秋の夜長、眠りを見える化すると組織が変わる

樋口麻理

樋口麻理

テーマ:企業研修


朝夕が凌ぎやすくなり、日照時間も短くなり、秋を感じるこの頃。
過ごしやすい季節になった一方で、企業や経営者、そして働く人にとっては、
気温の変化や昼夜の寒暖差が大きくなり、体内リズムが乱れやすい季節でもあります。
特に「睡眠」の質や時間が、気付かぬうちに崩れてしまうことが少なくありません。

「眠っているのに、疲れが取れない」「朝、頭が働くまでに時間がかかる」
そんな声が職場でも増えていませんか?
この“なんとなくの不調”を放置すると、集中力や判断力の低下、ケアレスミスなど
そして経営判断の鈍化にもつながっていきます。

なぜ、「秋の夜長」睡眠の質が低下しリスクが増えるのか考えてみましょう。
■ 秋に眠りが乱れる3つの理由
①日照時間の減少による「体内時計のズレ」
  日照時間の短縮により体内時計のリズムが乱れ、夜の眠気が来る時間が遅れたり、朝の目覚めが鈍くなったり。
② 寒暖差による自律神経の乱れ
  この“1日の寒暖差”が自律神経を疲弊させ、眠りを浅くするなど、途中で目が覚める原因になります。
③ 季節の変わり目特有の「心の揺らぎ」
  心理的・身体的ストレスが重なりがちで、疲労回復が十分に行われず、睡眠負債(日々の少しの睡眠不足の累積)につながる可能性があります。

■ 経営者・人事が見逃してはいけない「眠りの損失」
これまで、睡眠を「時間の長さ」で評価する人が多いですが、
実は「睡眠の質」と「睡眠リズム」こそ、本当の評価軸であることを知っていただきたいと思います。
米スタンフォード大学の調査によると、睡眠不足の社員が増えると、生産性は最大で20%以上低下するという報告があります。しかも、この“損失”は欠勤のように目に見えるものではありません。
出社していても通常の能力を発揮できない状態――いわゆる**「プレゼンティーイズム(生産性低下状態)」**として、静かに企業の利益を削っていきます。
プレゼンティーイズムとは、体調不良や病気で休養を取ったほうが良いにもかかわらず、仕事に出てしまう状態を指します。睡眠不足が原因でこうした症状が気付かないうちに現れていれば、
企業には確実に損失が生じていると考えられます。
参考資料としてプレゼンティーイズム症状の要因・・・


経営者・人事が捉えるべき“睡眠の見える化”
1.睡眠教育の目的
まず、私たちはこれまで「なぜ眠るのか」「何のために眠っているのか」といった教育を受けてきません。
そのため、メディアで取り上げられる睡眠情報が先行し、自分ごととして捉えられていないことが問題です。
まずは正しい睡眠教育を受け、睡眠のメカニズムや意義を理解することが重要。
その上で生活習慣や職場環境を整えることで、社員のパフォーマンス向上とプライベートの充実、ひいては組織全体の活力につながると考えます。

2.睡眠「投資」とし可視化
「自分はちゃんと寝てる」と思っていても、実際は眠りの深さ・覚醒回数・昼間の眠気などを通じてパフォーマンスが落ちている可能性があります。「睡眠負債」の概念を活用し、簡易アンケートや睡眠ログを取って“見える化”することがポイントです。
秋のタイミングで「睡眠・休息に関する社員アンケート」を定期実施や、その傾向を分析して“眠れていない社員がどれだけいるか”“その社員群のパフォーマンスや欠勤・事故発生率との関連”をデータで整理すると、経営層を巻き込む説得材料になります。

3.社内環境について
社員の体内リズムを整える習慣は、「毎朝5分のストレッチ+カーテンを開ける習慣」を全社員で取り組んでみてはいかがでしょうか。小さな習慣の積み重ねが、集中力や生産性の向上につながります。
太陽光を浴びるやスマホやPCから離れるといった取り組みは、睡眠の質向上に繋がります。
さらに、睡眠時間が十分でない社員には、昼寝の導入も有効です。特別な施設がなくても、デスクと椅子があれば短時間の休息は可能で、午後のパフォーマンス回復に大きく貢献します。
加えて、夕方以降の照明を調整するなどの環境面の工夫もおすすめです。オフィスの光を柔らかくすることで、帰宅後のスムーズな入眠を促し、社員の健康と生活の質の向上につながります。


眠りから始まる成長ストーリー”を描こう
睡眠対策は個人の健康を守るだけではなく、組織のパフォーマンス・生産性・安全性に繋がります。
“眠りから始まる成長ストーリー”を広めることで、社内外で「この会社は人を大切にしている」「働き方が先進的だ」といったブランド価値も醸成できます。

季節が変わるとき、体と脳には“リセット”が求められる今。
10月~11月は、そのリセットを行いやすい好機です。逆に何もしなければ、気候変化に振り回されて、知らぬうちに眠りとパフォーマンスを削ってしまう。
経営者・人事、それから一般ビジネスパーソンそれぞれが、睡眠を「時間を削って頑張る」ではなく、
質を高めて成果を出す」ものとして捉え直すタイミングです。
この秋、眠りを磨くことが、組織の成長を促す新たな武器になると信じています。


皆さんからのお問合せやご相談お待ちしております。

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Mybestpro Members

樋口麻理
専門家

樋口麻理(睡眠健康指導士)

株式会社印笑

医療・教育の分野を知る睡眠健康指導士が、生活や社会活動の基盤となる睡眠管理をテーマに自己実現や子育て、健康維持をサポート。フェイスメソッドで、いびき対策や顔のこわばり改善などお伝えします。

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