ゴルフで上手くいかないことを他人のせいにしない!

谷光高

谷光高

テーマ:社会人に役立てて欲しい「ゴルフの効用」

キャディーさんからたまに聞く話。

プレーヤー 「ピンまで残りの距離はどのくらい?」
キャディー  「残り150ヤードですね」

プレーヤー 「7番(アイアン)ちょうだい」
キャディー  「6番の方がよくないですか?」
プレーヤー 「構わん!さっさと7番くれ!」

ナイスショットにもかかわらず、ボールはグリーンに届かず、手前にポトリ。

プレーヤー 「(キャディーに向かって)あんたの距離の読みが間違ってるんちゃう?」
プレーヤー 「もっと距離があると思ってたんや!信用するんやなかったわ!」
キャディー 「・・・」
キャディーのせい
こんな場面に遭遇したことはありませんか?また自身に身に覚えがあるという方も・・・?

ここではキャディーの距離が正確だったかどうか、もしくはプレーヤーのクラブ選択が問題だったかどうかではなく、ゴルフとは“自己責任のゲームである”ということを述べたいと思います。

ゴルフは自己責任のゲーム

ゴルフでは、キャディーの距離が間違っていようが、そのアドバイスに合意してプレーしたら、すべてプレーヤーの責任となります。ゴルフ場経営の立場としてはキャディーの教育に対する責任はありますが、ゴルフの性質上、プレーにおける責任はすべてプレーヤーにあるのです。このようなゴルフの性質を理解した上で、自分のミス・ショット及びクラブ選択のミスに対して適切な行動を取らなくてはいけません。

自分のミスを認められず、キャディーや他人のせいにするのは、自分の「弱さ」を露呈しているようなものであり、弱い人ほど、自分のミスを「他人のせいにする」ように思います。

尊大に振る舞うのは、自分に自信がなく、大きく見せなければいけないからです。
小さな爬虫類や昆虫がよく、自分を大きくみせることで敵を追い払うというのがありますが、これとよく似ています。
またこういう人は、信頼関係が試されるような土壇場で、保身のために、人を裏切る可能性が高いと一般的に言われています。

ビジネスでもゴルフでも人間関係が上手くいく人というのは、他人の責任に押し付けたりせず、自分の間違いを素直に受け止めることができる人ではないでしょうか。

この考え方は、人に頼みごとをする時や、クライアントを見極めるとき、付き合うべき人を見極めるときなどには、非常に有効になると思います。

仕事上どうしても付き合わなければいけない場合は、その労力を最小限にとどめること、こういった人に何を言われても、子供の戯言を聞くように、聞き流すことが得策といえるでしょう。

自分がこういった弱い人間にならないように、自分をしっかり監視することも必要です。全ては自分が引き起こしていると考え、自分の選択によって決定されている、だから自分の選択や行動に責任を持ち、それゆえに自分の未来を自分で選び取ることができるわけです。

競技委員の誤審通りに処置した帝王ニクラス

ジャック・ニクラス (Jack Nicklaus、 1940年~ ) は、アメリカ・オハイオ州コロンバス出身のプロゴルファー。1960年代から1990年代にかけて圧倒的な強さで活躍し、日本では「帝王」と呼ばれています。
4大メジャー大会は、マスターズ・トーナメント6勝、全米オープン4勝、全英オープン3勝、全米プロゴルフ選手権5勝という輝かしい優勝実績を持ち、今なお史上最高のゴルファーとも称されています。

そのニクラスが、1972年に優勝してディフェンディング・チャンピオンとして出場した翌年のマスターズ・トーナメントでのこと。
2日目の15番ホール(520y・パー4)で、2オンを狙って打った1打はグリーンの右に逸れてマウンドの上で見物していたギャラリー(観客)が座っていた椅子の脚に触れて止まりました。

椅子はゴルフルール上、「動かせる障害物」です。競技委員の指示のもと、ニクラスはコインでボールの位置をマークしてから規則24-1aに基づき椅子を動かしました。
その時、ボールが動いたので、ルールに従って動いたボールをリプレースしました。
ここまでは救済であり、罰はありません。

その後、ニクラスは次打を「どのように打とうか」を決めるためにボールが止まっている位置からグリーンサイドまで歩いていき、入念にホールまでの地形をチェックしていました。
すると、突然、ボールが動き出して、マウンドを転がり下り、グリーンの数メートル手前で止まったのです。

ルール上、リプレースしたボールはインプレーのボールとなるので、その後は、動かしたり、拾い上げたりすることはできません(規則20-4)。ニクラスのボールはリプレースした後、自然に動き出したので、次打はボールが止まったところから、あるがままにプレーすることになります。

この時のニクラスは、ルールに基づいた正しい処置法が分からず、「どうしたらいい?」という顔をしながら競技委員の方を見ました。
すると競技委員は「そのボールは、元の位置に戻してリプレースしなければならない」という裁定を下しました。
ニクラスはその裁定に従い、動いたボールを拾い上げてマウンド上の元の位置にリプレースしてプレーし、3オン2パットのボギーでこのホールを終了しました。

このとき競技委員によって下された裁定は、完全な誤審だったのです。
ニクラスはツアープロの中でも、ルールに関しては最も精通しているプレーヤーの1人でしたが、この誤審には気付きませんでした。

正しい裁定が下されていたら、あるいはニクラス本人が正しい処置を知っていて、競技委員の誤審を正してから、止まっているボールをあるがままにプレーしていたら、簡単にホールの近くまで寄せて1パットで沈めて楽々パーを取っていたかもしれません。この2日後、ニクラスはトップと2打差の3位タイという結果でこの年のマスターズを終えました。

ゴルフは、たとえ競技委員の誤審であっても、それを受け入れてプレーしたプレーヤーの自己責任となります。結果は何も変わりません。

世界最強のプロゴルファーであろうが、アベレージ100のアマチュアゴルファーだろうが、プレーに関しては、すべて自己責任となります。
誰に何を言われても、キャディーさんからどんなアドバイスを受けても、それがどんな結果になろうとも、ゴルフは決して、他人に責任を押し付けることはできないのです。

他人のせいにしないために

上手くいかなかったことを少し冷静に分析してみて、上手くいかなかった直接の原因だけでなく、それ以前の自分の言動や行動を省みるようにしましょう。自分にも良くないところがあったことを発見したら、自分の責任でもあることを認識することができます。
そう考えることができると「あの人のせいでうまくいかなかった」という思考にとらわれている自分から解き放たれ、自分にも原因があったのだと発見することで気持ちが楽になり、改善しようという意欲に繋がるのではないでしょうか。

参考文献及びサイト
「ゴルフルール事件簿」マイク青木/日経ビジネス文庫
メンタリズム・ラボ」メンタリストDaiGoのblog
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谷光高
専門家

谷光高(ゴルフ場経営者)

新有馬開発株式会社(有馬カンツリー倶楽部)

一部の人が楽しむゴルフから、誰もが気軽に楽しめるゴルフへ。日本のゴルフ文化を変えるため、ゴルフ初心者へのサポートや子どもたちへのレッスン、学校の授業などを行い、初心者にゴルフを楽しむ機会を提供している

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