数字が映す沖縄民泊の実態 ― 南城市の収益データ分析【3/5】

※本稿は、当社が実際に運営に関わっている事例をもとにしています。オーナーおよび物件の特定を避けるため、エリアや物件情報を伏せ、収益についても実額ではなく概数や比率を用いて記載しています。
【単月売上100万円超の物件を見ながら考えました】
先日、当社が運営に関わっている沖縄北部のある宿泊施設について、7月のオーナー向けレポートと送金明細を作成していました。この物件は、オーナーが物件を購入して民泊をしているのではなく、賃借し、家具や家電などを揃えて住宅宿泊事業を行っているケースです。この物件の7月の売上は100万円を超えていましたので、その数字だけを見れば、民泊はかなり儲かる事業に見えると思いますし、これから沖縄で民泊を始めようと考えている方が見れば、「やはり沖縄の民泊は収益性が高い」と感じても不思議ではありません。
ただ、送金明細を作りながら数字を一つずつ見ていくと、当然ですが、その売上がそのままオーナーの利益になるわけではありません。AirbnbやBooking.comなどのOTA手数料、運営代行費、サイトコントローラーなどの費用を差し引いたうえでオーナーへ送金し、さらにそこから賃料や清掃費、光熱費、消耗品、修繕などの雑費を差し引いていくと、最終的に手元に残ったのは売上の3割前後でした。
【売上100万円超でも、見るべきはその先でした】
では、売上100万円を超えていながら、なぜ最終的に手元に残る金額は売上の3割前後になるのか。収支を改めて見ていくと、私が一番気になっていたのは、毎月固定で発生する賃料でした。
この物件については、運営を始めてから賃料の負担に気づいたわけではありません。開業前の収支計画を確認した段階から、私は賃料が少し重いのではないかと感じていました。具体的な賃料は伏せますが、私が考えていた賃料水準より3割程度割高な条件でしたので、ある程度の売上を作ることができても、この固定費が最終的な利益を圧迫する可能性は当初から気になっていました。
ただ、オーナーもそのことを理解していなかったわけではありません。沖縄で民泊に使える物件を1年ほど探していて、その中でようやく見つけたのが海の見えるオーシャンビューの物件でしたので、多少賃料が割高であっても、これ以上探し続けるより運営を始めたいという気持ちの方が勝ったのだと思います。物件を長く探していると、条件をすべて満たす物件がいつ出てくるのか分かりませんので、その判断自体を数字だけで良かった、悪かったと評価することもできません。
もう一つ、私が当初から気になっていたのが、この物件を住宅宿泊事業、いわゆる民泊新法で運営することでした。住宅宿泊事業では年間の営業日数が180日以内に制限されますので、賃料は年間365日分発生する一方、宿泊者を受け入れて売上を作れる日は最大でも180日です。オーシャンビューという強みがあったとしても、相場より割高な賃料と年間180日という営業日数の上限を同時に抱えることになりますので、私は開業前から、この二つが収益を考えるうえで重要になるだろうと見ていました。
実際に運営が始まれば、各種手数料や運営に必要な費用が発生しますし、レビューを維持するために清掃や運営の品質を簡単に落とすこともできません。宿泊者へのメッセージ対応や料金調整、予約管理だけではなく、設備の不具合や清掃トラブル、直前のコラムで書いた台風によるキャンセルや返金についてAirbnbへ確認し、オーナーと相談しながら判断するような仕事もあります。こうした費用を削ればその分だけ利益が増えるというものでもなく、むしろ削ってはいけない費用まで削ってしまえば、宿泊者からの評価が下がり、最終的には売上そのものを落とす可能性があります。
【複数年で見ると、この物件の見え方が変わりました】
ここまでの数字だけを見ると、「やはり民泊は思ったほど儲からないのではないか」と感じる方もいるかもしれません。ただ、今回改めてこの物件の収支を複数年で見直してみると、少し違う見え方になってきました。
