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菊池浩史

「住まい×消費者×教育」のハイブリッドを目指す専門家

菊池浩史(きくちひろし)

住まいの消費者教育研究所

コラム

有料老人ホームなどの高齢者施設の知覚リスクについて

2020年9月19日 公開 / 2021年2月18日更新

コラムカテゴリ:住宅・建物

消費者行動論には、知覚リスクという概念があります。知覚リスクとは、財やサービスの購入時に消費者が知覚する懸念や不安です。

具体的には、「品質や機能が期待通りではないかもしれない、という機能面の懸念や不安」、「危ないかもしれない、という安全面での懸念や不安」、「他人からどう思われるか、という社会面での懸念や不安」、「もっと安くなるのではないか、という経済面での懸念や不安」「他の商品をもっとよく調べるべきではないか、という機会損失面での懸念や不安」、「その他の懸念や不安」などです。そして次のような場合には知覚リスクが高まりやすくなります。
①製品に対する情報が殆どない
②新製品である場合
③製品価格が高い
④技術的に複雑な製品
⑤ブランド間の品質が非常に多様化している
⑥製品評価の経験がなく製品に確信がない
⑦他人の意見が重要である
⑧製品の仕様を根拠に消費者が評価する可能性が高い

有料老人ホームなどの高齢者住宅の特性を①から⑧に照らし合わせると、次のような類似点のあることがわかります。
①高齢者住宅は、物財としての情報とサービス財としての情報があり、特に住宅内のオペレーションに纏わる情報は十分に公開されていない。
②高齢者住宅の選択は、新築物件ばかりとは限らない。
③高齢者住宅の価格(賃料)は、一般的な住宅の購入(賃借)と同等かそれ以上の金額であり、いわゆる「高い買物」の範疇に入る。
④ザービス財として見た場合、サービスメニューと料金体系が複雑、また介護保険や医療保険の影響という変動要素を抱えている。
⑤同じ類型の高齢者住宅であっても、物財としての仕様の水準、サービス水準が多様化している。
⑥多くの高齢者にとって、高齢者住宅への住替えは未経験である。
⑦高齢者住宅の選択に当たっては、知人や家族の意見も貴重な情報源となっている。
⑧高齢者住宅の場合、物財及びサービス財としての仕様が複雑だが重要な要素なので、それを根拠に評価したいという思いはある。
このように有料老人ホームなどの高齢者住宅は、これらの要件に概ね該当するため、知覚リスクは高い財だと言えます。

次回は、「⑥多くの高齢者にとって、高齢者住宅への住替えは未経験である。」とあるように、経験材という視点で高齢者住宅を見ることとします。

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