金融教育×住教育から空き家対策を

菊池浩史

菊池浩史

テーマ:空き家

年内施行予定の改正空家対策特措法には、空家等の適切な管理や行政の施策に協力する空家所有者の努力義務が定められている。空家は本来私有財産であり、その取り扱いは所有者責任に負うところが少なくない。従って、空家対策では、空家所有者の意識と行動をどのように変えていくかという課題は避けられない。

私は現在、住まいの終活のセミナーやコンサルをしているが、気になるのはそのような場に参加しない多くの空家所有者やその予備軍への対応だ。それには消費者の住まいに対するリテラシーの向上が必要で、そこに大きな影響を与えるのが「住教育」と考えている。ここでは一人ひとりが取得段階から地域の住環境や住宅の将来に関心を持ち、住宅の管理から空家の活用や家じまいには費用と責任が伴うことを学び考えることである。

家余りは今後も続くため、空家対策は中長期的な取組みが欠かせない。教育は家庭、地域、学校が担っているが、住教育の普及には学校の影響力は無視できない。なぜなら学校教育は他に比べ、将来の住宅所有者を中心に裾野の拡大と持続性が期待できる。住民を対象にした住教育の事例もあるが、問題意識が高い参加者に限られる傾向がある。目前に迫った事情がなければ、住教育への関心を高めることは容易ではない。

しかしながら、学校教育へ住教育を本格導入するのはハードルが高い。そこで、現在、高等学校で行われている金融教育と住教育の連携を提案したい。

2022年4月から資産形成の必要性と知識を学び実践することを目的に、金融教育が高等学校で義務化された。その柱は、「住宅・教育・老後」という人生の三大資金の計画的な準備であるが、住宅の中心テーマは「取得」で、住宅の一生と資金に関する内容は十分とは言えない。

金融教育には「備える」という項目がある。社会保険や民間保険で構成されているが、そこに「住宅の将来に備える」を加えてはどうか。住宅を取得した後にどのような費用が必要になるか。また、新築住宅を取得する以外にある多様な住まい方とお金の関係、更にはその文脈で空き家と家計への影響を考えることの教育的意義は小さくない。

相応の時間を費やさないと住宅所有者の意識と行動は変わらない。金融教育と住教育の連携はスタートラインに立つに過ぎないが、空家問題への意識を高まるトリガーになるのではないか。そのためにも個人の資産形成に留まらず、社会問題の解決にも繋がるというポジティブな雰囲気作りが欠かせない。

以上

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専門家

菊池浩史

住まいの消費者教育研究所

住まいにまつわるビジネス経験や、不動産鑑定士としての専門的知見を活かし、顧客ファーストで「住まい教育」を普及・実践。住まい選びやメンテナンス、そして家仕舞いまで、ワンストップでトータルサポートします。

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