AIに仕事を奪われる会社と、AIを使って生き残る会社 情報サービス業の倒産増から沖縄企業が考えること
「このメール、AIで返信を作ってもいいですか?」
社員に聞かれて、「いいよ。個人情報には気をつけて」と答える。
よくありそうな会話ですが、これだけでは社員も迷います。名前を消せばいいのか。会社で契約しているAIなら、そのまま使っていいのか。返信を自動で送るところまで任せていいのか。
社長は許可したつもり。社員は、自分で判断するしかない。その状態で仕事が進むのは、少し心配です。
かといって、何をするにも社長の確認が必要では、仕事を楽にするために入れたAIで、確認の仕事が増えてしまいます。
僕が小さな会社で先に決めたいのは、「この仕事は、ここまで任せていい」という具体的な範囲です。
「AIを使っていいか」ではなく「どの仕事を任せるか」
例えば、問い合わせ対応なら、こんな決め方ができます。
会社が指定したAIで、問い合わせ用のメールを整理する。会社が用意した商品資料を参考に、返信案を作る。日程や金額を含む返答は、担当者が確認して送る。
ここまで決まっていれば、社員は毎回「使っていいですか」と聞かなくて済みます。
受付連絡など、自動で送ってよい仕事もあるでしょう。その場合は、対象となる問い合わせ、送る内容、判断できないときの回し先を決めて、事前に動作を確かめます。普通の自動返信で足りるなら、そこに無理にAIを使う必要もありません。
反対に、値引きや納期の確約、契約条件の変更まで、同じ扱いにはできません。
メールを一通送るという操作は同じでも、会社への影響は違います。だから、すべてを禁止するのでも、すべてを任せるのでもなく、仕事ごとに分けます。
社員に渡すルールは、このくらい具体的に
以下は、そのまま社内文書の土台にできる例です。[ ]を埋めるだけでなく、実際の契約や取引先との約束に合っているかを会社側で確認してから使ってください。
わが社のAI利用ルール
仕事には、会社が認めたAIとアカウントを使います。
利用するAIは[サービス名・プラン]です。個人で契約したAIを仕事に使う場合や、新しいサービスを追加する場合は、[担当者]に相談してください。会社が認めた用途と範囲であれば、毎回の申請は不要です。
会社が認めた情報だけを使います。
利用できる資料やメールは[対象の資料・メール・保存場所]です。閲覧できる資料を、何でもAIに読み込ませてよいわけではありません。対象外の情報が必要になったら、先に相談してください。パスワード、認証コード、持ち出しを禁止された情報は入力しません。
下書きとして使う仕事と、自動で進める仕事を守ります。
[返信案の作成など]は、人が確認してから使います。[承認済みの自動処理]は、決められた条件の中で動かします。値引き、納期、契約などの判断は、通常の社内承認に従ってください。
新しい連携や録音を、自己判断で始めません。
メールや共有フォルダを新しくつなぐとき、AIに任せる範囲を広げるときは相談してください。会議の録音は会社の決まりと相手との約束に従い、開始前に参加者へ確認します。
間違えたかもしれないときは、その時点で連絡します。
連絡先は[担当者・連絡方法]、不在時は[代わりの担当者]です。決められた方法で問題の処理を止め、何を、いつ、どのAIに入力・送信したかを伝えてください。自己判断で履歴を消さないでください。
文章だけでは分かりづらいので、このルールと一緒に「使ってよい仕事の実例」を一つ見せます。社員にAIの説明書を読んでもらうより、自分の仕事で確かめてもらう方が話が早いんです。
「確認してください」の中身まで見せる
例えば、問い合わせへの返信案を、架空のお客様情報で一通作ります。
そこに「金曜日に納品できます」と書かれていたら、「ここは在庫と配送予定を確認する」と伝える。「前回と同じ料金です」なら、最新の見積もり条件と照らし合わせる。
宛先や添付資料も確認します。文章がきれいでも、別のお客様の見積書を添付していたら困ります。
社員に求めるのは、AIの仕組みを理解することではありません。自分の仕事として、どこを確かめればよいか分かることです。
確認を任せる人に、そのための資料や判断材料があるかも見てください。「チェックして」と言われても、正しい金額や納期が分からなければ、確認のしようがありません。
社員の注意力だけに頼らない
ここからは、社長や導入を担当する人の仕事です。
「ほかのメールは読まないで」とAIに指示することと、ほかのメールを読めない設定にすることは違います。問い合わせ対応だけが目的なら、必要な情報だけに接続できないかを確認します。サービスによっては細かく分けられないため、アカウントを分けるなど、別の方法が必要になる場合もあります。
送信や削除も同じです。「勝手に送らないで」と頼むだけで済ませず、実際に承認が必要になる設定や、操作できる範囲を確認します。
受信メールや資料には、AIをだまして、関係のない情報を送らせようとする文章が紛れ込むこともあります。読むだけのつもりだったAIに、送信まで自由にできる権限を与えると、影響が広がります。
こうした部分まで、社員一人ひとりに見抜いてもらうのは無理があります。ルールを守りやすい設定にしておくところまで、会社側の準備です。
「入れちゃいました」と言える会社にする
ルールを決めても、間違いは起こります。
「この資料、入れてはいけなかったかもしれません」
そう報告があったときは、まず何をしたか確認します。原因を問い詰めるのは後です。言い出しにくい雰囲気では、対応が遅れてしまいます。
使ったサービス、入力した情報、時刻、送信や共有の有無を確認する。必要に応じて処理を止め、提供会社や支援先と対応を相談します。
社員には、被害が出たと分かるまで待たなくてよいと伝えておきます。「おかしいかも」で連絡してもらえれば十分です。履歴を消すことと、サービス側から情報がなくなることも同じではありません。
最初の見直しで聞くのは「守れた?」より「どこで困った?」
使い始めてしばらくしたら、社員に聞いてみてください。
「確認待ちで止まった仕事はあった?」「毎回、同じところを直していない?」
商品説明を作るたびに社長へ聞いているなら、使ってよい資料を決められないか。返信案に毎回同じ修正が入るなら、見本を直せないか。
繰り返し問題なく進められる仕事は、任せられる範囲を見直します。ただし、使う情報や連携先が変わったときは、前と同じつもりで広げないようにします。退職や担当変更の際も、会社のAIや連携先に入れる権限を見直します。
小さな会社のルールは、社員を止めるためだけのものではありません。社長に聞かなくても進められる仕事を増やすためのものでもあります。
BLUE LEAFでは、日々の業務を伺いながら、AIに任せる仕事、人が確認する仕事、社員が迷わず進められる範囲を一緒に整理します。
「社員はもう使っているけれど、会社として何も決めていない」。そんな状態でも、今の使い方を確認するところから始められます。
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