ジャングリア沖縄の「100万人」を見て、今年いただいた相談を思い出しました

多田進吾

多田進吾

テーマ:沖縄マーケット分析


【今年いただいた相談を思い出しながら、100万人という数字を見ていました】
ジャングリア沖縄の初年度来場者数が、SPA JUNGLIAを含めて100万人で着地する見込みだという発表を見たとき、最初は素直に、開業して間もない施設としては十分に大きな数字だと思いました。
例えば、首里城公園の2025年度の年間来場者数は約123万人、沖縄美ら海水族館は約357.6万人です。こうして沖縄を代表する観光施設と並べてみると、開業初年度で100万人という数字が、沖縄を代表する観光施設と比較しても決して小さな規模ではないことが分かります。
ただ、その発表を見ているうちに、今年に入ってからいただいた宿泊事業の相談を思い出していました。宿泊事業をやめることを考えているオーナーからの相談が4件あり、その一方で、新しく宿泊事業を始めたいという相談が3件、さらに運営だけではなく、清掃や建物管理までまとめて任せたいという相談も3件ありましたので、同じ沖縄の宿泊市場を見ているはずなのに、ある人は撤退を考え、ある人は参入を考え、別の人は運営体制を整えようとしていることが、以前から気になっていました。

撤退を考えていたオーナーの中には、ジャングリアが開業すれば周辺の宿泊需要がすぐに増え、売上も分かりやすく変わるのではないかと期待していた方もいました。一方、新しく宿泊事業への参入を考えている方は、開業直後の数字というよりも、これから数年かけて沖縄北部の観光の流れが変わっていく可能性を見ていました。また、運営や清掃、建物管理までまとめて任せたいという方は、宿泊施設は建物を購入して予約サイトへ掲載すれば自然に売上が上がるものではなく、料金調整や清掃品質、宿泊者への対応、レビューの蓄積まで含めて運営しなければ続かないことを見ていましたので、同じ出来事を見ていても、見ている時間も、そこに期待している結果も違っていたのだと思います。

そのような相談が続いていたところへ100万人という数字が出てきましたので、私はその数字を見ながら、これが成功なのか失敗なのかということよりも、この数字を見た人が、ここから何を判断するのだろうということの方が気になりました。

【同じ100万人を見ても、見えているものは違います】
今回発表された100万人は、テーマパークだけではなく、SPA JUNGLIAの利用者も含めた初年度の来場者数です。施設全体の利用者数として発表された数字ですので、テーマパーク単体の入場者数とは異なりますが、見出しだけを見た人の中には、テーマパークだけで100万人が訪れたと受け取る方もいるかもしれません。

ただ、私が宿泊事業や不動産の相談を受ける立場として知りたいのは、100万人という合計人数だけではありません。その人たちが沖縄県内から来たのか、県外や海外から来たのか、沖縄に何泊したのか、ジャングリアを訪れるために宿泊を1泊延ばしたのか、どの地域に宿泊したのか、そして北部でどのくらいのお金を使ったのかという、その数字の先にある人の動きです。

宿泊事業者であれば、その人たちがどこから来て、沖縄に何泊し、どの地域に宿泊したのかが気になりますし、不動産投資を考えている方であれば、周辺の宿泊需要や賃料、土地や建物の選ばれ方がどのように変わるのかを考えます。一方、観光施設の運営を見る人であれば、来場者数の内訳や客単価、再び訪れる人の割合まで知りたいと思いますので、同じ100万人という数字を見ていても、それぞれが見ているものは違います。

数字は同じでも、そこから受け取る意味は、その人の立場や期待によって変わります。撤退を考えていたオーナーにとっては、開業直後に自分の施設の売上がどのくらい増えたのかが重要ですし、これから参入しようとしている方にとっては、数年後に北部の観光動線がどのように変わっているのかが重要です。また、運営体制を見直そうとしている方にとっては、観光客が増えるかどうかよりも、その需要を受け止められる運営を自分が続けられるのかということの方が、現実的な問題になります。

