空き家の実態~空き家と住まいの終活を考えるシリーズ④~
(はじめに)
空き家を利活用する取組みが各地で行われています。リフォームした中古住宅に新たな住まい手が住み継ぐとか、住宅から飲食店などに用途変更し、輝きを取り戻している事例もあります。その多くは点としての利活用であって、点から面に広がっている事例は数えるくらいしかありません。
そこで今回は、大阪市城東区蒲生4丁目周辺で展開している「がもよんモデル」から、空き家の利活用が持続的に成立する条件を考えてみようと思います。具体例から学び、それを如何に抽象化していけるかという問いでもあります。
(がもよんモデル)
がもよんモデルは、蒲生四丁目に拠点を置くRPLAYの和田代表が仕掛ける空き家再生プロジェクトです。明治から戦前に建てられた木賃長屋や戸建貸家を中心に、店舗や宿泊施設が次々と転用されており、2023年3月時点で空き家を再生した箇所は35か所に及びます。その結果、店舗への来訪客や人口も増加し、街には賑わいで出てきています。
同モデルの特徴の一つが、空き家を住宅以外に用途変更している点です。空き家を住宅として再利用することは、転居してきた者の従前の住宅が新たな空き家になってしまえば、根本的な空き家解消にはならないという同氏の考えに拠るものです。
住宅として貸すよりも、店舗の方が通常は高い賃料が取れるため、空き家を手離したくない所有者にもメリットがあります。そのうえ再生された35か所の店舗は全て異なる業態で、例えば、例えばイタリアンは1店舗しかありません。
(成功要因を考える)
今年の4月にRPLAYの和田代表からお話を聞く機会がありました。そこから成功要因を考えてみました。連鎖的に空き家再生を展開するには、そのモデルに持続可能性が備わっていなければなりません。そのためにリーダーの経営力、言い換えればタウンマネージメントの能力が大切だという印象を受強くけました。
その一つが、テナントに対するマネージメント力です。経営センスのある、数字に強い経営者を契約前にしっかり選別している点です。また、テナントとの借家契約が終了した段階で、そこで働いていた従業員と新たに借家契約を結んでリセットする方法には驚きました。ある意味で下剋上とも言えます。同一業態を導入しないという共存体制と同時に、競争原理を上手に融合しているのが、これまで途中撤退した店舗がない理由かもしれません。
更に、マネタイズ(収益化)の面からは、大家は要した改修費を家賃収入から返済し、RPLAYは転貸借の利ザヤとリフォーム工事を受注し、テナントは売上と起業の機会を獲得するという三方一両得になっている点です。テナントの契約は10年間の借家契約とし、3年未満の解約は違約金が発生します。資金が上手く回る仕組みができています。
(まとめ)
点としての空き家再生と大きく異なるのは、街を経営する力です。それには、どのような街にしたいかという経営理念、マネタイズできるビジネスモデル、人を見る・育てることができる能力などが必要だと痛感しました。そして、住宅の空き家を非住宅用途に転用することでお金を回す、ここが最大のポイントだろうと思います。
以上