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西田英治

「噛み合わせ」から健康へ導く「健口」のプロ

西田英治(にしだえいじ) / 歯科医

にしだ歯科医院

コラム

コロナ感染予防対策としての『鼻呼吸』のメリット

2021年8月5日 公開 / 2021年8月6日更新

テーマ:感染予防

コラムカテゴリ:美容・健康

コラムキーワード: 感染症対策腹式呼吸免疫力アップ

今回は、前回コラムでの3つのポイントのうち、①鼻呼吸であること②腹式呼吸であること、についてご説明いたします。
コロナ禍前のことですが、「あいうべ体操」を世の中に広めている医師:今井一彰先生はその著書の中で「鼻呼吸は天然のマスク」と表現しています。そこまでの表現がなされるためには様々な理由があるのですが、こと、コロナ感染予防対策としての2つの大きな理由を鼻呼吸と口呼吸とを比較してお伝えいたします。
1)鼻~上咽頭(のどの上の方)までの粘膜は「線毛円柱上皮」という構造を持っており、抗菌成分を含んだ粘液を線毛の動きで排泄することができます。例えると、アルコールジェルを浸した絨毯で、その絨毯に上から降ってきた汚れ(ウィルス)を排泄するように絨毯の毛が自動で動いて汚れを排除するイメージです。一方、口~喉の粘膜は「扁平上皮」と言われる上皮です。もちろん、粘膜表面には「唾液」による抗菌(抗ウィルス)効果もあります。イメージとしては畳の上に次亜塩素酸水をまいたような感じでしょうか?いや、唾液の作用もなかなかのもんだよ!と主張される方の向けに畳にアルコールジェルと、過大評価して考えてみても残念ながら呼吸経路としての「口」には大きなデメリットがあります。それは、口呼吸により唾液が乾燥してしまうことです。例えアルコールジェル並みの効力を持っていても乾燥したら粘膜むき出し、ただの畳です。それ故、「口呼吸は感染に対する防御力を自ら放棄するような行為」と言えるでしょう。
 もう一つ、粘膜の違いによる影響物質があります。それは、鼻粘膜は「NO:一酸化窒素」を常に産生しているが、口腔粘膜は産生していないという点です。「NO」というガス(物質)はコロナ感染拡大の背景で再脚光を浴びた物質でもあります。「NO」の効果としては「抗菌・抗ウィルス作用」「血管拡張作用」の大きく2つがあります。じゃあ、NOを酸素と一緒に吸えばいい!と思うかもしれませんが、残念ながら「NO」はある濃度から人体には「毒ガス」でしかありません。2020年の春ごろだったでしょうか?中国が「抗ウィルス作用」としての研究をするというネット記事がありましたが、その後のフォローがないところを見るとやはり「抗コロナウィルス」のための「NO」は難しいように思います。ただ、先日いただいた情報では、アメリカの医療機関では診療する前に人体に害を持たない程度まで薄めた「NO」ガスを医療従事者が吸って、仕事を始めることで感染予防の効果があるのではないか?という報告がありました。「抗コロナウィルス」については懐疑的な面も残りますが、「血管拡張作用」については、感染予防にプラスに働く可能性は十分にあり得ます。この点については次の理由にてお伝えします。
2)2つめの理由をお話しする前に、皆さんに「鼻呼吸」について質問です。普段、鼻呼吸をしている際に、「1日の中でも左右のどちらかが通りにくかったり」の「鼻通りの時間変化」を感じたことはないでしょうか?鼻呼吸を気にしたことがある方なら、ほとんどの方が実感したことがあると思います。実はこの「空気を通りにくくする作業」、身体が勝手に行っているんです。なぜわざわざ、息をしづらくするの?と思われるかもしれませんが、その理由は肺の構造にあると言われてます。つまり、肺の中で「吸った酸素」と「体中から集められた二酸化炭素」の交換を行う場所を「肺胞」と言い、肺胞が膨らむことで酸素と二酸化炭素の交換を行うわけですが、肺胞自体には自分で膨らむ力はありません。横隔膜を使ってゆっくり隅々までの肺胞を膨らませるために、空気の流入量を制限調整しているというわけです。過去、横隔膜の働きとして理科の実験で習ったことがある方も多いのではないでしょうか?その実験について、できるだけわかりやすく説明してみます。実験では胸郭(肋骨を含めた外枠部分)を大きなガラス瓶、瓶の底には横隔膜を模してのゴム膜を使っていました。ゴム膜を引っ張ることにより瓶の中の気圧が下がり中のたくさんの風船(=肺胞)が膨らむといった具合です。腹式呼吸では横隔膜が動きますが、胸式呼吸では瓶自体の容積変化により陰圧にします。瓶の一部がアコーディオンのように伸び縮みするイメージでしょうか?
鼻呼吸では鼻の通りを悪くすることで空気の流量を調整(=瓶の口を狭く)し、ゆっくりとした長い呼吸(=ゴム膜をゆっくり引っ張る)ことで隅々の肺胞まで吸気(吸った空気)をいきわたらせることができるのですが、口呼吸では逆に抵抗の少ない空気が一気に肺の中に流入するため、部分的にしか新鮮な空気が行き渡らないというわけです。一説では「口呼吸では肺の上半分ぐらいまでしか」いきわたっていないとまで言われています。口呼吸は交換効率の非常に悪い、まさに「浅い」呼吸と言えるでしょう。
 前半で、「NO」の作用の1つに「血管拡張作用」をお伝えしておりましたが、その作用の本質部分は肺胞での酸素・二酸化炭素交換の「交換効率アップ」にあります。最近では感染者の自宅療養に向けて酸素吸引機(実際には酸素濃縮機)の増産に移ったと報道されてますが、その前にタダでできる鼻呼吸をしっかり意識して行ってはいかがでしょうか?感染予防も兼ねる「鼻呼吸」を意識しない手はないように思います。
 最後に、コロナ対応に関する余談ですが、少し前の報道にて「コロナ感染により入院している方の中には、普段「仰臥位(仰向け)」で過ごしている状態から「伏臥位(うつ伏せ)」にすると(呼吸しづらい状況が?)「楽になる」という報道がありました。理由は分からないという結びでしたが、これまでお伝えした内容を理解して頂ければこの現象の理由の1つはわかると思います。つまり、コロナ感染の影響で呼吸困難になりかけた患者さんは息がしづらいため口呼吸=胸式呼吸=胸を前に膨らませて呼吸となった患者さんが伏臥位(うつ伏せ)になることで胸を前に膨らませることができず=胸式呼吸ができず=横隔膜を使った呼吸を始める→酸素『交換効率アップ』=楽になる、というわけです。これはあくまで、机上の空論です。専門のお医者さんが分からないと言っているわけですから、地方のフツーの歯医者が考えた戯言程度でとらえて頂いて結構です。
 ただし、『鼻呼吸』については今日お伝えした以外にもメリットは数多くありますがデメリットは1つもありません。WITHコロナ時代の新しい生活様式にマッチできるよう、改めて「鼻呼吸」に着目してはいかがでしょうか?

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