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竹下勇夫

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竹下勇夫(たけしたいさお) / 弁護士

弁護士法人ACLOGOS

コラム

令和3年の民法等の改正(2)

2021年9月17日

テーマ:民法等の改正

コラムカテゴリ:法律関連

~相隣関係①~

  隣接する土地相互の法律関係のことを相隣関係と言います。民法は第209条から第238条まで相隣関係に関する規定を定めています。

 今回改正されることになったのは、第209条の「隣地の使用請求」に関する規定と、第233条の「竹木の枝の切除及び根の切取り」に関する規定のほか、「継続的給付を受けるための設備の設置権等」に関する第213条の2及び第213条の3の新設です。

 民法第209条は、「土地の所有者は、境界又はその付近において障壁又は建物を築造し又は修繕するため必要な範囲内で、隣地の使用を請求することができる。ただし、隣人の承諾がなければ、その住家に立ち入ることはできない。
2 前項の場合において、隣人が損害を受けたときは、その償金を請求することができる。」としています。しかし、土地の所有者が隣地を使用したいのは、境界付近等に「障壁又は建物を築造し又は修繕する」場合だけに限られません。そこで、改正法は、隣地使用の目的の範囲を拡大し、障壁、建物のほか、「その他の工作物」を加え、築造、修繕のほか、「収去」も加えています。さらに、「境界線の調査又は境界に関する測量」及び竹木の「枝の切取り」もその目的に加えています。従って、土地の所有者が以上の様な目的のため必要な範囲内で隣地を使用することができるようになります。(民法では「隣地の使用を請求することができる。」となっていたのが、改正法では、「隣地を使用することができる。」とされています。)

 以上の様に、上記の目的のために、土地所有者は、隣地所有者等からの承諾を得ることなく、隣地を使用することができるのです(ただし、居住者の承諾がなければ、その住家に立ち入ることはできません。)が、他方で、隣地所有者等の利益を保護する必要もあることから、土地所有者は、隣地の使用に先立って、「あらかじめ、その目的、日時、場所及び方法を隣地の所有者及び隣地使用者に通知しなければ」ならず、「あらかじめ通知することが困難なときは、使用を開始した後、遅滞なく、通知」することが必要です(改正法同条第3項)。

 それでは、隣地所有者等が不明である場合にはどうすべきでしょうか。「予め通知することが困難な場合」に該当するとして、隣地の使用後、所有者が判明した時点で事後通知をすれば足りると考えられます。
 なお、隣地を使用したことによって、隣地所有者等に損害が発生したときは、補償をしなければならないのは従来どおりです。    —続—

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