高校生が塾に通う意味
模試の判定を見て、本人にどう声をかけるか迷っているあなたへ
秋の模試の結果が返ってきました。 志望校の欄に、Eの一文字。
春もEでした。 夏もEでした。 そして秋も、変わりませんでした。
お子様は何も言わずに、結果を机の上に置いて部屋に入っていきます。 かける言葉が見つからない。
インターネットで検索すると、こんな見出しが並びます。 「E判定からの大逆転合格」 「判定は気にするな」 「まだ間に合う」
それを読んで、少し安心する。 でも同時に、心のどこかで疑っているのではないでしょうか。 本当にそうなのだろうか、と。
今回は、その疑いに正直に向き合いたいと思います。 予備校や塾が書く記事とは、少し違う内容になります。
先に申し上げておきます。 統計を見る限り、E判定から合格する生徒は少数です。 この事実から目を背けたまま、精神論で励ますことはしません。
そのうえで、それでも何ができるのかを、具体的にお伝えします。 そして大分県から受験するご家庭にとって、見落とされがちな現実についても触れますね。
結論!判定は正確です。だからこそ、やることは絞られます
結論から申し上げます。
模試の判定は、想像以上に正確です。 「判定は当てにならない」というのは、残念ながら事実に反します。
E判定とは、合格の可能性が20%以下という意味です。 そして実際の追跡調査でも、E判定の生徒の合格率はほぼその通りになっています。
ただし、ここから絶望に向かう必要はありません。 なぜなら、この事実から導かれる行動が3つあるからです。
一つ目は、志望校を諦めるかどうかではなく、併願をどう組むかを先に決めることです。
二つ目は、判定が示しているのは「今の位置」であって、「これからの努力の結果」ではないという点を、正確に理解することです。
三つ目は、保護者様の役割が「もっと勉強しなさい」ではないという点です。 研究が示している保護者の有効な関わり方は、まったく別のところにあります。
まず、E判定が何を意味するかを正確に把握してください
判定について、正確な定義から確認しましょう。
模試の判定は、その場の得点を見て決めているわけではありません。 過去に同じ模試を受けた膨大な受験生について、模試の成績と実際の合否を追跡したデータをもとに算出されています。
各模試の主催者は、大学・学部ごとに「合格可能性50%となる偏差値帯」をボーダーラインとして設定し、そこを基準に判定を区切っています。
代表的な予備校の基準では、おおむね次のようになっています。
A判定は、合格可能性80%以上。 B判定は、65%程度。 C判定は、50%程度でボーダーライン。 D判定は、35%程度。 そしてE判定は、20%以下。
つまりE判定とは、5人受けて1人受かるかどうか、という位置づけです。
判定は、驚くほど正確に当たっています
ここが、多くの記事が触れない部分です。
大手予備校が実施している入試結果の追跡調査によれば、各判定を取った生徒の実際の合格率は、次のようになっています。
A判定はおよそ80%。 B判定はおよそ65%。 C判定はおよそ50%。 D判定はおよそ30%。 そしてE判定は、20%以下。
お気づきでしょうか。 事前の予測と、実際の合格率が、ほぼ一致しています。
判定モデルは、極めて正確に機能しているということです。
これは、「判定なんて当てにならない」という言説が、事実と異なることを意味します。 E判定の生徒の8割以上は、統計どおりに不合格になっています。
なぜ「逆転合格」の話ばかり目にするのか
では、なぜインターネット上には「E判定から合格した」という話があふれているのでしょうか。
理由は2つあります。
一つ目は、生存バイアスです。 合格した20%以下の人だけが体験談を書きます。 不合格になった8割以上の人は、体験談を書きません。 だから、目にする情報が偏るのです。
二つ目は、それを発信しているのが誰かという点です。 「E判定でも諦めるな」と書いているのは、多くの場合、塾や予備校です。 諦められては商売になりませんから。
私たちも塾ですので、本来は同じ立場かもしれません。 しかし、事実に反することをお伝えするわけにはいきません。
もう一つ、知っておいていただきたい数字があります。 得点は正規分布を描く一方で、大学の定員は上位層に限られます。 その結果、受験生全体のおよそ6割がE判定に分類されるとされています。
つまりE判定は、特別に成績が悪い状態ではありません。 志望校に対して実力が届いていない受験生の中では、最も多い状態なのです。
【徹底比較】秋のE判定:失敗する親と成功する親の分かれ道
同じ判定を見ても、その後の展開はご家庭によって大きく分かれます。 陥りがちな失敗パターンと、うまくいくパターンを整理してみましょう。
判定を見たときの反応
- 失敗する親の対応: 「まだ間に合う」「気にするな」と、根拠なく励ます。 あるいは無言で落胆を伝える。
- 成功する親の対応: 判定が示している位置を、本人と一緒に正確に確認する。 そのうえで、これからの選択肢を並べる。
志望校の扱い
- 失敗する親の対応: 「志望校を下げなさい」とすぐ結論を出す。 あるいは逆に「絶対に下げるな」と固執する。