この物件では、家具や家電、備品などに加えて、保証料や礼金などの賃貸借契約に必要だった費用まで含め、開業時には数百万円規模の初期投資をしています。ここでいう投資額は物件の購入費ではなく、賃貸物件で民泊事業を始めるために実際に必要となった初期投資です。初年度から一定の売上を確保し、2年目以降は現在の運営状況が続けば初年度を上回る年間売上を見込んでいますので、複数年で収支を見ていくと、現在の運営状況が続くという前提では6年以上かけて初期投資を回収できる見込みになっています。
私は住宅宿泊事業について、賃貸物件で民泊事業を始める場合、初期投資に対して一般的には5%から10%程度の収益性を一つの目安として見ていますので、この物件は当初考えていた水準を上回っています。単月だけを取り出せば「売上100万円超に対して手元に残るのは3割前後」と見えますが、投資した金額と複数年の収益まで含めて見ると、住宅宿泊事業としてはかなり良い結果が出ている物件だと考えています。
では、なぜこの物件が年間180日という制約がありながら、ここまでの数字を作れているのかと考えると、私は一つの理由だけではないと思っています。立地があり、オーシャンビューという特徴があり、間取りや宿泊者にとっての使い勝手があり、室内のコーディネートがあり、そこに日々の料金調整やゲスト対応、清掃品質などが重なっています。Airbnbではこれまで50件を超えるレビューをいただき、そのすべてが星5ですので、物件を選んだことだけが正解だったわけでも、運営だけが良かったわけでもなく、それぞれがうまく噛み合った結果が現在の数字なのだと思います。
【住宅宿泊事業の180日という上限をどう見るのか】
この物件について改めて考えてみると、賃貸による住宅宿泊事業としては、当初の想定を上回る成果が出ています。年間180日という営業日数の上限がありながら、この水準まで収益を作れていること自体は評価してよいと思います。ただ、その一方で、料金設定を見直し、レビューを積み上げ、宿泊単価を上げることはできても、住宅宿泊事業である以上、180日を181日にすることはできませんので、運営を改善するだけでは超えられない制度上の上限があります。
もちろん、残りの日数をマンスリー賃貸などで運用し、年間を通して収益を作るという考え方もあります。実際にこの物件でもその可能性を検討し、マンスリーを扱う業者へ賃料査定を依頼しましたが、提示された金額は現在支払っている賃料を下回る水準でした。しかもマンスリーの場合は光熱費などを含めた条件で貸すことになりますので、それでは空室期間を埋めることはできても、事業全体では大幅な赤字になります。那覇のような都市部であれば、出張や1か月以上の長期滞在など一定の需要を取り込める可能性がありますが、今回のようなリゾートエリアでは同じようには考えにくく、この物件ではマンスリーを組み合わせるのではなく、180日の中でどこまで収益を作れるかという考え方で運営しています。
そう考えると、今回の物件は賃貸による住宅宿泊事業としては想定以上の結果です。ただ、同じように賃貸物件を使った宿泊事業で、さらに高い収益を狙うのであれば、ここから先を料金調整や稼働率の改善だけで伸ばそうとするよりも、物件を探す入口に戻って考えた方がよいと思っています。私であれば、最初から旅館業の許可を取得できる物件を前提に探します。
旅館業であれば年間365日の営業が可能になりますので、物件や運営状況によっては、住宅宿泊事業よりもさらに高い収益性を狙える可能性があります。ただし、旅館業であれば自動的に高収益になるという話ではありません。365日営業できても予約が入らなければ売上にはなりませんし、賃料が高すぎれば利益は残りませんので、立地、宿泊単価、稼働率、間取り、設備、固定費、そして運営まで含めて考える必要があります。それでも、180日という上限の中で収益を作る住宅宿泊事業と、年間を通して営業できる旅館業では、収益を伸ばしていく余地そのものが違いますので、賃貸物件を使って純粋に事業として民泊を考えるのであれば、この違いは物件を選ぶ段階から見ておくべきだと思います。