人は数字を見て判断しているようで、実際には、その数字の中に、自分がもともと持っていた期待を見ていることの方が多いのかもしれません。

【沖縄の可能性は、訪れた人数だけでは測れません】
100万人という数字の見方を考えているうちに、以前から気になっていた沖縄とハワイの比較を思い出しました。りゅうぎん総合研究所が2018年に発表した調査レポート「ハワイの観光と沖縄」では、当時の沖縄とハワイは年間観光客数がほぼ同じ規模でありながら、沖縄の観光消費額はハワイの約4割にとどまるとされていました。平均滞在日数も、沖縄が約3.65日であるのに対し、ハワイは約8.94日となっており、訪れる人の数が近くても、その人がどのくらい滞在し、地域でどのくらい消費したのかによって、観光地として見える景色は大きく変わります。

令和7年度の沖縄県の入域観光客数は1,000万人を超え、確定版も令和8年6月25日に公表されていますので、人数だけを見れば、沖縄観光はすでに大きな市場になっています。

さらに沖縄は、日本国内だけではなく、東アジアや東南アジアにも近く、沖縄県の資料では、空路4時間圏内に日本、中国、ASEANを含む約20億人の市場があるとされていますので、地理的に見ても、沖縄にはまだ観光市場を広げられる可能性が残されています。

ただ、私が沖縄のポテンシャルとして見ているのは、これからさらに観光客を何百万人増やせるかということだけではありません。現在訪れている人が、もう1泊長く滞在するようになるのか、那覇や恩納村だけではなく、北部や東海岸、離島へ宿泊地が広がっていくのか、食事や体験、移動、買い物を通じて、地域で使う金額が増えていくのかという部分にも、まだ大きな伸びしろが残されているのだと思います。

ジャングリアについても同じで、100万人が訪れたということだけではなく、その人たちがジャングリアへ行くために沖縄滞在を1泊延ばしたのか、これまで那覇や恩納村に集中していた宿泊が北部へ広がったのか、それとも既存の旅行日程の中で、日帰りの訪問先が一つ増えただけなのかによって、宿泊市場への影響は変わります。

来場者数が増えれば必ず周辺の宿泊施設の売上が増えるわけではありませんし、開業直後に目立った変化が見えないからといって、沖縄北部の観光を変えていないとも言い切れません。人の流れや宿泊地の選ばれ方が変わるには時間がかかりますので、不動産や宿泊事業の判断では、来場者数だけではなく、人の滞在や移動がどのように変わっていくのかまで見ていかなければならないのだと思います。

【【数字よりも、その数字に何を期待していたのか】
今年いただいた相談を振り返っていると、同じ沖縄の宿泊市場を見ていたはずなのに、相談者ごとに結論が違っていた理由は、市場の見方というよりも、それぞれが見ていた時間の長さにあったのではないかと思うようになりました。

開業直後の売上の変化を見ていた方もいれば、数年かけて北部の観光動線が変わっていく可能性を見ていた方もいましたし、観光客が増えるかどうかではなく、その需要を受け止めながら、自分が宿泊事業を続けられる体制を作れるかどうかを考えていた方もいました。同じ100万人という数字を見ても、その数字に何を期待していたのかによって、見えてくる未来は変わります。

もう一つ気になったことがあります。それは、撤退を考えていた方々の多くが、おおむね1年ほどで事業を判断していたことでした。もちろん、1年で結果が出る事業もあると思います。しかし、一つの事業を立ち上げ、運営を整え、利益が出る状態まで育てることは、それほど簡単ではありません。特に、本業を持ちながら宿泊者への対応や料金調整、清掃、建物管理などの多くを外部へ任せている場合には、自分が事業に向き合える時間も限られますので、1年という期間だけで事業の可能性まで判断することには難しさがあります。

こうした相談を重ねる中で、私は宿泊事業は少なくとも3年ほどの時間軸で考えるべき事業ではないかと思うようになりました。そのため、当社で宿泊施設の運営をお引き受けする際にも、最初に3年間の運営計画をご説明し、その考え方にご理解いただけた方のみ、お引き受けするようにしています。