- 成功する親の対応: 第一志望はそのままにしたうえで、併願校を現実的に組む。 両立させる。
かける言葉
- 失敗する親の対応: 「もっと勉強しなさい」「このままでは受からないよ」とプレッシャーをかける。
- 成功する親の対応: 学習内容には踏み込まず、生活リズムと体調を整えることに集中する。
模試の使い方
- 失敗する親の対応: 判定の文字だけを見て、一喜一憂する。
- 成功する親の対応: 判定ではなく、どの科目のどの分野で失点しているかを見る。
浪人についての話し合い
- 失敗する親の対応: 話題にすること自体を避ける。 あるいは「浪人はさせない」とだけ伝える。
- 成功する親の対応: 浪人の可否と経済的な条件を、秋のうちにはっきり伝えておく。
いかがでしょうか。 うまくいっているご家庭は、判定という結果ではなく、そこから逆算した選択肢の整理に時間を使っています。
偏差値の数字そのものに、意味はありません
判定と並んで誤解が多いのが、偏差値です。
偏差値は、その模試を受けた集団の中での相対的な位置を示す数字です。 集団が変われば、同じ学力でも数字は変わります。
ここで、多くの保護者様が陥る誤解があります。 「高校受験のときは偏差値60だったのに、今は45しかない」
これは学力が下がったわけではありません。 母集団が変わっただけです。 高校受験のときは、進学しない層も含めた同学年全体が母集団でした。 大学受験では、進学を目指す層だけが母集団になります。
さらに、模試ごとにも母集団が違います。 高校で全員受験として実施される模試は、母集団が広く、平均学力は相対的に低くなります。 一方、難関大志望者が中心に受ける模試では、平均学力が高くなります。
同じ学力の生徒でも、模試によって偏差値が15から20も変わることがあります。
ですから、偏差値の数字そのものを見ても意味がありません。 見るべきは、その模試における志望校のボーダー偏差値との差だけです。
秋以降に偏差値が急上昇するというデータは、ありません
もう一つ、正直にお伝えしなければならないことがあります。
「秋以降、現役生は一気に伸びる」 この言葉を、どこかで聞いたことがあると思います。
しかし、これを裏づける信頼できる全国規模の統計データは、確認できません。
予備校の記事には「秋から伸びる」「プラトーを抜ければ上がる」といった記述が並びますが、これらは特定のカリキュラムへ誘導するための表現である側面が強く、統計的な代表性を欠いています。
そして、偏差値という指標の性質を考えれば、理由も分かります。 秋以降は、全国の受験生が一斉に学習量を増やします。 個人の学力が上がっても、周りも同じように上がるため、集団内での相対的な位置を大きく動かすことは極めて難しいのです。
つらい事実ですが、ここを直視しないまま「まだ伸びる」と信じ続けることのほうが、結果的に危険だと考えています。
それでも、できることは残っています
ここまで厳しい話が続きましたので、ここからは何ができるかをお話しします。
まず、目標を下げるべきかどうかについて。 心理学に「目標設定理論」という確立された考え方があります。 Locke氏とLatham氏によって体系化されたものです。
この理論では、「ベストを尽くせ」といった曖昧な目標より、具体的で困難な目標を設定したほうが成果が高くなることが実証されています。
ただし、この理論には決定的な条件があります。 それは「本人がその目標にコミットしているか」という点です。
目標がどれほど高くても、本人が「達成できる」と信じ、本気で取り組んでいなければ、努力は引き出されません。 本人の現状を無視した非現実的な目標は、意欲を破壊し、かえって成果を下げてしまうのです。
秋のE判定は、客観的に見て「極めて困難な目標」です。 このとき本人が「もう無理だ」と感じているにもかかわらず、周りが「志望校を下げてはいけない」と強要することは、この理論から見て最悪の選択になります。
では、どうするか。 最終目標を維持するのであれば、そこに至るまでの達成可能な中間目標を設定し直すことです。
「次の模試で偏差値を2上げる」 「英語の長文で、時間内に最後まで読み切る」 「数学の大問1の小問集合を全問正解する」
このくらいの粒度まで下ろしてください。 一つずつ達成できれば、「自分にもできる」という感覚が戻ってきます。 これがなければ、どんな計画も実行されません。
判定ではなく、答案を見てください
もう一つ、具体的にできることがあります。
模試の結果が返ってきたら、判定の文字を見るのをやめて、答案を見てください。
見るべきは3つです。
一つ目は、時間が足りなかったのか、時間はあったが解けなかったのか。 これによって対策がまったく変わります。
二つ目は、どの分野で失点しているか。 全体的に低いのか、特定の分野だけ壊滅しているのか。
三つ目は、基礎的な問題で落としていないか。 応用問題が解けないのは想定内ですが、基礎で落としているなら、そこが最優先になります。
E判定という文字からは、何の情報も得られません。 しかし答案からは、次に何をすべきかが分かります。
保護者にできることは、勉強の話ではありません
