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令和3年の民法等の改正(15)

竹下勇夫

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テーマ:民法等の改正

~遺産分割の見直し④~

 この関係で、もうひとつ重要な改正があります。それが改正民法第258条の2の新設です。これも遺産分割がされないことによる所有者不明地の発生を防止することを目的とした規定です。

 最高裁昭和62年9月4日判決は、遺産相続により相続人の共有となった財産の分割について、共同相続人間に協議が調わないどき、又は協議をすることができないときは、家事審判法の定めるところに従い、家庭裁判所が審判によってこれを定めるべきものであり、通常裁判所が判決手続で判定すべきものではない、として、共有物分割請求によることを認めませんでした。改正民法第258条の2第1項は、この点を明確にし、遺産共有の解消は、物権編の共有物分割訴訟によるのではなく、遺産分割手続きによるべきことを明らかにしています。前回述べたように、相続開始後10年を経過したときも、具体的相続分によることは主張できなくなりますが、遺産共有の解消は、この場合においても遺産分割手続きによることが原則です。従って、分割に際して、「遺産に属する物又は権利の種類及び性質、各相続人の年齢、職業、心身の状態及び生活の状況その他一切の事情を考慮」するとする民法第906条の規定は適用されます

 ところで、共有物について、遺産共有持分と他の共有持分とが併存する場合、現行法ではどのような手続きとなるのでしょうか。例えば、AとBが不動産を共有していたが、Bが死亡し、その相続人としてC及びDがいる事例を考えてください。この場合、AとC及びDの共有関係を解消するためには、AとC及びDとの間の分割を共有物分割として実施し、CとDとの間の分割を遺産分割として実施する、というのが現行法の立場です(最高裁平成25年11月29日判決参照)。すなわち、このような場合、通常裁判所の手続きと家庭裁判所の手続きという性格の異なる2回の手続きを踏む必要があります。改正同条第2項は、このような場合、相続開始の時から10年を経過したときは、相続財産に属する共有物の持分について、民法第258条の裁判による共有物分割をすることができると規定しました。これによるときは、共有物分割訴訟1回のみの手続きで分割は解消しますから上記のような迂遠な手続きを取る必要がない半面、相続人の利益を考慮した第906条の適用がないという相違があります。そこで改正同項ただし書は、遺産の分割の請求があった場合において、相続人が第258条の共有物分割をすることに異議の申出をしたときは、この限りでないとし、改正同条第3項において、上記の異議は、裁判所から共有物分割訴訟の通知を受けた日から2カ月以内にその裁判所にしなければならないとしています。   —続—

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竹下勇夫(弁護士)

弁護士法人ACLOGOS

検察官として10年、弁護士として30年超のキャリアを有し、高い専門性が求められる企業法務を得意とする。沖縄弁護士会会長等の公職を歴任する傍ら、琉球大学大学院法務研究科(現在は学部)講師の顔を持つ。

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