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労働時間と割増賃金のお話(30)

竹下勇夫

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テーマ:労働時間と割増賃金のお話

~割増賃金(その9)~


 固定残業代の定めが個々の労働契約において合意されることもありますが、多くの場合、就業規則や賃金規程によって固定残業代の定めがあり、これが労働契約の内容になっている場合が多いでしょう。

 ところで、労働契約法7条は、「労働者及び使用者が労働契約を締結する場合において、使用者が合理的な労働条件が定められている就業規則を労働者に周知させていた場合には、労働契約の内容は、その就業規則で定める労働条件によるものとする。」としていますから、固定残業代が就業規則等に定められている場合においても、当該就業規則等が「労働者に周知」されていなければなりません。
 
 裁判例の中には、労働者が使用者に対して就業規則の閲覧を求めていたのに閲覧できなかった場合、就業規則を保管しているとされる場所に実際に就業規則が保管されているのを見た人がいない、そもそも就業規則を従業員に周知していたとするに足る証拠がない、などを理由に、就業規則の周知性を否定し、固定残業代を支払うことが労働契約の内容になっているとの使用者側の主張を認めなかったものがあります。

 従って、固定残業代の支払いを就業規則等で定めている場合には、これを常に労働者の閲覧に供することができるような状態にしておくことが重要です。

                                       -続-

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専門家

竹下勇夫(弁護士)

弁護士法人ACLOGOS

検察官として10年、弁護士として30年超のキャリアを有し、高い専門性が求められる企業法務を得意とする。沖縄弁護士会会長等の公職を歴任する傍ら、琉球大学大学院法務研究科(現在は学部)講師の顔を持つ。

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