最後に、保護者様の役割についてお話しします。
受験期の不安と成績の関係については、研究があります。
およそ800人の生徒を対象とした研究では、成績が高い層であっても、不安が学業成績にはっきりとした悪影響を与えることが示されました。 特に「この科目が怖い」「テストが怖い」といった、特定の対象に向いた不安が、その科目の成績低下と強く結びついていました。
E判定を突きつけられた秋以降、受験生はこの状態に陥りやすくなります。 ここで保護者様が「もっと勉強しなさい」とプレッシャーをかけることは、不安をさらに強めるだけです。
では、何が有効なのか。
学業への支援に関する研究では、興味深い結果が示されています。 保護者や友人からのサポートは、直接的に成績を押し上げるわけではありませんでした。
しかし、家族のサポートは間接的に効いていました。 具体的には、「教員など専門家のサポートを適切に引き出すこと」を通じて。 そして「居眠りの頻度を減らし、睡眠の規則性を保つこと」を通じて。
睡眠の規則性が高い生徒ほど、成績が良好であることも報告されています。
つまり、保護者様の役割は次の2つに集約されます。
一つ目は、生活リズムを守ることです。 食事の時間、就寝時刻、朝起こすこと。 地味ですが、これが最も直接的に効きます。
二つ目は、専門家につなぐことです。 学校の進路指導の先生、塾の講師。 学習の中身については、本人が相談できる相手を確保することのほうが、保護者様が直接指導するより有効です。
学習の内容に口を出さないでください。 それは保護者様の仕事ではありません。
よくある質問
Q. 志望校は下げるべきでしょうか
第一志望を下げる必要はありません。 ただし、併願校を現実的に組むことは必須です。 目標設定理論が示すとおり、高い目標が機能するのは本人がコミットしている場合だけです。 本人が第一志望を諦めていないなら、そのまま持たせてください。 そのうえで、合格可能性の高い併願校を確保しておく。 この両立が、最も合理的な形です。
Q. 「E判定でも大丈夫」と言ってあげるべきですか
事実ではないことを言うのは、お勧めしません。 本人も、うすうす分かっています。 事実と違う励ましは、かえって不信を招きます。 代わりに、「判定は今の位置を示しているだけで、これからの結果ではない」と伝えてください。 これは事実です。
Q. どの科目に時間をかけるべきですか
得点の伸びしろが大きい科目です。 一般に、基礎的な部分で失点している科目のほうが、伸ばしやすくなります。 すでに高得点の科目をさらに上げるより、低い科目を平均まで持ち上げるほうが、総得点は動きます。 ただし配点の重みも考慮する必要があるため、ここは学校や塾の先生と一緒に判断してください。
Q. 総合型選抜や推薦は検討すべきですか
現在の高校3年生は、新しい学習指導要領のもとで「探究」を必修として学んできた学年です。 高校時代に取り組んだ課題設定や分析、表現のプロセスを評価する入試方式は増えています。 私立大学の総合型選抜による入学者の割合も、上昇を続けています。 一般選抜だけに絞らず、選択肢として検討する価値はあります。 ただし、出願時期が早いため、判断は急ぐ必要があります。
まとめ:現実を見たうえで、できることに絞ってください
秋の模試でE判定という結果は、統計的にはっきりした意味を持っています。 合格可能性20%以下。 そして追跡調査でも、実際の合格率はほぼその通りです。
「判定は当てにならない」という言葉は、事実ではありません。 目にする「逆転合格」の話は、合格した2割以下の人だけが書いた記録です。
そして、秋以降に偏差値が急上昇するという統計データも、確認できません。 全国の受験生が一斉に量を増やす時期だからです。
つらい内容が続きました。 それでも、ここから絶望する必要はありません。
やるべきことは、むしろ明確になります。
第一志望は下げなくて構いません。 ただし併願校を現実的に組んでください。 目標が機能するのは、本人がコミットしている場合だけです。
判定の文字ではなく、答案を見てください。 時間が足りなかったのか、基礎で落としているのか。 そこにしか、次の行動のヒントはありません。
保護者様の役割は、勉強の内容に踏み込むことではありません。 研究が示しているのは、生活リズムを守ることと、専門家につなぐこと。 この2つです。
とはいえ、ご家庭だけでこれを進めるのは簡単ではありません。 どの科目にどれだけ時間を配分すべきか。 併願校をどう組むか。 これは受験の全体像を把握していないと、判断できない部分です。
そして何より、この時期のお子様は、家庭では本音を話しません。 不安が大きいほど、口を閉ざします。 保護者様が焦って踏み込むほど、距離は開いていきます。
家庭は、疲れて帰ってきたお子様が、判定の話をされずに休める場所であってください。 現状を数字で整理し、残された時間で何ができるかを組み立てる作業は、勉強のプロにお任せください。
「本人にどう声をかけていいか分からない」 「志望校をどうするか、家庭では話し合いにならない」
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