ゴルフも仕事も、大切に思う気持ちは「身だしなみ」で伝わる

谷光高

谷光高

テーマ:社会人に役立てて欲しい「ゴルフの効用」

人は「外見」で他人を判断する

ビジネスマナーでは「第一印象」が重要とよく言われます。
それは心理学でいう「初頭効果」が大きな要因となっていて、要するに初対面の印象が後々まで相手の脳に残るため、ビジネスにおいては「第一印象」が重要だということです。

「良い初頭効果」はその後のコミュニケーションを上手く働かせ、「悪い初頭効果」を拭い去るには多大なる時間とエネルギーが必要になります。初対面の人やよく知らない人については、「身だしなみ」や態度などの見た目から様々なことを想像して判断します。

まず人は「外見」で他人を判断するのです。

日本の夏は、クールビズの普及により、10年前と比べて大きくビジネスシーンでの服装が変化してきています。
服装の幅が広がった分だけ“自由”になったとは思いません。
以前より相手のことを考え、「良い初頭効果」を得られるように努める必要がでてきたのです。

「とりあえず、みんなと同じようなスーツだったら間違いない」といった時代から、自分の個性を出しつつ、相手に好印象を与えるための努力を必要とする時代になったと言えるのではないでしょうか。

身だしなみとは、相手に対する「身のたしなみ」

「おしゃれ」と「身だしなみ」は違います。
「おしゃれ」とは、主に自分の視点で、自分をきれいに見せること。
それに対して、「身だしなみ」は、相手に不快感を与えないよう、自分の格好などを整えることを指します。
身だしなみ・・・?
「身だしなみ」の語源は、「身を嗜む(たしなむ)」ことに由来します。
ここでの「嗜む(たしなむ)」の意味は、「つつしむ。気をつける。見苦しくないように整える。」となります。

個性を表現したい気持ちも分かりますが、ビジネスシーンでは、相手に不快感を与えない「身だしなみ」が基本です。
「身だしなみ」には、自分自身の内面が表れます。流行にとらわれすぎず、男女を問わず、どんな年代の方にも好印象を抱いてもらえるような格好を整えること。
それがビジネスシーンでの「おしゃれ」といえます。

だからこそ、ビジネスパーソンにとっての「身だしなみ」は、もはやビジネススキルです。
きちんとした「身だしなみ」は、仕事に取り組む姿勢、清潔さや誠実さ、ひいては品格にもつながります。一緒に仕事をする相手に好印象を与える必須のビジネススキルなのです。

身だしなみが大切な理由

「身だしなみ」がいつもだらしなく、相手に不快感を与えているようでは、社会人として仕事に携わる自覚が欠如していると判断されても仕方ありません。
自分自身はやる気で溢れているとしても、そのように判断されてしまうのです。

外見は、その個人に関する多くの情報を発していると自覚しなければいけません。
人は外見をひとつの手かがりとして、相手とどのように向かい合うべきなのかを本能的に探ります。そして「身だしなみ」は言葉よりも雄弁に、自身の「中身」を語るのです。だから、「身だしなみ」がとても大切なのです。
grooming
「身だしなみ」を整えることは、「相手への敬意の表現」でもあります。
目上の人にお目にかかるときは、いつもより身支度を丁寧にしませんか?
それは、目上の人に適当な服装でお目にかかるのは失礼だと知っているからです。
つまり、お客様は目の前のあなたの「身だしなみ」によって、自分を大切に思ってくれているかどうかわかります。

このように、相手を大切に思う気持ちは、「身だしなみ」を整えることによっても伝えることができます。

身だしなみを整える3つの要素

「身だしなみ」を整える際に気を付けるポイントとしては次の3つが上げられます。

◆◇清潔感があること◇◆
清潔な服装なのに、清潔感がない人がいます。それは一言で言えば、「だらしなく見える人」。
たとえば、体型に合っていない洋服を着ていたり、必要以上にボタンをはずしていたりすると、いくら洋服が清潔でも「清潔感」は伝わりませんし、仕事への前向きな姿勢も感じられません。
「清潔であること」と「清潔感があること」は別ものなのです。

◆◇機能的であること◇◆
「仕事がしやすい身だしなみ」のこと。自分にとって、仕事がしやすいことは大切ですが、自分が楽だという基準ではなく、「人から見られている」意識、つまり自分の仕事にふさわしい格好であることが必要です。
また「安全性」も機能的であることに通じます。制服・靴・帽子などはまさに安全を考えたもの。決められたものがあれば、きちんと着用しましょう。

◆◇周りと調和がとれていること◇◆
「身だしなみ」の基準は、業界や業種によって異なります。職場で周囲を見渡し、自分だけ「浮いている」ようであれば、会社や業界の「身だしなみの基準」を理解して、「身だしなみ」を整えます。

それぞれの事情に合わせて臨機応変に

取引先の会社や業界の基準も理解しておきましょう。
自社内や業界内では普通であっても、相手にとって気にかかる格好であるなら、適していないということ。
「クールビズ」などで、自分の会社がノーネクタイでOKだとしても、取引先の会社がネクタイ着用であれば、それに合わせる配慮が必要です。

