自分の名前を覚えてくれる喜びは、仕事もゴルフも同じ

あらゆる自己啓発本の原点とも言うべき、デール・カーネギー（Dale B Carnegie 1888～1955）の「人を動かす」（原題：How to Win Friends and Influence People）という本。　これは、1937年に初版が発行されると瞬く間にベストセラーとなりました。その凄さは、現在までに累計で1,500万部以上を売り上げていることから分かると思います。

人の名前を覚えることの効果

そのカーネギーさんが、この本で「人に好かれる6つの原則」のうちのひとつに掲げているのが、「人の名前を覚える」ということです。

人は、他人の名前など一向に気にも留めませんが、自分自身の名前になると大いに関心を持ちます。
だから、自分の名前を覚えていて、それを呼んでくれるということは、まことに気分の良いもので、つまらないお世辞よりもよほど効果があるとカーネギーさんは言っています。

旧デキサス・コマース・バンクシェアズの故ベントン・ラブ会長（※）の言葉によれば、「会社は大きくなればなるほどつめたくなる。そんなつめたい会社をあたたかくするには、人の名前を覚えることだ。重役たちの中には名前を覚えられないという人もいるが、つまりは重要な仕事が覚えられない、すなわち仕事の基礎ができていないことを告白しているようなものだ。」と言われたそうです。

たいていの人は、他人の名前をあまり覚えないものです。忙しくて覚える暇がない、または出会いが多すぎて、いちいち覚えていられないというのが、その理由です。

1930年代の世界恐慌から第二次大戦時における有名なアメリカ大統領フランクリン・ルーズベルト。その当時の民主党全国委員長にジェームズ・ファーレーという人がいました。この人は他人の名前を覚えることに長けていて、この不思議な能力を発揮し、5万人の有権者の名前を覚えることで有権者の絶大な支持を得、ルーズベルト大統領を大いに助けたと言われています。

またルーズベルト大統領自身も、人に好かれるいちばん簡単で、しかも一番大切な方法は、相手の名前を覚え、相手に重要感を持たせることだということをよく知っていました。
これにより、重度の身体障害を持ちながらも、アメリカ政治史上で唯一4選され、12年という長期政権を可能としたのです。

名前の覚え方と活用法

人の名前を覚えることは、商売やゴルフなどの社交にも、政治の場合と同じように大切です。
初対面の人を紹介され、2、3分間会話し、さようならをするときになって、すでに相手の名を思い出せない場合もあります。

「・・・田中さんだっけ？田上さんだっけ・・・」

そんなときでも覚えておくためには、相手と話しているうちに、何回となく相手の名を繰り返し、相手の顔や表情、姿などと一緒に、頭の中にいれてしまうように努めることです。

「そうですよね。田村さん。」「それについて田村さんはどう思います？」ってね。

もし、相手の名刺があるときには、あとですぐ相手の特徴などを書き入れておくようにします。

その点、ゴルフはゆとりがあります。同伴プレーヤーの名前は事前に調べることもできるし、スコアカードに名前を書き入れるので、すぐに覚えることができます。
プレー中は、相手に親しみを感じてもらえるように、声を掛ける時には「松尾さん。次ですよ。」などと名前を呼ぶようにしましょう。

ただし、名前は間違えないようにしましょう。意外とよくあります。

スタートホールから
「それじゃあ松井さん！ティーショット行きましょう！」
「松井さーん！ボールここにありますよ！」

というように言われた松井さんは、

「本当は“松田”なのに・・・。今さら自分から言いにくい・・・」

と、一日“松井さん”を演じさしてしまうなんてことがあってはいけません。

また、ゴルフを続けていると、前にコンペで初めて一緒にプレーした人と、後日、一緒にプレーをする機会がないとも限りません。
そのときに、相手だけが覚えていて、

「前回ご一緒しましたね。」とあいさつされ、

「しまった！覚えていない・・・誰だっけ・・・」

ということがないように気を付けたいところです。
スコアカードを大切に残して記憶に留めておくなり、事前にコンペの組み合わせ表をしっかり見ておいて、知っている人、知らない人、同伴したことある人、ない人の確認をしておくことも忘れないための手段の一つです。

自分という存在を人が覚えてくれているということは、とても嬉しいことです。
名前は、当人にとって、もっとも大切な響きを持つ言葉であり、その名前を数多く覚えているということは、人とのコミュニケーション力において、極めて重要な能力が備わっていると言えるかもしれません。

※デキサス・コマース・バンクシェアズ（Texas Commerce Bancshares）は、1988年にJPモルガン・チェース（JPMorgan Chase & Co.）に買収された。ベントン・ラブ会長は、その当時のCEO（最高経営責任者）ベン・ラブ（Benton F. Love 1924～2006）の父にあたる。
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