宿泊事業は、建物を購入すればすぐに結果が出るものではありません。宿泊者からの評価が積み重なり、料金や販売方法を見直しながら、少しずつ施設としての信頼を築いていく事業です。建物を所有することと、宿泊施設を運営することは別の話であり、観光客が増えるという外部環境だけではなく、自分がどのような体制で事業を続けていくのかまで考えて初めて、事業として形になっていくのだと思います。

私は、ジャングリアがこれから沖縄北部の観光に与える影響は、開業初年度の来場者数だけで決まるものではないと思っています。新しい施設ができたことで北部を訪れる理由が一つ増え、その周辺に新しい宿泊施設や飲食店、体験、交通手段が生まれ、旅行者の動きが少しずつ変わっていけば、数年後には現在とは違う沖縄観光の流れができている可能性があります。

もちろん、その変化がどこまで起きるのかは、まだ分かりません。ただ、目の前の来場者数だけを見て、すぐに成功や失敗を決めるのではなく、沖縄を訪れた人がどこへ移動し、どこに泊まり、何日間滞在し、その結果として地域にどのような変化が生まれていくのかまで見ていくことが、不動産や宿泊事業に関わる立場としては必要なのだと思います。

【まとめ】
ジャングリア沖縄の100万人という数字を見たとき、私は最初に数字の大きさを見ていましたが、今年いただいた相談を思い出していくうちに、数字そのものよりも、その数字を見た人が何を期待し、どの時間軸で判断しているのかが気になるようになりました。

撤退を考えるオーナーは開業直後の売上を見ていましたし、新しく参入しようとしている方は数年後の観光需要を見ていました。運営体制を整えようとしている方は、観光客数よりも、長く事業を続けられる仕組みを見ていましたので、同じ沖縄の宿泊市場を見ていても、それぞれが見ているものは少しずつ違っていたのだと思います。

不動産や宿泊事業の相談を受けていると、数字が人を動かしているように見えることがありますが、実際には、その数字に対して自分が持っていた期待や前提が、判断を動かしていることの方が多いように感じます。だからこそ、100万人という数字だけを見て結論を出すのではなく、その数字の先で、人の流れや滞在日数、宿泊地の選ばれ方がどう変わっていくのかまで見ていく必要があるのではないでしょうか。

ジャングリアが沖縄北部の観光をどこまで変えていくのかは、まだ誰にも分かりません。ただ、不動産や宿泊事業に関わる立場として私が見ていきたいのは、来場者数という一つの数字ではなく、その数字をきっかけに、人の滞在や移動がどのように変わり、その変化が沖縄の観光や地域の価値をどのように変えていくのかという、その先の動きなのだと思っています。

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【引用資料】
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000050.000148025.html
"「沖縄のみなさんと、次のジャングリアへ。」ジャングリア沖縄"

https://www.dc.ogb.go.jp/kouen/shurijo/riyousha.html
"国営沖縄記念公園 首里城地区|利用者状況"

https://www.dc.ogb.go.jp/kouen/ocean/riyousha.html
国営沖縄記念公園 海洋博覧会地区|利用者状況"

http://www.ryugin-ri.co.jp/tyousareport/14879.html
"ハワイの観光と沖縄"

https://www.pref.okinawa.jp/shigoto/kankotokusan/1011671/1011816/1003287/1026300.html
"入域観光客概況の公表|沖縄県公式ホームページ"

https://www.pref.okinawa.jp/_res/projects/default_project/_page_/001/011/896/nihongo_p1-2.pdf
"Okinawa International Logistics Hub"

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多田進吾
専門家

多田進吾(不動産仲介)

沖縄リアルエステート株式会社

東京で富裕層向け不動産仲介に従事し交渉力や提案力を磨く。沖縄移住後は宿泊施設を開業し運営ノウハウも取得。迅速かつ丁寧な対応を強みに、空き家活用から収益化の提案までオーナー様に寄り添った不動産取引を支援

多田進吾プロは琉球放送が厳正なる審査をした登録専門家です

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