【さらに収益を狙うなら、私は旅館業ができる物件を選びます】
民泊を始めたいという相談を受けていると、「このエリアなら1泊いくらで貸せますか」「年間でいくら売れますか」という質問をよく受けます。もちろん、それも大切なのですが、私はその前に、その物件をいくらで借りるのか、あるいはいくらで購入するのか、そして住宅宿泊事業なのか旅館業なのかを見ることの方が重要だと考えています。
今回の物件のように、年間180日という制限があっても、立地や物件スペック、設備、室内のコーディネートに加え、日々の運営や清掃までうまく噛み合えば、住宅宿泊事業でも高い収益性を作ることはできます。ただ、それを見て「沖縄で民泊をすれば儲かる」と考えてしまうと、また別の認識のズレが生まれます。この物件は住宅宿泊事業として想定以上に成果が出ている物件であって、すべての物件で同じ結果になるわけではありません。
逆に、最初から収益を大きく取りにいくのであれば、私はオーシャンビュー、大人数で宿泊できる広い一棟貸し、プール、サウナ、ジャグジーなど、宿泊者がその施設を選ぶ明確な理由を持っていることに加えて、旅館業の許可を取得でき、年間を通して営業できる物件なのかを見ます。10名以上で宿泊できる施設であれば、1泊の料金が高くても1人あたりでは選ばれやすくなりますし、プールやサウナなどがあれば、その施設で過ごすこと自体を旅行の目的にすることもできます。
一方で、私は住宅宿泊事業を否定しているわけではありません。むしろ、自分や家族が使うために沖縄へ別荘を持ち、自分たちが使わない期間だけ宿泊施設として働かせるのであれば、年間180日という制度と非常に相性が良いと思っています。自分が沖縄へ来たときには家族や友人と使い、それ以外の期間に維持費の一部、あるいはそれ以上を稼いでもらうのであれば、投資利回りだけでは測れない価値があります。
同じ「沖縄で民泊をする」という話でも、賃貸で民泊事業を行い、より高い事業収益を求める人と、沖縄に自分の資産を持ちながら使わない期間にも働いてもらいたい人では、選ぶべき物件も、取得すべき許可も違います。結局、民泊が儲かるかどうかを考える前に、その人が何を目的として民泊を始めるのかを整理する必要があるのだと思います。
【まとめ】
今回、単月売上100万円を超えた物件の収支を見直してみると、売上から必要な費用を差し引いた手残りは3割前後でした。ただ、開業時の初期投資まで含めて複数年で見ると、現在と同程度の運営が続く前提では回収に6年以上かかるものの、回収期間から単純に年率換算すると15%から20%の間になる見込みです。賃貸による住宅宿泊事業としては、当初の想定を上回る成果が出ていると考えています。
一方で、住宅宿泊事業には年間180日という上限がありますので、さらに高い収益を狙うのであれば、私は運営方法だけを考えるのではなく、最初から旅館業の許可を取得できる物件を探します。結局、民泊の収益はAirbnbに掲載してから決まるのではなく、物件選び、初期投資、固定費、営業可能日数、そして運営まで含めた入口の事業設計から始まっているのだと思います。
―沖縄本島の民泊運営・新規開業についてご相談ください―
現在、沖縄で民泊を運営しているものの、売上や稼働率、運営体制に課題を感じており、運営会社の変更や施設のリニューアルを含めて、本気で収益改善に取り組みたいオーナー様からのご相談をお受けしています。
また、これから沖縄で民泊・宿泊事業を始める方についても、単に「民泊をやってみたい」というご相談ではなく、必要な投資を行い、物件選びや収支計画、旅館業・住宅宿泊事業の選択、施設づくり、開業後の運営まで含めて、事業として真剣に取り組みたい方のご相談をお受けしています。
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