連棟長屋のリノベーションのメリット・デメリット
老朽化した長屋を持つオーナーの最大の課題
地震大国日本において、どこに住んでいようと地震の心配がない場所はありません。そこで重要になってくるのが住宅の耐震補強です。特に築年数が古く老朽化した長屋を賃貸として使用しているオーナーにとって、この耐震補強を怠ると、場合によっては損害賠償の対象になる可能性もあります。
実際、平成7年に起こった阪神・淡路大震災で賃貸マンションが倒壊し入居者が死亡した際には、建物の壁厚、壁量、そして鉄筋の量が不十分であったなど、建物の安全性が低かったという裁判所の判断の元、遺族に対して損害賠償の支払いをオーナーに命じる判決も出ています。
ただし地震により建物が倒壊し入居者に被害が出た場合、必ずオーナーの責任になるのかというとそういうわけではありません。上記の判決も耐震補強を行い耐震基準を満たしていれば、場合によってはオーナーに責任を問われなかった可能性もあります。
つまり、老朽化した長屋を賃貸として使用しているオーナーで、まだ耐震補強をしていないとしたら、それはとても大きなリスクを抱えているということになります。
耐震補強に関する法律と罰則-1- 土地の工作物の占有者・所有の責任
では、具体的に耐震補強に関する法律とその罰則について見ていきます。
建物の所有者であるオーナーが知っておかなくてはいけない基本的な法律として挙げられるのが、民法第717条「土地の工作物の占有者・所有者の責任」です。この法律の主な内容は以下の通りです。
土地の工作物の設置又は保存に瑕疵があることによって他人に損害を生じたときは、その工作物の占有者は、被害者に対してその損害を賠償する責任を負う。ただし、占有者が損害の発生を防止するのに必要な注意をしたときは、所有者がその損害を賠償しなければならない。
この法律で注意しなくてはならないのは、オーナーは故意や過失の有無にかかわらず、あらゆる損害賠償責任が及ぶという点です。また建物に付属する塀や石段なども対象になりますので、入居者のみならず、それらの倒壊によって被害を受けた人に対しても損害賠償責任が及ぶこともあります。
耐震補強に関する法律と罰則-2- 賃貸人の修繕義務・賃借人の修繕権限
耐震補強に関する法律で、もうひとつ重要な法律が民法第606条1項「賃貸人の修繕義務・賃借人の修繕権限」です。この法律の主な内容は以下の通りです。
賃貸人は、賃貸物の使用及び収益に必要な修繕をする義務を負う。ただし、賃借人の責めに帰すべき事由によってその修繕が必要になったときは、この限りでない。
基本的にオーナーは、入居者が快適で安全な生活を送ることができる建物を提供するために、建物に対して必要な修繕を施すことが義務づけられています。
耐震補強は人の命にかかわる重要な問題です。老朽化した長屋を持つオーナーは、損害賠償という罰則があるからということではなく、そこに住む人の命の責任を負っていると考え長屋の住環境保全を怠らないようにしてください。