令和3年の民法等の改正(19)
~相隣関係②~
次いで、民法第213条の2及び第213条の3が新設されました。これらは、継続的給付を受けるための設備の設置権等に関する規定です。
現代社会においては、電気・ガス・水道といったライフラインを欠くことができませんが、明治時代に制定された民法においては、他人の土地を使用しなければこれらの導管等を引き込むことのできない土地について、他人の土地にこれらの設備を設置するための明確な規定がありませんでした。そこで最高裁判所は、平成14年10月15日判決において、「宅地の所有者は、他の土地を経由しなければ、水道事業者の敷設した配水管から当該宅地に給水を受け、その下水を公流、下水道まで排出することができない場合において、他人の設置した給排水設備を当該宅地の給排水のため使用することが他の方法に比べて合理的であるときは、その使用により当該給排水設備に予定される効用を著しく害するなどの特段の事情のない限り、当該給排水設備を使用することができる。」として、他人の設置した給排水設備の使用を認める判断を示しました。
このようなことから、今回の改正によって、新たに、継続的給付を受けるための設備の設置権等に関する規定が整備されました。その具体的内容は、以下のとおりです。
土地の所有者は、他の土地に設備を設置し、又は他人が所有する設備を使用しなければ電気、ガス又は水道水の供給その他これらに類する継続的給付を受けることができないときは、継続的給付を受けるため必要な範囲内で、他の土地に設備を設置し、又は他人が所有する設備を使用することができる。(改正法第213条の2第1項)
条文には「下水道」が記載されていませんが、これを除く理由はないと思います。
第3項において、上記の場合には、あらかじめ、その目的、場所及び方法を他の土地等の所有者及びその使用者に通知しなければならないとされ、第5項及び第6項において、その土地の損害又はその設備を使用するために生じた損害を補償しなければならないとされ、第7項において、他人が所有する設備を使用する者は、その利益を受ける割合に応じて、その設置、改築、修繕及び維持に要する費用を負担しなければならない、とされています。
新設された第213条の3は、第213条の2の特則で、土地が分割され、又は土地の一部が譲渡されたことによって、(例えば、分割の結果袋地になったことによって、)他人の土地に設備を設置しなければ継続的給付を受けることができない土地が生じたときは、継続的給付を受けるために設備を設置できるのは、他の分割者又は一部土地の譲渡人の所有地に限られます。 —続—