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杉田昌穂

理科実験・読み聞かせで思考力を育てる幼児教育のスペシャリスト

杉田昌穂(すぎたまさほ)

青穂塾(せいすいじゅく)

コラム

意外に知られていない九九暗記の落とし穴(5)

2019年7月10日 公開 / 2019年7月19日更新

テーマ:九九暗記

九九暗記というものを人間の脳ははどのように処理しているのでしょうか。

まず最初は、脳に入ってきた陳述記憶(ここでは、九九についての情報)は脳で処理するために、下準備をします。これを符号化といいます。以前にも述べましたが、この符号化についてはよく分かっていないようです。記憶情報は脳内でどのような符号に置き換えられるのか、分かっていません。

ただ誰にでもわかることですが、この段階で間違った情報が脳内に入ると、後のすべては間違っているということです。したがってこの符号化という段階は極めて慎重に正確に行う必要があります。

一番最初にご紹介した「九九の歌」で九九暗記をする方法は、この段階ですでに問題があります。九九暗記を生徒に指導していると、7「しち」と、4「し」混乱させることがよくあります。原因は4(し)と7(しち)の音声が似ているからです。たとえば9×3=27で「にじゅうしち」が「にじゅうし」になったり、9×6=54で「ごじゅうし」が「ごじゅうしち」になったりします。

なお私の研究をもとにして自主開発しました「九九学習システム」では、この対策として4は(よん) 7は(なな)と発音させて覚えさせています。たとえば4×6=24は(しろくにじゅうよん)と覚えます。最初の4は(し)のままでもかまいません。この部分を言い間違える生徒はなぜかいません。答えの部分だけ注意すればいいのです。したがって7×1=7は(しちいちがなな)となります。(なお、「しち」を「ひち」という発音で言う地域もあるそうですから、その影響も考える必要があるかもしれません。)

また皆さん「1,2,3,4,5,6,7,8、9」と声を出して言ってみてください。「2(に)」の音がやや聞き取りにくいのが分かりますか。例えば6×2=12で「じゅうに」の「に」の音がやや聞き取りにくい音であるため「に」の音が消えてしまい「じゅう」になってしまうことがありますし、「に」の代わりに他の数字が入ることもあります。

次の表を見てください。ベネッセ教育総合研究所の調査結果です。少しサンプル数の少ない調査ですが参考になります。
https://benesse.jp/kyouiku/201610/20161028-1.html


ベネッセの九九計算力調査


1位から10位までのすべてに「7」「4」「2」という数字が関係していることが分かります。

つまり音声だけで九九暗記をすることは符号化に失敗する可能性が高いのです。

ベネッセ自身の分析では次のように書いてあります。(2019年7月15日現在)https://berd.benesse.jp/berd/center/open/report/keisanryoku/2007/hon1_2.html

『(1)前後の九九と混同しているケースが見られる。
かけられる数を前後のものとまちがえる
例)6×7で49(7×7とのまちがい)など
かける数を前後のものとまちがえる
例)6×7で48(6×8のまちがい)など
(2)似ている音の九九のまちがいが多い。
4(し)と7(しち)のまちがい
例)4×2で14(7×2とのまちがい)など
7(しち)と8(はち)のまちがい
例)8×6で42(7×6とのまちがい)など
(3)正確に九九が覚えきれていない。
± 1のまちがい
  例)6×8で47、49など
誤答率が比較的高めで、誤答例多数のもの
(4)交換法則の成り立つ関係の九九をセットでまちがえる。
例)6×7、7×6をどちらも48とするなど
(5)交換法則の成り立つ関係の九九の一方をまちがえる。
例)6×8は正解だが、8×6は42など』

(この調査の分析は後日詳しく書く予定ですが、「2(に)」の音がやや聞き取りにくいという問題点には触れていません。このことはあまり知られていないのです。)

学校での九九の覚え方についても考えてみてください。九九の表なり九九カードなりである程度暗記できると、宙をにらんで九九暗唱をすることが多くあります。この時音声だけに頼って九九暗記をしています。この段階で符号化に失敗すると推測されます。実際に生徒が音声で九九暗唱をしている様子を見ると、九九の答えの1の位(音声でいうと語尾)の部分を言うときの音量が小さくなっています。例えば6×2=12で「じゅうに」の「に」の音が小さくなっています。ただでさえ聞き取りにくい「に」の音声がさらに小さくなってしまうのですから、間違いの原因になるのは当たり前です。

したがって学校や塾で九九暗記を指導するとき、九九の指導案を作成するときは各段の初期段階つまり導入部で充分な授業時間をとっていただきたいと思います。そして符号化が確実に完了したと確認できるまでは、音声(九九の読み方)と(視覚情報としての)数字の両方を使って指導していただきたいと思います。

なお、このコラムは2019年7月10日に公開しましたが、同年7月15日に修正および追記をしました。

私の研究をもとにして自主開発しました「九九学習システム」を発売いたしました。九九指導については不慣れな先生にも、きっとお役にたてると思います。
詳しくは
https://sadaemon.jp/
ご覧ください。

この記事を書いたプロ

杉田昌穂

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