補助金を利用した長屋リフォーム 住宅確保要配慮者あんしん居住推進事業
長屋を切り離すと強度が落ちる理由
例えば、長屋の一部を切り離すことになったとします。解体し建て直す方は問題ありませんが、残った方の一番の問題は強度です。
切り離し残された方の強度がなぜ、問題になるかと言うと理由は大きく2つあります。
まずひとつ目。それは、もともと内壁だった壁が外壁になるからです。内壁と外壁では構造が違うため、そのまま外壁として使うには強度的にさまざまな問題が生じます。
そしてもうひとつの問題は、長屋は切り離すことを前提として作られていません。一棟を一つの家として作られていて、構造的にも全体で強度を得られるようになっていますから、切り離せば当然、強度は落ちてしまいます。
長屋の構造によっては、これら以外の理由がある場合もありますが、一般的には長屋を切り離すと強度が落ちるのは、これらの理由が多いとされています。
そして強度が落ちる以上は、それに適した補強が必要になります。
長屋の耐震補強工事の注意点
まず前提として、長屋を切り離す場合、隣人の承諾と全所有者の3/4以上の承諾が必要です。これは区分所有法で定められていて、具体的な内容は以下の通りです。
第十七条 共用部分の変更
(その形状又は効用の著しい変更を伴わないものを除く)は、区分所有者及び議決権の各四分の三以上の多数による集会の決議で決する。ただし、この区分所有者の定数は、規約でその過半数まで減ずることができる。
2 前項の場合において、共用部分の変更が専有部分の使用に特別の影響を及ぼすべきときは、その専有部分の所有者の承諾を得なければならない。
隣人の承諾を得る際に、建築士による診断や外壁補修を求められれば、法律上、これに応じなければなりません。もちろん上述したように、長屋を切り離せば、その強度は落ちてしまうことがほとんどです。もし万が一のことが起こった場合、隣人の安全が第一ではありますが、耐震補強が十分でない家が隣にあることは、切り離した側にとっても大きなリスクを抱えていることになります。
そういった意味においても長屋を切り離した際には、隣人からの要求の如何に関わらず、状況に応じた耐震補強は必須であると言えます。
耐震以外の補強の必要性
冒頭でも述べたように、長屋を切り離すことにより、内壁が外壁になるということは、地震だけではなく、火事の際には延焼の恐れを防ぐためにも、防火性能や雨水に対する防水性能も持たせる必要があります。
費用負担に関してですが、隣人との協議次第ではあるものの、基本的には全ての補強の負担をする必要はなく、「切り離す前と同程度の状態について費用補償をする。それ以上の費用に関しては隣人が負担する」というのが一般的です。