金融教育×住教育から空き家対策を
有料老人ホームの日常生活を想像したことがありますか。
今回のコラムでは、自立の方が多く入居する有料老人ホーム暮らしぶりをご紹介します。
以前のコラムでも書いたように、有料老人ホームは経験財と呼ばれ、そこでの暮らしの様子は実際に入居しないと分からないことが多いのが実状です。一般の住宅や耐久消費財の自動車などは程度の差はあれ、多くの方に使用経験があります。ところが有料老人ホームの利用経験、そこで住んだことのある方は極めて限定されます。当たり前のことですが、そもそも高齢者以外の世代は入居資格がなく経験したくてもできません。
有料老人ホームに勤務経験のある筆者がその様子をご紹介します。筆者の経験に基づくものなので、全ての施設に当てはまるわけではありませんが、一例として捉えてください。
最初にお伝えしたいことは、自立の高齢者にとってみれば、有料老人ホームでも一般のマンション暮らしと見た目はさほど変わらない、ということです。居室は2LDKや3LDKといった間取りで、水回りも揃っており自立した生活ができる住空間と設備が備わっています。その部屋で終日過ごされている方も少なくありません。
一般のマンションと最も異なる点の一つが食事サービスの提供です。朝・昼・夕の三食が提供され、季節を感じることができる季節食やイベントに合わせた行事食などが用意され食卓に彩りが添えられます。高齢者にとって食事を大きな楽しみの一つであることに加え、食事を介して入居者同士でコミュニケーションも図られます。ダイニングで喫食をする時間は、入居者にとって貴重な時間と空間になっています。こだわりが強い分、食事への要求も少なくありません。
今年はコロナ禍で多くの施設でイベントを自粛しているようですが、普段は有料老人ホームでは様々なイベントが催されます。外部との交流が決して多くはない入居者にとって、イベントは大きな楽しみの一つです。正月、豆まき、夏祭り、クリスマス会などの施設内のイベントに加え、春や秋には花見や紅葉狩りなど遠足に出かけることもあります。もちろん体調不良時には、ケアを受けたり通院同行などのサービスがあります。
日々の暮らしの中で、高齢者ならではの様々な困りごとが起こります。「TVがつかない。」「電球が切れた。」「スマホの使い方が分からない。」といったことも、高齢の入居者からすれば大いなる困りごとです。また入居者同士のトラブルもなくはありません。ある意味閉ざされた空間であり、話題や関心が施設内のことに集中しがちになります。
有料老人ホームは、高齢の入居者一人ひとりの人間性や人生観が現れる場所だと言えます。有料老人ホームへの入居を検討するときは、できれば1週間程度の体験入居をお勧めします。少しでもリアルな事実を知ったうえで判断されるべきだと思います。筆者は以前から有料老人ホームへの入居前に体験入居を薦めていますが、数日から1週間程度、実際の生活をしてみれば、そこでの暮らしを模擬体験でき、ご自身が住替えた場合の生活がある程度は想像できます。但し、個々の入居者との相性は一緒に生活しなければ、これだけは分かりません。正しく経験財です。