また、私服を仕事用の服装にしていると、「この服装はマナー違反かな?」と迷うことがあります。そういった場合、「迷ったらやめる」ことをお勧めします。そして、社内の「身だしなみ規定」をよく知る人に確認しましょう。「迷ったらやめる」判断ができることも大切です。
自由な服装で仕事
髪の色や髪型も同じです。社内基準があれば、それに従います。
社員ひとりひとりが会社の代表として、常に相手から見られています。いつ誰にどこで会っても会社の代表としてふさわしい「身だしなみ」を心掛けましょう。

ゴルフでの「身だしなみ」はビジネスと同じ

ここで、ようやくゴルフです。
ゴルフの服装については、「ゴルフ人口を増やすために、マナーを厳しくせず、服装も自由にして」や「いつまでも服装マナーなどにこだわっているからゴルフはいやなんだ」という意見や、反対に「歴史に基づいてしっかり服装マナーを遵守しよう」という意見もあり、つねに答えの出ない論議が交わされています。

他のプレーヤーへの配慮を特に重んじるゴルフの世界では、ひとりの主観による「愉快」より、誰かひとりの「不愉快」の方が重いのです。「身だしなみ」は、そのゴルフ場に適した良識で考えるべきものだと考えます。
この場合の良識とは、そのゴルフ場に集うみんなに不愉快さを感じさせない配慮と、スポーツウェアとしての実用性を考えることです。

ゴルフは、見知らぬ大勢の人たちと同じゴルフコースでプレーするわけですから、ここまでのビジネス同様に、「身だしなみ」を整える必要があるのです。

ゴルフには、他のスポーツのような決まりきったユニフォームは存在しません。ゴルファー自身の感覚で服装を選択する自由があります。人には個性があり、個性的な装いでゴルフを楽しみたいと考えるのも自然なことです。ただし、選択の判断が、他の大勢の人たちの常識から逸脱しないようにしなければなりません。

これが崩れ、ひとりの主観による「愉快」が勝ってしまうとゴルフというスポーツゲームは成立しなくなるでしょう。
「他の組に迷惑をかけない適切なプレーペース」や「後からくるプレーヤーのためのコースの保護」など、すべてのゴルフに必要な作法や礼儀がなおざりになってしまうでしょう。自分の「愉快」のために、後からくる人や周りの人が「不愉快」になっても関係ないという考えではゴルフは成り立たなくなるのです。

ひとりの主観による「愉快」とゴルフ人口を増やすことをつなげて考えてはなりません。
結果として「不愉快」になる人を増大させ、ゴルフそのものを衰退に導く可能性があるからです。
ゴルフの身だしなみ
ゴルフ規則という決め事があるように、様々な年代の人、様々な考えの人がゴルフを平等にプレーし、共有する人々みんなが快適に楽しむために、ゴルフの作法や礼儀はあるのです。

無視してはいけないゴルフ場の服装規定

ビジネスの「身だしなみ」にも必要な3要素「清潔感」「機能的」「周囲との調和」が、ゴルフの「身だしなみ」においても重要となります。
そこで、ゴルフの場合は基準にするべきものが、各ゴルフ場で定められている服装規定(ドレスコード)となります。
定められた決め事は勝手に無視するべきではありません。

ゴルフウェアは、ルールの範ちゅうの中でも、十分に個性を表現し楽しむことができます。
規定や決め事が嫌ならそこに行かなければ良いのです。そのゴルフ場に行くからには、他のプレーヤーへの配慮の観点から、それに順応する必要があります。

たかが服装の決め事に順応できない人は、様々な状況の対応と様々なルールへの順応にも連鎖するのではないでしょうか。「ゴルフの精神」として他のプレーヤーへの配慮が盛り込まれたゴルフ規則を守れないのであれば、ゴルフというゲームをプレーする資格がないと言わざるを得ません。
周囲を無視した服装
過去を重んじるゴルフ界も、時代に合わせて変革していかなければなりません。
変革のための行動と、決め事を無視して他人への配慮を怠る服装で入ることは、ただの勝手なる破壊でしかありません。
変革への意思表示や実践的な行動は、誰をも不愉快にさせることなく、理にかなった方法で効果的に行うべきものと考えます。

参考文献
「ピーターたちのゴルフマナー」鈴木康之/ゴルフダイジェスト社
「人生を変えるマナー」三厨万妃江/あさ出版
「ビジネスマナーの「なんで?」がわかる本」山田千穂子/講談社
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谷光高
専門家

谷光高(ゴルフ場経営者)

新有馬開発株式会社(有馬カンツリー倶楽部)

一部の人が楽しむゴルフから、誰もが気軽に楽しめるゴルフへ。日本のゴルフ文化を変えるため、ゴルフ初心者へのサポートや子どもたちへのレッスン、学校の授業などを行い、初心者にゴルフを楽しむ機会を提供している

谷光高プロは朝日新聞が厳正なる審査をした登録専門家です

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