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コラム

得体の知れない暖房器具の提案~メイスンリヒーター

2021年11月8日

テーマ:リノベーション

コラムカテゴリ:住宅・建物

コラムキーワード: リノベーション工事断熱材 効果注文住宅

信州の暖房を真剣に考えてみる

エアコン、ファンヒーター、こたつ
寒冷地である信州で暖房器具が無いという家はほとんどないかと思いますが、
つい数十年前までは今のような電気やガス・灯油をつかった暖房というのはなかったはずです。
暖房だけでなく給湯や照明なんかもです。

囲炉裏(ウィキペディアより引用)
太古より100年ほど前までは、人間の暮らしは全て「何かを燃やす」ことで成り立ってきました。
調理(かまど)、入浴(薪風呂)、読書(行燈)など。
戦前生まれのお年寄りの方々は、ほぼみなさん、電気・ガス・灯油がまだなかった時代に育っています。

あまりにも急速に変わってしまった生活様式―

このままのペースでは人類が暮らせなくなる、ということを知った今、
私たち建築に携わる者たちは、先ずは消費エネルギーを減らすことを考えなくてはなりません。
住宅ではやはり高断熱化・高気密化が重要です。
これでずいぶん消費エネルギーを減らすことは出来るんですが、2050年までに求められているのはゼロカーボン。
”ゼロ”は無理なので、太陽光発電など自然エネルギー由来の創エネで±0にしようというのが、住宅の場合ゼロエネ住宅(ZEH)です。

では、また江戸時代のような暮らしに戻れるのか?

私自身を含め、答えは「ノー、ノー。それは無理ずら?」
信州のほとんどの家庭で、最もエネルギーを費やしているのは暖房ですから、まずは「暖房を何で行うのがよいか」ということを真剣に検討すると、
「薪ストーブ(調理も多少は)」がその第一候補に上がります。

断熱すれば暖かいのか?


「こんなにも厚く断熱すれば、さぞかしあったかいんでしょうね~」

いえいえ。
どんなに断熱材を厚く、密に入れても断熱材自体が熱を発生するわけではないので、
正しくは「あったかさが持続する、暖房コストが少なくてすむ」
という言い方が正しいのです。

住宅には必ず暖房器具が必要です。
効果的な暖房をするために断熱を行い、隙間風をなくすために気密化を行うわけです。
これが高断熱・高気密住宅の目的です。
つまり効果的な暖房(冷房)を行うために断熱する。
断熱の力に見合った暖房(冷房)器具を選定する、ということになります。


薪ストーブはタイヘンか?

・とにかく薪を集めるたり割ったりするのが大変
・薪を保管する場所が必要で、敷地にゆとりがない
・薪をしょっちゅうくべなくてはならないので面倒
・近所から煙やにおいのクレームが来るのがコワイ
・小さい子供がいるとやけどが心配
・火事になることもあるって聞いてビビってる



過去に、薪ストーブを主暖房とした住宅を多くつくってきました。
その暖かさを実感しない方はいませんが、上記のような理由で離脱してしまう方も実際多くいらっしゃいます。
わたしも自宅には薪ストーブと、電気を熱源とするパネルヒーターが暖房として備わっておりますが、80%以上はパネルヒーターを稼働させています。
時間にゆとりがある週末などに薪ストーブを。オーブン付きなのでピザを焼いたりもしています。
薪は薪を販売している知り合いから購入しているので大変ではありません。
むしろ自己調達はまったく考えておらず、燃料として薪を販売し生計を立てている人もいるわけですから、健全な社会経済を成立させたい。
遠くアラブの国や火力発電所のある太平洋沿岸から電気を送ってもらうより健全で、小さいサークルの中で経済が成り立つはず。
敷地もそれほど広くはありませんが、駐車スペースの脇に薪小屋を設置しています。
しかし、薪は1.5~2時間で燃え尽きてしまうため、ちょっと毎日のこととなるとたしかに大変です。
二人いる娘はすでに高校生で、やけどの心配はなさそう。
煙の問題は、薪の乾燥によってあの酸っぱい臭いはほとんど出ませんが、焚き付け時など多少の煙は当然でます。
これを非(クレーム)とするような世の中ではサスティナブルもSDGsもないのではないでしょうか。
※薪ストーブが問題なのではなく、乾いていない薪を使用することを避けるべき

これらの問題を一気に解決するもの。それがメイスンリヒーター

メイスンリヒーター
実は鉄製の薪ストーブでは、薪を燃やして発生する熱の40%程度を煙突からそのまま出してしまうのですが、メイスンリヒーターでは熱ロスを10%程度にまで抑えています。
つまり、薪の熱エネルギーを室内に90%も放出させています。
そのため煙突からでる煙もわずかで、近所への負担も最小限で済みます。

一回の着火で約20Kgの薪を燃やします(これはナラ薪1杷に相当します)。
そこから発生する熱を重さ2.5トンの耐火煉瓦に蓄えることで、ゆっくり室内に放熱させるストーブです。
ヨーロッパやロシアではペチカや暖炉などと共に、暖房手法の一つとして長い歴史がありますが、実は日本ではまだほとんど実例がありません。

インターネットが普及してその設計図やノウハウのシェアがここ10年ほどで広がりました。
木が豊富にある信州らしい暖房器具として、今後もっともっと普及させたいと考えています。

過去リフォームでは2棟、新築では1棟の導入実績があり、この度軽井沢にて新築では2棟目の導入をさせていただきました。
メイスンリヒーター住宅の完成見学会11/20-21@軽井沢

得体の知れないストーブで馴染みないものなので、導入事例の動画をぜひご覧ください。
現段階だは、最もカーボンニュートラルな暮らしを達成できそうだと感じています。
メイスンリヒーター導入リフォームをした暮らしの動画

この記事を書いたプロ

塩原真貴

木造住宅を耐震・断熱構造に生まれ変わらせるプロ

塩原真貴(株式会社Reborn)

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