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令和3年の民法等の改正(11)

竹下勇夫

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テーマ:民法等の改正

~相続財産管理制度の見直し~

 まず、相続財産の保存に関して、第897条の2が新設されて、家庭裁判所は、利害関係人又は検察官の請求によって、いつでも相続財産の管理人の選任その他の相続財産の保存に必要な処分を命ずることができることになりました。もっとも、相続人が一人である場合においてその相続人が単純承認をしたとき、相続人が数人ある場合において遺産の全部が分割されたとき、又は新設された相続財産の清算人が選任されているときは、除かれます。「いつでも」とありますから、相続人が相続の承認・放棄を行う前後を問わず選任することができます。その結果、相続人の相続の承認・放棄後であることを前提として規定されていた相続財産の保存に関する第918条第2項、第3項の規定、第926条の限定承認者による管理の規定中、第2項で第918条第2項及び第3項の規定を準用する部分、第940条の相続の放棄をした者による管理の規定中、第2項で第918条第2項及び第3項を準用する部分について削除されることになりました。あわせて、第940条第1項は、相続を放棄した者の相続財産の「管理を継続」する義務の終期を、「その放棄によって相続人となった者が相続財産の管理を始めることができるまで」としていましたが、これを改正法は「相続人又は第952条第1項の相続財産の清算人に対して当該財産を引き渡すまでの間」に改めました。

 また、相続財産管理人が選任された場合の権利義務については、第897条の2第2項において、不在者財産管理人に関する民法第27条から第29条までの規定が準用されています。

 さらに、相続人のあることが明らかでない場合には、現行民法第952条によって、「相続財産の管理人」が選任されることになりますが、改正同条はその名称を「相続財産の清算人」に改めています。そのうえで、公告について、現行法では、①家庭裁判所は相続財産の管理人選任後遅滞なく(第952条第2項)、②相続財産の管理人は①の公告があった後2か月以内に相続人のあることが明らかにならなかったときは、全ての相続債権者及び受遺者に対し、一定の期間内にその請求の申出をすべき旨を遅滞なく(第957条第1項)、③家庭裁判所は②の期間満了後、なお相続人のあることが明らかでないときは、相続人があるならば6か月を下ることのない一定期間内にその権利を主張すべき旨(第958条)、の都合3回の公告が必要とされていますが、改正第952条第2項は、家庭裁判所の行う上記①と③の公告を一本化して、相続財産の清算人を選任した旨、及び「相続人があるならば一定の期間内(6カ月を下ることができない)にその権利を主張すべき旨の公告を、相続財産の管理人選任後遅滞なく行うものと改め、相続財産の清算人が行う②の公告についても、第957条第1項を改正して、家庭裁判所の公告後、2か月以上の期間を定めて(ただし、その期間は改正第952条第2項の家庭裁判所の公告期間内に終了する必要があります。)行うこととしました。その結果、公告は3回から2回になり、権利関係の確定も最短10か月から6か月に短縮されます。  —続—

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竹下勇夫(弁護士)

弁護士法人ACLOGOS

検察官として10年、弁護士として30年超のキャリアを有し、高い専門性が求められる企業法務を得意とする。沖縄弁護士会会長等の公職を歴任する傍ら、琉球大学大学院法務研究科(現在は学部)講師の顔を持つ。

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