようなものなのか、そうではなくて、過去何度も離婚話やそれに近い夫婦不和の状況が起きていたのかどうか。
・相談者は本当に離婚という最後の選択を望んでいるのかどうか。
・相談者は離婚をする場合のリスクやデメリットを本当に理解しているのか。
理解をしていない場合には、当該相談者にとって考え得る、離婚に伴うリスクやデメリットを説明するとともに、そうしたリスクとデメリットに堪えうるだけの力(精神面と経済面)や状況を相談者がきちんと確保できるか。
・夫婦が不仲になっている場合には、既に夫婦のいずれかあるいは双方に配偶者以外の交際相手(いわゆる浮気相手・不倫相手)がいる可能性が十分にあるので、その有無や、交際相手がどこの誰で、どのような人間か、交際期間、交際のきっかけなど…
しかし、相談者はなかなか一筋縄では全てを正直に話してくれない。
相談初期の相談者は、とてもナーバスな状態で非常に警戒心が強くなっているので、この弁護士を一体どれだけ信用できるのか、弁護士の話や態度を見ながら、弁護士の品定めをしているからだ。
ここでは、どれだけ相談者が心を開き、口を開いて全てを明らかにしてくれるか、弁護士の法的知識や素養はもとより、人間的な暖かさ、懐の深さが試されることになる。(後編へつづく)
弁護士 松尾善紀