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労働時間と割増賃金のお話(24)

竹下勇夫

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テーマ:労働時間と割増賃金のお話

~割増賃金(その3)~


 ここで、時間外労働と休日労働における割増賃金について、既にお話ししたことも含めて整理しておきましょう。
 まず時間外労働についてです。

 第一に、割増賃金を支払う義務があるのは法定労働時間を超えた場合です。就業規則に定める1日の所定労働時間が7時間である場合において、7時間を超えて8時間以内の所定労働時間を超過する労働について、労基法37条による割増賃金の支払義務は所持ません。ただし、就業規則においてこのような場合にも割増賃金を支払う旨の規定があれば、当然就業規則の定めによって割増賃金の支払義務が生じます。

 第二に、管理監督者のように労基法41条によって労働時間等に関する規定の適用を除外されている労働者については、割増賃金支払の問題は生じません。ただし、超過労働に対して何らかの賃金を支払う旨の当事者間の定めがあるときはそれによります。また、労基法41条の2の高度プロフェッショナル制度の対象労働者については、労基法37条の適用がありません。

 第三に、労基法38条1項は、事業場を異にする場合においても、労働時間を通算するとしており、事業場の経営者が異なる会社であっても同様に解されるところから、同日にA会社の甲事業場とB会社の乙事業場で労働した場合においては、これらの労働時間が通算されることになります。従って通算された結果1日の労働時間が8時間を超えた場合には割増賃金の支払義務が生じます。この場合、割増賃金をA社が支払うのかB社が支払うのかという問題が別途生じます。

 第四に、時間外労働が引き続き翌日の所定労働時間に及んだ場合には、翌日の所定労働時間の始期までの超過時間について割増賃金を支払えばよいというのが行政解釈です。

 次に休日労働に対する割増賃金ですが、これは法定休日に労働させた場合に生じます。週休二日制で土曜日、日曜日が休日の場合において、日曜日を法定休日としている場合に、土曜日に労働させた場合においては、休日労働としての割増賃金(3割5分以上)を支払う必要はありませんが、週40時間の法定労働時間を超える場合においては超過労働分について、時間外労働の割増賃金(2割5分以上)を支払う必要があります。

 また、事前に法定休日を振り替えて労働させた場合においては、法定休日に労働させたことにはなりませんから休日労働の割増賃金を支払う必要はありませんが、事後の振替の場合には、法定休日に労働させたことになりますから、休日労働の割増賃金の支払義務が生じます。

                                         —続—

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専門家

竹下勇夫(弁護士)

弁護士法人ACLOGOS

検察官として10年、弁護士として30年超のキャリアを有し、高い専門性が求められる企業法務を得意とする。沖縄弁護士会会長等の公職を歴任する傍ら、琉球大学大学院法務研究科(現在は学部)講師の顔を持つ。

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