Mybestpro Members

杉田昌穂プロは朝日新聞が厳正なる審査をした登録専門家です

九九の覚え方(4)(九九ができない大学生を作ってしまう九九暗記の落とし穴)

杉田昌穂

杉田昌穂

テーマ:九九学習

前回記述しました様々な記憶システムは脳内のどのような場所で働いているのでしょうか?

まず脳に入ってきた陳述記憶(事実や考え、出来事に関する記憶。これは言葉による表現や視覚イメージとして記憶します。九九暗記は主にこの記憶です。)は脳で処理するために、下準備をします。これを符号化といいます。この符号化についてはよく分かっていないようで、脳のどの場所でこの作業をするのか「記憶のしくみ 上・下」(ラリー・R・スクワイア、エリック・R・カンデル共著 講談社ブルーバックス 2013年)には書かれていません。インターネット上で探してもほとんど見つかりません。ただ「脳科学辞典」(https://bsd.neuroinf.jp/wiki/%E7%AC%A6%E5%8F%B7%E5%8C%96)には「側頭葉内側面、前頭前野、頭頂葉などの領域が関与していることが知られている。」とあります。

次に符号化された記憶は、短期記憶されます。これは内側側頭葉で行われることがはっきりしています。ここには、海馬、扁桃核、嗅内皮質など、記憶にとって重要な多くの器官が存在します。

さらに注意すべきなのは、これらの器官の中でニューロンと呼ばれる神経細胞が電気信号を使って通信をしていることです。しかもニューロンとニューロンの隙間にはシナプスと呼ばれる隙間があり、ここで電気信号は化学シナプス伝達物質に変換されて次のニューロンに到達し、そこで再び電気信号に変換されて次へと伝わっていきます。このシナプスでは、いろいろなアミノ酸、カリウムイオン、ナトリウムイオン、カルシウムイオン、マグネシウムイオンなどが活躍しています。

これらの短期記憶の作業は主に細胞内での変化と考えていいものです。

それに対して、短期記憶を長期記憶に変化させるときには、別の場所に新しくニューロンを作るということをします。つまり細胞外に新しくたんぱく質を合成し、新しい細胞を作るということをするのです。しかも長期記憶は大脳皮質の広範囲にある様々な場所に新しい細胞を作り保存されます。

そのほか習慣学習の記憶は線条体と呼ばれる器官が活躍します。

さらにニューロンとは別に、ニューロンのカバーの役割をしているグリア細胞というのも記憶と関係しているという研究があります。「もうひとつの脳」(R・ダグラス・フィールズ著 講談社ブルーバックス 2018年)


いろいろとややこしいことを書きました。私も正確に理解しているわけではありません。ただはっきりしていることは、記憶というシステムは単純なシステムではなく、非常に複雑なシステムであるということです。したがって「九九暗記」というものを考えるにあたって、そのことを理解しておくことは大切であると思います。

リンクをコピーしました

Mybestpro Members

杉田昌穂
専門家

杉田昌穂(教師)

青穂塾(せいすいじゅく)

読み聞かせ、野外体験を重視し、勉強を楽しめる子どもへと育みます。物事に興味を持ち、小さな頃からコツコツ取り組む姿勢を身につけた子どもは、自然と高度な課題にも取り組み、努力を続けるようになります。

杉田昌穂プロは朝日新聞が厳正なる審査をした登録専門家です

関連するコラム

プロのおすすめするコラム

コラムテーマ

コラム一覧に戻る

プロのインタビューを読む

理科実験・読み聞かせで思考力を育てる幼児教育のスペシャリスト

  1. マイベストプロ TOP
  2. マイベストプロ奈良
  3. 奈良の出産・子育て・教育
  4. 奈良の幼児教育・幼児教室
  5. 杉田昌穂
  6. コラム一覧
  7. 九九の覚え方(4)(九九ができない大学生を作ってしまう九九暗記の落とし穴)

杉田昌穂プロへの仕事の相談・依頼

仕事の相談・依頼